6話『市場調査(中編)』
翌日、聖の日=日曜日。
「よし!まず生産ギルドと商業ギルドの登録からだ!」
生産・商業・冒険者の各ギルドは街の中心部にあり、政務府も同じく中央広場に在るので、横の連携が早そうで良い都市計画だな。学術都市と言うだけあって合理的だ。
まずは、自分が生産職になるから『生産ギルド』に登録しに行く。
アーチ状の玄関は在るがドアは無い。いや、シャッターのように上に引き上げているようだ。中に入ると、前方にカウンターが在る。右手には長椅子が並び手続き等の待つためのスペース、左手にはテーブルが在り打ち合わせスペースのようだ。
「ほんと、役所みたいな造りだな。登録窓口は?っと、有った。」
普段、登録者が少ないようで窓口は1つだけだった。そして、定番の通り受付嬢は美人である。
「登録したいんですが。」
「はい、こちらの申請書に職業を記入してください。」
職業欄に『錬成士』と記入された用紙を見て冷笑を浮かべる。蔑んだ視線が突き刺さる。
『うわぁ~性格悪いなぁ~』
「では、ギルドカード登録料として大銅貨5枚いただきます。」
愛想の悪い受付嬢さんと長々と話をする気も起きないので、サクッと料金を支払い登録することにしましょう。
「では、こちらが生産ギルドカードになります。此方の冊子を確認ください。次の方どうぞ。」
「えっ?ギルドの規約とかの説明は?」
「次の方どうぞ!」
これはサッさとどっか行けの圧力だ。仕方ないな、貰った冊子を後で読み込むか・・・
気を取り直して商業ギルドへ足を運ぶ。
商業ギルドも造りは生産ギルドと大きく変わら無い。商談スペースが全て個室になっていることが違う所だ。
「ようこそ、商業ギルドへ!どのような御用でしょうか?」
うん、笑顔の可愛い受付嬢さんだ。淡い金髪のポニーテールが揺れ動いて尻尾みたいです。笑顔もニコッではなくニパッて効果音が付く感じの、たぶん愛すべきマスコットキャラの扱いだろうと予想できる。
「登録をお願いします。」
「扱う業態はいかがいたしますか?それによって免許が違いますので。」
「どういった種類があるんですか?」
「説明いたしますね。4種はギルド専売契約で取引はギルドとしか出来ませんが、買い渋りなどは無く安定した取引が出来ます。3種は各街での露店販売が出来ます。2種は街や村を巡って販売、行商が出来ます。1種は店舗販売が出来ます。店舗を持つ場合は、1種免許は実績、納付された税金額等をギルドが判断した上で試験に合格しないと交付されません。但し、店舗を相続される場合は実績の査定は無く、試験の合格のみで取得出来ます。また免許は下位の免許内容を包括いたします。2種も持っていれば行商、露店、ギルド取引が出来ます。1種を持っていれば全ての取引方法が可能と言うことですね。但し!上位の免許程年会費と税率が上がりますのでご注意を。」
「では、3種の会費と税率はいくらですか?」
「3種ですと会費は銀貨5枚、税率は売上げの1割となります。ちなみに2種ですと大銀貨5枚、税率は売上げの2割となります。」
「4種は?」
「4種は会費のみです。提示させていただく買取価格に税金分が反映されていますので。」
これからの商いが上手く行く保証は何処にもないし、何より帳簿をつける手間が面倒だし、4種で良いかな?
「4種免許でお願いします。」
「かしこまりました、それでは登録料として大銅貨5枚をいただきます。」
「登録料は生産ギルドと一緒なんですね。」
「登録料についてはギルド間協定で一律大銅貨5枚となっています。他のギルドでカードは発行されておりますか?」
「はい、先ほど生産ギルドで貰いました。」
「では、お貸しいただけますか?一枚にまとめることが出来ますので。」
一元管理が出来るのは嵩張らないので便利ですね。
「はい、登録完了いたしました。商品をお売りの場合は、買取カウンターへ、仕入れをするのでしたら販売カウンターへどうぞ。商いが好調でありますよう。」
職業『錬成士』が記載されているギルドカードを見ても対応が丁寧なままなので凄く好感が持てます。
早速、考えていた金策を実行するために販売カウンターへ、窓口には銀髪の髪を丁寧に後ろに撫で付け、口髭は品良く揃えられ、モノクルをかけた『the・執事』と言うダンディーさんがいます。
「すいません、石炭を購入したいのですが。」
「石炭ですな。どれぐらいの量が要りますかな?」
「10キロメル程度欲しいのですが、いくらですか?」
この世界の重さの単位はメル。1000メル=1キロメルと地球と変わらない。分かりやすくて良い。
「では、銀貨3枚になります。大銅貨1枚で配送も行っていますが、いかがなさいますかな?」
「えっと、商談室をお借りしたいのと、部屋で魔術を使用しても良いでしょうか?僕は錬成士ですので。」
「此処で商品を作るのですかな?部屋の使用料は銀貨1枚ですな。」
「ありがとうございます。石炭は部屋に運んでもらえますか?」
「では2番の部屋に運んでおきますので、お帰りの前に鍵を職員に返却してくれますかな?」
さて、まだ昼前なので時間はある、金策その1を行いますか!