最終決戦
少し短めです。
すいません!!
その場には、重く張り詰めた空気が漂っていた。
周囲を囲むオークたち、そして私の後ろで立つヒルクも沈黙を守り、この森にこれまでの激戦を想像できないほどの沈黙を落としている。
だがそれは決して争いが集結したという訳ではなく、それは私が練る魔力の高まりが、相手が放つ覇気が、この戦いが終わった訳ではなく、むしろ今始まろうとしているのを言葉より雄弁に伝えている。
そんな一触即発の状況で、私は彼我の戦力を分析していた。
目の前に立つはハイ・オーク。圧倒的な剛腕だけで全てを捻じ曲げ、スタンピードが国家にすら危険視される理由の1つ。
パワー型で戦い方は単調であるものの、ただひたすら攻撃をする姿勢は相手に攻め入る隙を与えないだろう。
〈四臣〉の一角として、少なからず魔物と戦ってきた私でも、最高SS-級の敵しか経験はない。
オーク・キングを凌ぐ程優れた統率者がいると推測されるこの群れでは、ハイ・オークの危険度SS-級は信用出来るものでは無かった。
最低でもSS級。最悪の場合SS+級も有り得るかもしれない。
元々〈四臣〉は、あくまで戦争の際の戦力であり魔物を専門としたものでは無いそうだ。
故に私は、冒険者が多用するという〈魔闘法〉のやり方も知らないし、魔物専用の聖属性魔術も覚えていない。
魔物の生態についても詳しく知らないこともあり、この魔物との戦いはかなり厳しいことになることは間違いないだろう。
それでもここで私が死んでしまえば、ヒルクも、カナタも死んでしまう。いくらドラゴンといっても、SS級に対抗出来るには千年竜クラスまで進化しないと勝負にならないだろうし、カナタは例え剣の精殿に自我を交換したとしても3分で倒しきれる相手ではないことは明白だ。
私がここで倒しきらなければ、皆死んでしまう。
双肩に乗せられた責任の重さに弱気な感情が浮かんでくるが、それでもやるしかない。
多くの人の人生をめちゃくちゃにしてきた私ができる贖罪は、それと同じくらい多くの人を救うことだと思っているから。
都合のいい解釈、と罵られても仕方がない。
自分勝手に生きて、結果として人を救うことが出来たらそれでいいだろう。
故に今は、自分に与えられた力を使ってあのオークを倒す。
決意を固め、更に魔力を強くした私にオークが警戒するように大剣を構える。
紅く、周囲を照らすように光る宝玉が嵌め込まれた大杖ーーー〈太陽の魔杖〉が戦いの気配に喜ぶように波打った。
圧倒的な静寂の中、剣奴試合の開幕を告げる鐘の音が響き渡ったような幻聴。
聞こえていない筈のそれを合図とするように、ハイ・オークが有り得ない速度で私に迫る。
「ガボォオオオオオオ!!」
地を震わせる雄叫びをあげ、漆黒の大剣を振りかざしながら突進してくるその様はまさに悪鬼。
逃げ出してしまいたい衝動を必死に堪え、まずはこの一撃を防ごうと練っていた魔力に属性を与える。
「〈絶対防御〉!!」
大量の魔力を消費し世界に誕生したその魔術は、青白い障壁が幾何学模様に並ぶ盾のようなもの。
私が放てる土属性魔術の中では最高峰の防御力を持つその魔術に、恐ろしい速度で距離を詰めてきたハイ・オークの漆黒の大剣と衝突する。
金属と金属がぶつかりあう硬質な音が森に響き渡り、青白い障壁にヒビが入る。
そのヒビは徐々に広がっていき、やがて結晶が砕けるように美しく、儚く散っていく。
その幻想的な光景とは裏腹に、一撃で最高峰の魔術が打ち破られた私は酷く混乱していた。
ハイ・エルフとなった今でも馬鹿にできない消費量の魔術が一撃で砕かれる相手のオークの実力に戦慄し、それがSS-級の範囲に到底留まっていないことを思い知らされる。
やはり有り得ない実力を持つハイ・オークは私の障壁に弾かれた大剣をいとも容易く構え直し、再度有り得ない速度で疾走を始めた。
目で追うことが到底不可能なその圧倒的すぎる身体能力に避けることを諦め、全方向を囲むように魔術を創造するしかなかった。
「〈大地の聖域〉!!」
再びの詠唱に、指向性を与えられた魔術が世界に顕現する。
私を囲むように作られた岩の防壁は、その見た目からは想像出来ないほどの硬さを誇っているが、未だ周囲を巡るハイ・オークには気にした様子もみられない。
その直後、防壁の中からでも感じられる猛烈な殺気に全身が危険信号をあげる。
次の攻撃がくる、と身構える一瞬前に左側の防壁が簡単に崩れ落ち、漆黒の大剣が私の首筋目掛けて振るわれた。
聖属性魔術による強引な反射神経の向上でなんとか攻撃をかわすも、魔術が破られた反動で私は吹き飛んだ。
地を転がり、口の中で土と血が混ざり合う。それをものともせずに立ち上がると、私はなんとか状況を改善するために魔術を放とうと魔力を練る。
圧倒的な速度で放たれた数多の魔術が、余裕綽々で大剣を担ぐハイ・オークに襲い掛かった。
風の刃が、水の奔流が、炎の牙が、土の弾丸が。4元素がオークに牙を剥き、その命を刈り取らんと迫っていく。
それは全てハイ・オークに命中し、そしてそれが1匹の魔物の命を終わらせーーー
「なんて防御力……」
数多の魔術を受けたオークが無傷で立っているその姿に、私は虚ろな声を漏らさずにはいられなかった。
あまりに絶望的な戦いは、まだ終わる気配がなかった。
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