8話『ファンタジー定番品との邂逅』
金策1の王炭販売を成功させてから1ヶ月が過ぎました。
今は5月=『峻厳なる父』の月10日です。金貨20枚ほどの収入を得て、心にも大きく余裕が出来ました。
学園では相変わらず、授業を受けさせて貰えないので、只管倉庫で錬成していました。
もう、錬成するべきものがありません。いよいよもって暇になりそうです。
「ちわっす!素材取りに来たぞー。」
この倉庫に唯一訪ねて来る人が彼です。
彼の名は『ローニン』鍛治科の生徒であり、科の中で一番年下のため雑用をしていると言っていた。
鍛治科は1年生~5年生までの全ての生徒が、同じ工房内で授業?と言うか技術指導を受けている。年次で工房を分けるのも無駄だし、先輩の作品を見せてやる気に繋げるのも良い手だ。
「今日は何が要るんだい?」
「これからの1週間は彫金だからアクセサリーの材料だね。えっと金、銀、銅、鉄のインゴットをそれぞれ10個!」
ちゃんと覚えてたよ、誉めてみたいな雰囲気。心のなかで『子犬か!』って思ったのは内緒です。
材料を二人で荷車に積み込み終わり、伝えるべきことを言う。
「今週は僕も倉庫に居ないから、そこにある帳簿に持ち出す材料を書いてね。」
「わかった~。」
さて、これで授業をサボる事が出来ます。と言うか、錬魔科の生徒以外では、彼しか僕がここに居ることを知らないのですけどね。
サボる理由ですけど、倉庫の素材は全て錬成済み。だから学園にいてもする事が無い。
魔力操作も覚えてしまったので、今は、魔力操作で魔力を体内で循環させている。何処でも出来る訓練だし、ファンタジー物で良く見る魔力による『身体強化』や『魔闘衣』なんかが手に入るかも?と思っている。
授業をサボってやってきたのは、魔道具屋『銀月』です。この1ヶ月の間に何度か訪れて耳寄りな情報をgetしていました。知る人ぞ知る!って情報で掘り出し物が店頭に並ぶそうです。ずっと気になっていたんですよね。態々開店前に来るぐらいには。
店頭には猫が2本足で立ち客を待ち構えていた。いつもの店員のようである。
初めて来店した時に尋ねてみたら『ケット・シー』と言う種族らしい。長靴を履いた猫を思い出す。
「いらっしゃいませ、お客さみゃ。こちらをどうぞにゃ。」
①と書かれたカードを受けとる。
「整理券だにゃ。①番は今日お店に入れるお客さみゃだにゃ。②番は明日、1日1組だにゃ。」
どうもこの時期は掘り出し物目当てに混雑するようで、1日1組限定の早い者勝ちで、じっくり商品を選べるようです。
「では、どうぞにゃ。」
店内は少し薄暗いが、見えない訳ではないので問題ない。明かりを嫌うような道具とかも有るかも知れないしね。
端から順番に見ていく。風の刃を飛ばすナイフ、冷蔵庫の様な道具、遠くの人と会話できる対の水晶玉、マジックポーチ、マジックバッグ・・・
「マジックポーチにマジックバッグ?!」
マジか、色々な物を詰め込めて重さを感じないと言うファンタジーの定番品!
「ヒッヒッヒッ、そうさね。マジックバッグさね。期待を裏切るけど、時間停止機能は無いし、容量もそれ程大きくないよ。ポーチで1リム四方、バッグで3リム四方だよ。」
胡散臭い笑い声が聞こえる。振り返るとそこには、テンプレ中のテンプレthe魔女が居た。
ちなみに、すぐ気付くと思うけど、リム=メートルです。
「十分です。両方買います。いくらですか?」
「ヒッヒッヒッ、ポーチが金貨80枚、バッグが金貨120枚の合計で金貨200枚さね。」
た、高い?!でも『錬成士』であり、素材を大量に確保する必要の有る僕には必須アイテムだ。是非とも欲しい!ただ手持ちが無い・・・
「手付金で金貨10枚預けますんで、1週間待っていただけますか?どうしても必要なので!」
「ヒッヒッヒッ、良いさね。取っておいてやるさね。」
「ありがとうございます。」
取置きしてもらえるのなら、金策に走るだけだ!
すぐに何かは思い付かないので、金策1の王炭を作りまくって稼ぐ!
商業ギルドで只管に王炭を作成する1週間が始まり、そして・・・終えた。
商品を市場に流すコントロールは商業ギルドに丸投げし、作りに作った274袋。金貨274枚の収入です。大金を懐に隠し持ちビクビクしながら魔道具店『銀月』へ向かいます。
特に強盗やスリ等のイベントも発生せず、魔道具店『銀月』へ到着
「ヒッヒッヒッ、大事に使いなさいな。」
ファンタジー定番品かつ必須アイテムをget!
これで色々買い物をしても嵩張らないし、素材も沢山確保出来るし、冒険者登録してみるのも良いかな?
せっかく異世界に来たんだし、ダンジョンとかも行ってみたいしね!夢が拡がりんぐだな。
まずは、鉱石を買って自作武器を用意するかな?予算も十分にあるし、武器は鋼を使って、防具は作るの難しいから防具屋で購入かな?装備を色々考えるって楽しいよね!学園に戻ったら、楽しい武器製作&防具考察タイムの始まりですよ。まだ昼にもなってないから倉庫で試作品を作ろう!あっ勿論使った素材は後で補填しときますよ。あの講師は僕を退学させたいみたいだし付け入る隙は少しでも減らさないとね。