2 いちおう、それでも最強の剣らしいよ。柄(つか)だけど!
「……剣じゃな」
「剣ですね」
村長とザインさんが、ちょっぴりうつろな目で言った。
いやいやいや! 剣無いよね!? どう見ても柄だけだよね!? 綺麗な装飾が付いていて、結構、高級そうだけど、それでも「柄」だよね?
「あの……」
「ちょっと、この『剣』の加護の状況を見てみましょう」
ザインさんが、文句を言おうとした俺のセリフを遮った。
「加護……?」と俺。
「ああ、ご心配なくピリポ。どんな剣であろうと、天使からの加護の無い勇者の剣はありません。……無いはず、ですから」
はずって! ザインさんっ!
「テルツォ・モンドに降りし勇者の剣よ……その加護者を我に明かせ!」
俺が手にした剣の柄を、ザインさんが触れた。
ふたたび、柄が光り輝く。
「こ、これは! ……天界最高の守護者ミカエルの力!」とザインさん。
ざわざわ、と周りが騒然となる。そりゃそうだ。大天使ミカエルさまといえば、俺だって知っている。天界の一番エライ天使さまだよね? え、まじで???
「良かったですね、ピリポ! あなたのこの剣は、最強レベルの剣ですよ」
いや、だから柄でしょ!? 刃先が無いのにどうやってモンスター退治が出来るのっ!?
俺は内心突っ込んだ。
「……最強の剣じゃな」
「……ええ、村の誇りとなるでしょう」
村長! ザインさん! お願いだから現実の「柄」を見て話しをしよう! これ、剣じゃ無いからっ!
内心アグレッシブに突っ込みながら、とりあえずは微笑む俺。いや、村長もザインさんも悪い人じゃないことを知っているし、16年、勇者の俺が育つのを楽しみに待ってたのにこんな「柄」だけの剣が出てきたなんて、認めたくないのは分かるよ。だから俺も、皆の前で、違う! と言いたいのを我慢した。
でもコレ、絶対モンスターのめちゃくちゃ弱いのでも倒せないよね? だって刃先が無いんだもん!
「……旅立ちのときじゃ、ピリポ」
村長が、すこしひきつった微笑みで、俺に言った。
がっでむ!