↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄をしたのですから、王子はわたしを探さないで‼︎  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/51

十二 魔法屋での男達の話(シエル視点)

 魔法屋の扉が閉まり、静かになった店内に息を一つ吐く。

 ようやく、カロール殿下が城に戻った。

 あいつは毎日、毎日と朝早く俺の部屋まで、騎士を数名連れて現れる。


(断れば斬るとでも、俺を脅しているのだろう……)


 こうも毎日では本来の仕事が出来ない。イライラする。


「兄貴、ここに座って」


 ラエルが奥から椅子を持ってきた。俺はそれに今日の疲れと共に座る。


「はぁーっ、疲れた」

「お疲れ様、兄貴」


「あぁ……あいつに連れ回されて、ほんとうに疲れる」


 よりにもよって今日はルーが港町に行く日に、港町付近を探すと言い出すとはな……

 ウルラからのルーの行動を聞きながら。

 そこの町を見て来い、あの村に行けと人を顎でこき使う、あいつの相手をするのは……もう、うんざりした。

 

 その、ルーは?


「兄貴。あの子ならちゃんと食堂に帰ったよ。ガットにもついて行ってもらったから」


「そうか……ありがとうラエル」

 

 あの店の裏口から故郷の森に行ける、と言いたいが、似せて二人で作り上げた森。普段は手伝いをする精霊や使い魔の住まいだ。

 その森の中央には転送用の魔法陣がちょうど扉から十歩ほど歩いたところにある。


 魔力無しと言われてきたルーに目を瞑らさせたのは。魔力を持ったものにしか見えない、精霊達と魔法陣を見せないためだ。


 俺達しか見たことない森の精霊達も、ルーが入ってきて物珍しさに意地悪をしただろう。

 いつもなら二人でやるところを一人で転送までやり、ラエルはかなり魔力を消耗しているはずだ。


「ラエル、薬草茶を入れようか?」

「ああ、頼むよ兄貴。少し体が重いんだ」


 わかったと、いつもなら魔法で済むところだが、俺も魔力不足だな。

 奥の部屋でお湯を沸かして薬草茶を淹れて、近くの棚を漁りパンも見つけた。


 それらすべてトレーに乗せて、レジカウンターに座るラエルの元に持っていく。


「ほら薬草茶だ。棚にあったパンも貰ったぞ」


「ありがとう兄貴。僕にもそのパン頂戴」

「パンか? 俺にもくれ、くれー!」


 食べ物と知り、二つしかないパンを俺では無く、ラエルに飛び付く子犬を押さえつけた。


「ギャーッ、なんてことするんだシエル!」


「疲れているラエルに飛び付くな。俺のパンを半分、分けてやる」


「シエルが? やった!」


 パンを半分ちぎって渡すと、喜んで尻尾を振り食べ出す俺達の国の王子。


(なぜ? この国にいて、子犬の姿なんだ?) 


 まあ……聞くのは後でもいいか疲れてるしと、薬草茶を飲む。


 ふぅ、安らぐ。


「おい、くつろぐなぁ! ラエルとシエルは俺に何も聞かないのか?」


 別に……と言いたいところだが。


「なんで、ベルーガは子犬の姿なんだ」


「棒読みかよ。ま、いいか。それはお前達のいない間に国が魔女、一人にやられてしまったからなんだ」


「はぁ魔女だと?」

「え、魔女?」


「何を言ってるんだ、ベルーガ。俺達の知っている魔女はみな優しいぞ」

「そうだよ。僕達に薬草の種類や調合の仕方などを、一から丁寧に教えてくれる人達だよ」


 俺とラエルは顔を合わせた。


「それは俺達の国の魔女の話。でも、よそ者が俺の元婚約者をそそのかした、みたいなんだ」


 元婚約者って……あ、あいつか。


「ナタリー様だったか?」

「そう、公爵令嬢のナタリー様。でも、ナタリー様はお体を崩して領地に帰られたよね?」


 ベルーガは「……じつは」と言い、眉をひそめた。


「それは表向きの発表なんだ。ほんとうは……ナタリーはいなくなってしまったんだ」


「いなくなったぁ⁉︎」

「いなくなったの?」


 そうなんだと、ベルーガは頷いた。

 

「あれは俺が十三歳、月一のお茶会の日。二人で庭園の中を歩き、幼い日に出会った優しい王子と姫の話をした。そしたらナタリー嬢は泣きだして『わたしよりも、その子の方がいいんだぁ、バカァベルーガ』と俺を押し倒して帰って行った」


 そりゃ婚約者に違う女の子の話をされれば……ん? 王子と姫? 


「ベルーガ……その話には、続きがあるのか?」


「あるよ。あのときの二人のように俺達も優しい国王と王妃になりたいな。これからも俺の隣にいてくれナタリー嬢……と、俺は彼女に伝えたかったんだ」


 はぁ……ナタリー様は少し落ち着きのないお嬢様だったな。たんなる早とちりか。


 あの、お嬢様は……。


「でも、どうしてそこから魔女になろうと思うんだ? 俺には訳がわからないぞ」

「そうだね兄貴。でもさぁ、ベルーガは昔からナタリー様が好きだったよね」


「……うん、好きだったよ」


 ガックリとこうべを垂れた、ベルーガをラエルはそっと撫でた。


「それからナタリーを城に呼んでも「嫌だ」と来ず。会いに行っても「会いたくない」と会えず。そんな日々が続き、ついに業を煮やした父上がナタリーの父を呼び出して、婚約を白紙にして戻してしまったんだ」


「あの時か……お前、泣いてたもんな」

「辛かったね、ベルーガ」


「はは……はぁ、そうだな辛かった」


 落ち込んだベルーガを励ますために、ラエルと二人で色々魔法を見せたな。

 召喚でドラゴンを呼んだり、洞窟に冒険だと言って、連れて行ったりしたものだ。


「……ふふっ、楽しかった」

「兄貴は独り言が漏れてるよ。ドラゴンや洞窟は楽しかったね、ベルーガ」


「それはお前達がだろう! まあ、怖かったけど、お前達流の励ましは効いたよ」


「そうだろう、そうだろう」


 ベルーガも少しずつ元気を取り戻した頃。


 俺達は国王陛下に呼ばれた。

 国王の話にはよれば、ベルーガの婚約者を探しに行って欲しいとのこと。

 他の国にも魔法使いを出したが、俺達にも行って欲しいと国王陛下は願われた。


『わかりました』


 そして、俺達は国同士の友好関係がある。魔法の国、マージア国に来たんだ。



 ベルーガは生まれた時から他の人よりも、魔力量を多く持って生まれた。

 そして自身の魔力を扱うのが、ど下手。制御する指輪をつけても、感情の浮き沈みで魔力がダダ漏れてしまう。


 そのちょっとした魔力量のバランスで周りの者は、魔力酔を起こして倒れてしまう。


 その中で唯一、ベルーガとバランスが取れたのはナタリー様、ただ一人だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。