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桜咲く季節に君と出会い  作者: 汐音
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久々の帰郷

とにかく家を出たくて

関東の或る研究学園都市の国立大学に進学した。

大学卒業後、何度か転職した。


1度目は、阪神大震災の年。

バブル崩壊後の就職難の中

なんとか決まった会社だった。

3月はじめに内定式があったが

被災の影響で3ヶ月間無給の自宅待機となった。

学生時代の貯金を削りながら生活していたが

やっと出社した直後から始まった

リストラを見て転職を決意した。


2度目は、東北の震災の後。

何度か勤め先を変え

小さな広告会社に勤めていた頃だ。

経営状態に加えパワハラが横行、

同僚同士の足の引っ張り合いにも

嫌気がさしていた。

古い友人から頼まれて作ったwebサイトを

どこでどう知ったのか

「副業禁止の社則違反」と

懲戒解雇処分を言い渡された。

何か理由が欲しかったのだろう。

会社を去る事に

何の未練もなかった。


しかし「懲戒解雇」となれば

次の会社探しは難航するだろう。

それは痛い。

それよりも

すべてがむなしく思え

どうにも気力が湧かない。


そんな頃

たまたま友人の誘いでインドネシアのバリ島に渡った。

その時はぶらりと気分転換に、

なんて思ってたから

海外移住することになるとは思いもしなかった。

生きていると予期せぬことが起こるものだ。


友人宅に滞在し

仕事の相談などたまにのる。

そんな南の島でも

色々あるようで

新しく会社を作り直すことになった。

“色々”っつって

話せば長くなる。

ものすごく簡単に言えば

友人の会社が現地パートナーによって

いつのまにか勝手に転売されてしまっていたのだ。

インドネシアでは割とよくあるパターンらしい。


そんなわけで今回は

僕が筆頭株主となり

外国人オーナー枠の企業を

新たに立ち上げることになったのだ。

バリ島生活も気づけば長くなり

ずいぶん慣れてきたものの

申請からすでに2年経ち

今頃になって

大学卒業証明書を提出せよという。

一体どうなっているんだ。


色々と思うところはあるが

あの頃に比べれば格段に気は楽だ。

どこでどう暮らしても面倒はある。

生きるってそういうもんだ。


そんなわけで、5年ぶりに帰国。

大学生活を過ごしたあの研究学園都市を訪れることになった。

だいたい証明書一枚出してもらうのがこんな手間だなんて

オンラインでどうにかならないのか。

帰国の手続きが煩わしい。


あの町を訪れるのは25年ぶりか。

25年というと四半世紀だな。

自分の人生を

“世紀”単位で語る日が来るとはね。

特にこの5年間のんびりやっているもんだから、

時間に対する感覚が欠落しつつある。


約7時間のフライトは

あれこれ思いを巡らせているとあっという間。

成田空港に降り立った。


久しぶりの日本だ。

空港のトイレも洗面所も、壊れていない。

水がちゃんと出るし、床も濡れておらず

臭くない。

トイレットペーパーが

どの個室にもきちんとセットされている。


昔は気にもしなかったそんな事が

こんなにも新鮮に感じられるなんてな。

我ながら自分が可笑しくて

思わずフッと笑ってしまう。

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