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桜咲く季節に君と出会い  作者: 汐音
7/9

弟たち

「兄さん、冷たいじゃないか。久しぶりに帰って来るのに、優斗ゆうとにだけ会おうなんてさぁ。

 家には帰らないの?」


「今回は滞在短いから東京までしか来る予定なかったんだ。悪かったな、知らせもしないで。でもよく来てくれたね」


2人の弟の後ろにもう1人、愛らしい顔をした少年がいるのに気が付いた。


「ミチル兄さん、こちらルイ君といってね、アルバイトに来てくれてる大学生」


「藤原ルイといいます。優斗さんにはいつもお世話になっています」


「へえ、優斗の? 珍しいな」


末の弟の優斗は人当たりが良さそうに見えるが、これがなかなか人を寄せ付けない。友達の話なんかも聞いた事がないし、アルバイトを雇うなんて意外だった。僕には小さいころから懐いているんだけど。

昔から黙々とひとり実験するのが好きで、大人になってもずっと薬草の研究をしている。何を思ったか数年前にバーを始めると言い出して、自分の都合の良い夜にだけ細々営業しているそうだ。相変わらず優斗の考える事はよくわからないが、楽しそうにやっているから、まあいいんだろう。


僕らはカウンターに陣取って、5年分のあれやこれやを話した。主に僕のバリの話だ。

ふと暁星あきらが聞いてきた。


「ところで兄さん、昨日はどこに泊まったの?」


「ああ、昨日か」


夢のような時間を思い出し、甘い気持ちで胸がいっぱいになる。


「大学の時の友達に偶然会ってね。つい話が弾んでさ」


「その友達って、誰?」


「え? 誰ってお前…… なんでそんな事きくんだ」


3人の視線が僕に集中する。自分の顔が赤くなってるのを感じる。暁星のヤツ、いっちょ前に僕をからかおうってか、生意気になったもんだ。

しかし3人の顔を見比べて最後にまた暁星を見れば、どうもそういうわけではないらしい。イヤにまじめな顔をしている。


「それはまあ、アレだよ。その、沖田っていってさ。

 昔お前らも会った事あるだろ?

 あいつ、まだ学園都市に住んでるんだよ。びっくりした」


暁星と優斗が驚いた顔をして目を見合わせる。


「沖田さんって、あの? 誠司せいじさん?」


照れを隠すようにあらぬ方向に目を反らしながら軽くうなずく。


なんで2人そろって、そこをそんなにつっこんでくるんだ? そこはほら、そっとしておいてくれよ。


暁星が僕の顔をじっとのぞきこんでくる。


「おいおい、なんだ? その話はもういいだろ?」


早く別の話題に移ろうぜ、察しろよ。


すると暁星がゆっくり口を開いた。

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