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3 勇者ピリポ、初めて村の依頼を引き受ける!

俺は、すこしの路銀(ろぎん)と、旅に必要な最低限の道具を渡され、村長と神官ザインさんの笑顔をバックに、住み慣れたワッセの村を出た。というか、出された。


「東の山脈にいる邪竜のところへ向かうのじゃ! ピリポよ!」


いや、だからね村長。俺はこれまで、勇者とはいえふつうの村人とほとんど変わらずに育ってきたワケで。村の守りを出来る程度の武器の扱いしかしたことが無いのに、いきなり邪竜のところへ行けっておかしくね?


竜、ドラゴンのことなら、俺だって、ときどき村へやって来る吟遊詩人の歌に聞いて知っている。とかげの親玉みたいな姿で、背にはコウモリの羽根を持ち、頭には対になった角が生えているという、モンスターのなかではいわゆる最強レベルの存在だ。いい竜も悪い竜もいて、いい竜はとても賢くて、人間に知恵を授けてくれる神さまみたいなのもいるらしいけど……。


ワッセの東にある山脈に住む竜は……そりゃあ、邪竜なんて名が付いてるんだから、ヤバイほうに決まってる。たしか、歌では俺が生まれるころに、ぴたりと悪さが不思議に止んだと言われていたような……。


……話が分かる竜だといいんだが。そのまんまの邪竜だったら、俺こと勇者ピリポの物語、いきなり終わるよね。終わっちゃうよね??


俺は、数日森の中を歩いて、東の山脈に近いトソという村に着いた。


「あの、こんにちは。いちおう、新米勇者の、ピリポと言います」と、俺が挨拶すると。


「おお勇者か! ちょうどいいところに。待っていたよ!」と、入り口で見張りに立っていた村人さんが笑顔になった。


村人さんはさっそく、村の様子を話してくれた。


「歌にもあるように、ここ16年間、あの邪竜ファフナーのやつはおとなしくなったんだ。村や町も荒らされていないしね。……ただ、最近になってすこし困ったことがあってな」

「なんですか?」と俺。

「いやあ。村の野菜だの鶏だのが、何者かに食われる……まあ、事件とは言えなくもないことが、最近起こり始めていてね。もしかしたら、ファフナーのやつと何か関わりがあるかもしれないと、俺たちトソの者はすこし怖気づいていたんだ。誰か、勇者を呼んで、竜の巣のようすを探ってくれないかな……と、依頼を出そうとしていたところなんだ」

「はあ、野菜とか鶏ですか」

「うん。いちおう竜のはずなんだがね。新米勇者のピリポ君。どうか、よろしく頼むよ」


そういう訳で。俺は、邪竜の巣の様子を探りに行くことになった。


まあ! もしかしたら、邪竜ファフナーつていうやつはいなくなって、野良犬とかが住み着いただけかもしれないし。それを追っ払うくらいなら、先日まで村人そのいちだった俺にも、なんとかなる案件かもしれない!


そう考えて、俺はこの依頼を引き受けることにしたんだ。


本当に邪竜がいたら、とっとと逃げようかな! 勇者らしくないかもしれないけど、まあ、(つか)だけの、そして勇者としての経験もまったく無い、最弱な「ミカエルの剣」持ちの俺だもの。仕方がないよ! 逃げてどこかの村で、村人そのいちに戻してもらって、ひっそり生きてもいいよね!?

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