9話『武具作成(前編)』
さて、学園寮の自室にて冒険者業を行ううえでの、考察をすることにした。
寮の備品である全身が写る姿見の前に立ち、客観視して自身を眺める。
10歳の姿、身長は150cmに届かないぐらいだ。腕を横に伸ばす、細身で力仕事が向きそうにない腕だ。女神さま曰く、ホムンクルスのこの身は一般的な人種よりもステータスは高い、神が地上に顕現するための依代だからだそうだ。大体全ての能力が1.5倍程度なのだと、10歳児でも大人並みの力が出せるとの事。
「でも、身の丈に合わない武器を持つのはおかしいよね。」
子供の姿でロングソードなんて持ってたら不恰好だろうし、ショートソードでも少し長いだろうか?
ならば刃長が少し長めの短剣を持つのが良いか?30~40cmぐらいか?形状はどうしよう?両刃かな?片刃かな?
「悩むね~、先に素材を考えようかな?その内形状も絞れるかな?何か思い付くかも知れないし。」
マジックバッグを漁り、鉄や数種のインゴット、鞣し革を取り出す。素材を眺めながら思案する。
まずは素材だね何にしようか?鉄を使うなら炭素量を変えて鋼も使うだろうし。
いや、チタン?ジュラルミンとかでもいいかな?あ〜でもジュラルミンって耐食性が無いんだっけ?なら軽いチタンかな?でもこの世界にチタンがあるか分からないからし、やっぱり無難に鋼かな?ファンタジー定番のミスリルとかあったら良かったのになぁ〜。
この世界だと対人も考慮しなきゃならないだろうし。でも主に武器を振るう相手は魔物になる。切れ味も大事ではあるけど、硬い皮膚に阻まれた時に折れるのがマズイ。となると1に頑丈さ2に切れ味、取り回しやすさは3番手か?素早く切ることを考えると、振り切った後の隙をなくすために、振り戻しでもダメージを与えられる利点を考える。
となるとやっぱり両刃か?ただ硬いだけの剣だとすぐに折れるから粘りのある方が良い。そうなると製法は刀と同じように芯鉄を皮鉄で包むかな?
鉄のインゴットの成分、炭素量を調整する。
「まずは『組成変化』っと、これでジャパンメイド高品質な鋼のインゴットの出来上がり!」
これに芯材としての鉄のインゴットを使い加工する。
「『固体操作』っと」
鉄のインゴットを引き延ばし折り返す20回ほど伸ばしては折り返す。
日本刀を作る際の折り返し鍛錬と言われる手法だ。昔、刀作りに興味があって調べた事があった。その時の知識がうろ覚えながらも役にたっている。
折り返し鍛錬の終わった鉄を短剣の形に整える。刃長35セラリムの両刃の短剣に仕上げる。
次に同じように鋼のインゴットを引き延ばし折り返す。こちらは30回程折り返した後、鋼を刃の形状に加工して、内部は先に作った短剣がスッポリと嵌め込めるようにし、芯となる鉄の短剣に被せる。
「これを『固体操作』&『炎熱操作』っと、これで溶け合って一体化したはずだ!後は水で急冷して再度『炎熱操作』これで焼き戻し完了!」
出来上がった短剣の柄の部分に鞣革をきつく巻き付ける。これで完成である。
「イメージした形状に作れるってやっぱり魔法は便利だね。」
でも鍛治士が作る場合とどう違うのかも検証しないとな。はぁ〜、やる事がまた増えた。これはこれで充実した日々ってもんなのかね?
まずは出来上がった短剣を解析してみますか!
「『解析』何々、『鋼の短剣(品質B)』おぉ〜品質Bって上出来じゃない!!」
ん?まだテキストに続きがあるね。『刃が研がれておらず殺傷力は低い』!?
あぁ〜そう言えば確かに研ぎの工程をしてなかったよね。だけど素人が研いでも切れ味って悪いんだよね。
仕方ない研ぎは本職にお願いするか。ついでに本職の鍛治士の作品を解析して差を見なきゃだし。
「よし、研ぎを外部に任せるってことは、1個だけだと何か勿体ない気がするから他の武器も考えよう。」
ナイフによる近接戦闘だけと危険だろうし、中距離でも戦えるようにしておきたいよね。中距離だとやっぱり槍かな?と言うより槍しか思いつかないよね。
穂先は先程のナイフと同じ作りでサクッと作る。柄の部分は、槍のメイン攻撃方法は刺突なので軽くても問題ないだろうから木材で作る。とは言えある程度の硬さは必要だろうからオーク材にする。これも商業組合で売ってたしね。
錬成術の『固体操作』だけど金属の形を変えるだけかと思うとそうではなく、固体ならなんでも思うように形を変えられる。木材がスライムの様な軟体物みたいにウニョウニョと動き変形して行く。正直に言って少し動きが気持ち悪い。
そんな事を考えているうちに真っ直ぐな木の棒が出来上がる先端には穂先を嵌め込むための凹みも付けてある。長さは自分の身長と同じにしておいた。これに穂先が付くと身長プラス30セラリムの全長約180セラリム≒1.8リムとなるからちょうど良いだろう身長+αだと感覚的にも取り回しがしやすそうだしね。
遠距離の攻撃方法は錬成術で試してみたいことがあるから弓は作らない、ナイフや槍なら素人でも何とか使えるだろうけど弓は無理だろうしね。
「さて、次は防具について考えるか」
防具については素人が作っても欠陥品にしかならないと思うんだよね。素材と要望を伝えて作ってもらうのが確実だろう。
要望点の絞り込みからだよね。まずは、誰でも考えるつく軽く丈夫なこと。動きを阻害しないこと。後は戦闘スタイルによるだろう。
武器はナイフと槍となると足を止めての打ち合いでは無いね。重装備では無く軽装備となる訳で、ならば防具で保護する部位は頭・胸・腕・腰回り・足の5箇所かな?でも腰回りって金属製品だと動き難くそうだよね。その辺は鍛治士さんに相談して金属か革か考えるかな。腕は手の甲から肘までの前腕部を保護するガントレット、胸はブレストアーマーって言うのかな?この辺はゲームの知識でしか無いけど、肩の部分はどうしよう?ゲームとかだったら肩当てみたいな物が付いているけど、あれって動きを阻害しないのかな?それを考えると腰当ても同じかな?腰を捻る動きを阻害するよね?ブーツはやっぱり革製品かな?魔獣の革とかだったら金属より軽くて硬いのあったりするのかな?学園の倉庫には魔獣系の皮って無かったからね。この辺は見に行ってみないと分からないなぁ〜。魔獣の皮に金属板で補強とかもあるだろうし、これについてはプロの意見を聞くしか無いかな?
「よし、鍛治士の所に行くとしますか!」
と言ってもどの鍛治士が良いのか何て分からない。本来なら冒険者組合にいって聞くのが良いのだろうけど、登録してないし等級偏重主義のこの世界だから、絶対にまともに対応してくれないのが目に見えている。さて、どうするか・ ・ ・
「あっ!そうだあそこなら!!」
良い案を思いついた。早速行動するとしよう。