4 勇者ピリポ、ミカエルの剣を発動させる!
トソの村から、ふたたび歩いて数日。俺は、邪竜ファフナーの巣に着いた。目の前には、小さな洞くつがある。
てか、勇者になって数日で、この文章おかしくね!? 勇者始めて、いきなり邪竜の巣って! 死ぬの!? 俺、死ぬの!?
そんな恐れもよぎったけれど。
落ち着けー、俺! 勇者ピリポ! きっと中にいるのは野良犬か何かだ! 野菜や鶏を襲うくらいのやつだもの、きっと俺にも何とかできるくらいのやつがいるに決まっている!そうですよね、大天使ミカエルさま……!?
俺は、剣の守護者であるミカエルさまに祈り、気持ちを持ちなおした。
持っていたランタンに火をともして掲げ、洞くつの奥へと向かう。すると……。
キュウウウ!
んー……。
なんか、邪竜の洞くつにはふさわしく無さげな、ちょっとカワイイと思えなくもない声が聞こえてきた。
キュウ!
よく耳を澄ませると、なんだか声は悲しげだ。
何がいるんだろ……?
俺は、恐れよりも好奇心が湧いてくるのを感じた。
勇気を出して、洞窟の最奥へと向かう。
キュイ!?
あっ。向こうも、こっちの気配に気づいたみたいだ。
ランタンの光が広がる先には……確かに、竜、ドラゴンが一匹いた。ただし。それは、とてもとてもちっちゃなドラゴンで。俺の身長よりちょっと低いくらいの、赤い色をしたドラゴンだった。
「シャー!!」
背中の羽根をぱたぱたとはばたかせ、舌を出して威嚇するドラゴン。でもサイズがちっこいので、何だか可愛い。ポツポツと火も吐いてはいるが、マッチですったくらいの火が口から出てる。鳥のような足で、二足歩行で歩いているけど、ぽてぽてと動きにくそうだ。トカゲのようなおなかもぽっこりと出ていて、何だか愛嬌がある。
うし! このくらいなら、もしかしたら……もしかしたらこの新米ほやほや勇者の俺でも追い払えるかも!
それでも、とりあえず持っているのはあの柄だけの「ミカエルの剣」なので、それを一応は振りかざしてみた。こんな可愛いドラゴンなら、柄しか無いポンコツの剣でもなんとかなるかも……!?
「シャーッ!」
ぽてぽてと、ドラゴンがゆっくりと近づいてくる。
「えいっ!」
俺が、柄をちっちゃなドラゴンに向けると……パアアッ、と柄に。なんと、光でできた剣が現れた!
光の剣は、やって来たドラゴンの体に突き刺さった。
キュウウウ!?
刺されたちっちゃなドラゴンが不思議そうな叫びをあげる。
そうして……光の剣に刺されたドラゴンは、これまた強い光に包まれた。
「な、なにが起こってるんだ……!?」
俺も、その様子を呆然と見つめる。光が収まり、目がまぶしさを感じなくなったとき……目の前には、ひとりの女の子が立っていた。