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ボロい鉄の剣が最強になりました〜偽物勇者、異世界を往く〜  作者: 瞬殺のコバルト
1章・フィラル大森林
15/26

オーク、襲撃。

今日はこの投稿だけにしときます。

時折庭から聞こえてくる轟音に急かされるように、俺は庭へと走った。


嫌な予感を必死にかき消すように、俺は全速力で庭に向かう。

そして、走る勢いを止めることがないまま庭へと繋がる外扉を開け放ちーーー


2m程の、豚顔をした魔物に、庭が蹂躙されていた。

数はおよそ100匹ほど。先程の轟音は、他の豚顔に、守られた豚人術師(オーク・マジシャン)が放った水の弾丸によるものだったらしい。


それは、数多くの豚人(オーク)を相手にしているヒルクに着弾しているからだ。先程から何度も聞いた轟音をあげ、高密度の弾丸が目にも止まらぬ速さでヒルクに直撃する。


それは、ダメージ自体は少ないものの、確実に、着実にダメージを与えている。


周囲を囲むのせいで回復も出来ず、格下相手にも関わらずヒルクはかなり苦戦していた。

だが、それでもさすがはA級の魔物だ。


「ぐ、オォォオオオオ!?」


ヒルクが咆哮を上げ、豚人(オーク)たちが一瞬怯んだところで発生した緑色の炎が周辺の豚人(オーク)を焼き払う。


一気にヒルクを囲う豚人(オーク)たちが少なくなり、少しだけ余裕が生まれたようだ。

動きの鈍った豚人(オーク)の首を切り落としたヒルクを横目に、カレジや大蜥蜴の姿を探す。


よく見ると、カレジは他の豚人(オーク)より一回り大きく、筋肉のついたオークと対峙していた。恐らく上位種だろう。


だが、カレジの戦闘力なら問題ない筈だ。実際彼女は動揺していないし、パジャマ姿ではあるが自信があるように見える。


すると、視界の端に俺を捉えたカレジが、敵と相対したまま叫ぶ。


「ごめん、カナタは大蜥蜴の補助をしてくれ!私はこいつで手一杯だ!」


「分かりました!」


俺も精一杯大声を張り上げ返事をした。

カレジに従い、大蜥蜴を探さなければならない。


補助をしてこいというくらいなのだから、ピンチに陥っていることは間違いないだろう。

だが、大蜥蜴はさっきまでヒルクの傍にいた筈だ。


一体どこにいるんだ?


と、周りを見渡すが、豚人(オーク)たちの巨躯で見えない。

大蜥蜴は巨大だが、あくまで四足歩行だ。

上背は、豚人(オーク)たちより小さい。


先程の声で寄ってきたのだろうか、数体の豚人(オーク)が俺を包囲する。

やはり、統率がとれているな。何らかの上位個体がいる可能性もある。


旅をしていた5日目、2体の豚人(オーク)と遭遇したことがあるのだが、これ程統率がとれた動きはできていなかった。


あの時豚人(オーク)たちを蹴散らしたのは大蜥蜴だ。

いくら統率がとれているとはいえ、レベルも上がった大蜥蜴が負けるわけも無い。


「はやく大蜥蜴を保護したいから、悪いけどお前らには死んでもらう。〈超加速(ブースト)〉ッ!」


口上を述べる間に魔力を操り、しっかりと貯め、形を成した魔力を一気に放出する。


俺は自分でも捉えきれない速度で1匹の豚人(オーク)へ接近。

呆然としている豚人(オーク)の首を鉄の剣が切り裂き、包囲網が崩れる。

仲間の豚人(オーク)達も、たかが鉄の剣で自慢の分厚い脂肪が突破されるとは思っていなかったのだろう、あからさまに動揺し動きが鈍くなる。


本当なら全滅させたい所ではあるが、今は大蜥蜴の救出が先だ。


崩れた包囲網から全速力で逃げる俺に、呆然とした豚人(オーク)達はついていけていない。

故に、置き土産を残す。


土弾(アース・バレット)二連の型(セカンド)!!」


鉄の剣のスキル、二重詠唱を応用した魔術。

詠唱した直後、呼応した世界が中空に数多の土の弾を浮かび上がらせる。

それは、普通の土弾(アース・バレット)ではない。威力、射程、スピード等、全ての面で通常のものを凌駕しており、浮かび上がった弾の数も桁違いに多い。


それが装填され、走りながら俺は上げていた手を振り下ろす。

その動きに連動するように、困惑している豚人(オーク)たちに無数の土の弾丸が打ち込まれる。


「グルオオォォォ!?」


ひとつでも当たれば致命傷になりかねない一撃に豚人(オーク)たちは絶叫し、1匹、また1匹と倒れていく。

豚の屍は穴だらけで、首を切られて死んだ豚人(オーク)が羨ましく見える程壮絶な死に様。


それを作り出した俺も、かなりの負担を身体に受けていたのだが、それを無視して自動回復に丸投げする。


「くそ、ヒルクが居てくれれば……」


そんなぼやきを思わず口にしてしまうが、それでも俺は行かなくてはならない。

大蜥蜴は、ここまでずっと歩んできた仲間だ。

不利な状況なら、助け出してやらないと。


その一心で俺は占拠された庭を駆け回る。

豚人(オーク)たちが溢れかえり、俺に気付いた豚人(オーク)に包囲される前にゴリ押しで脱出する。


すれ違った豚人(オーク)たちの首を切り、それに気付いた仲間の豚人(オーク)たちが俺を包囲しようとする。包囲網が完成する前に超加速(ブースト)で脱出し、軋む身体を無視して大蜥蜴を探す。


何度目か、豚人(オーク)の首を撥ねた時に起こった充実感。

久しぶりのレベルアップだが、ステータスを確認している暇はない。今はただ、闘いに集中するべきだ。


(カナタ、超加速(ブースト)に頼りすぎだ。このままでは自動回復が間に合わなくなるぞ?)


と、剣の精(エンディル)からの忠告。だが、オークたちは巨躯の割りに素早い。下手をして捕まるよりはマシのはずだ。


なにより、早く大蜥蜴を見つけなければいけないからな。


(その若さで、身を犠牲にして戦う貴様を、我は理解できん。それでも、我は貴様の剣だ。迫るものは切り裂いて見せようぞ。)


頼もしいな。これからも頑張ってくれよ?


斧を振り上げたオークの右足を切り裂き、バランスが崩れた所で首を撥ねる。味方を囮として背後から迫っていたオークには土弾(アース・バレット)を食らわせ、俺は突き進む。


そして、何体目かのオークを倒した後、突如視界が開ける。

理由は簡単で、そこにいたオークたちが殺されたから。


「大蜥蜴!!」


数多のオークの屍の上で、傷だらけの大蜥蜴が崩れ落ちていた。

慌てて駆け寄るが、まだ息はある。今すぐヒルクを連れてくれば、何とか助かる筈だ。


(カナタ、避けろ!!)


ヒルクを呼びに行こうとした俺に、突如剣の精(エンディル)の声が響く。それはいつになく深刻で、俺は条件反射で真横へと飛び退く。


直後、吹き荒れた暴風に視界を奪われる。

暫くして止んだ暴風の中心には、これまで見たことのないような屈強なオーク。


肌の色は燃えるような赤色で、隆起した筋肉ははち切れんばかりにその存在を主張している。普通のオークより2回りも大きく、手にしているのは巨大な棍棒。

辛うじて顔でオークと分かるくらいで、鬼人(オーガ)と言われても違和感がないほどの風格が漂っていた。


先程の暴風は、こいつが吹き起こした風らしい。


(カナタ、逃げろ!恐らくあれは豚人ノ王(オークキング)……この群れの異様な統率はこいつのせいだろう。歯が立たない!早く超加速(ブースト)で離脱しろ!)


普段は超加速(ブースト)の利用をあまり奨めてこない剣の精(エンディル)がここまで言うということは、それほどまでにやばい相手なのだろう。


だが、ここで俺が離脱したらどうなる?

意識を失った大蜥蜴は。


「ごめん、剣の精(エンディル)。俺はそれでも、大蜥蜴を裏切れねえや。」


(やめろ!カナタ!命を無駄にするな!)


これまでに無いほど緊迫した声が脳内に響くのを無視して、俺は挑む。


超加速・二連の型(ブースト・セカンド)!!」


急加速する俺の体が一気に豚人ノ王(オークキング)のすぐ目の前に移動する。

それは、後のことを一切考えていない強引な移動法で、骨が折れ、肉がちぎれる代償に猛烈なスピードを得るもの。


その、身を犠牲にした俺の特攻に、いくら豚人ノ王(オークキング)でも反応することは出来ず。煌めく刃が豚人ノ王(オークキング)の首へ迫りーーー


弾かれた。


「嘘、だろ……?」


鉄を殴っているような硬い感触に、ぼろぼろの俺の身体は行き場を失い地面に倒れる。

鉄の剣が通らない相手など、初めてだ。

それ程規格外の存在、それは、かつての闇竜より強い程の存在。


豚にして、竜を超えた者の、圧倒的な強さ。


豚人ノ王(オークキング)が、ゆっくりと近付いてくるのが分かった。


迫り来る「死」を確信して、俺は激しく痛む全身の力を抜いた。


だから。


(〈自我交換〉)


急速に遠のく意識の中で、明瞭に聞こえたその声は、酷く頼もしく思えた。

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