5話『市場調査(前編)』
現地世界の貨幣価値と日本の貨幣価値の比較に間違いがあったので訂正しております。
(誤)串焼き1本600G (正)串焼き1本6G
600Gなら銀貨6枚=日本円で6万円となってしまいます。どれだけ高級な串焼きか!
翌朝以降は淡々と素材倉庫で加工処理をしていた。
3日間を確認作業に費やし、職業LvUpの恩恵をある程度理解した。
ゲームみたいに「〇〇〇魔法が使える様になった。」ってアナウンスが出たりしないので、しらみ潰し、トライ&エラーって感じで試すしかない。そもそも、今までも使えてたが、使ってなかっただけかも知れない。魔法を使える事が楽しすぎて使いまくった結果、確実な検証が出来ない事態に陥っているのである。
学生の身分だから大丈夫であろうが、出来る事を知っておかないと、危険が迫ってる中で生き延びる事が出来ない。命の価値が低い異世界で確認作業を怠った自分に嫌気がさす。
反省は以上として、自分に出来る事の内容はこんな感じだ。
・魔法発動が少しスムーズになった。
・範囲指定の可能範囲が少し拡がった。
・消費魔力が少し減少した。
見事に感覚的な事だ。本当にLvUpの恩恵なのか?と懐疑的になる。計測出来ないから仕方ない事だがモヤっとする。
パンッ!小気味良い音を鳴らし頬を挟み込むように叩く。
「気持ちを切り替えよう!今日は休暇なのだから!!」
今日は、風の日。地球で言うところの土曜日に当たる。学園は完全週休二日制である。今日は、この世界の衣・食・住の内、メインに食を、メインの確認時間に余裕があれば次いで衣を、最後の住居関係は不動産関係ではなく、家具やインテリア等を調査するつもりだが、時間的には食と衣で終わるだろう。
この世界に来た当初、学園で授業が始まるまで1週間程度時間があったのでは?って意見もあるだろう。 無駄な出費を押さえるため寮から出ず、ひたすらに『体術』と『魔力操作』のスキルを獲得する為に鍛練していたから調査は出来ていない。因みに学園の外に出ることは、禁止されていない、寮生も外泊は自由だ、入り口横の寮生札を裏返すだけで良い、職業さえ得られれば見習いとは言え、社会人として扱われるからだ。成人は15才だけどね。
んで、鍛練の成果は?って?そうだよ、チキショウまだスキルは生えて無いですよ!
学園の敷地を歩く、貴族様方に見つからないように注意しながら・・・見つかると突っ掛かってきて貴重な時間が勿体無い。
「よし!面倒な奴等に見つからずに出れた!」
まずは市場周辺で屋台料理で値段と味を確認から。
この学術都市『ルータム』は中心部から東西南北に大通りが伸びある程度の区画整理がされている。北部は貴族や豪商が住む高級住宅街、東に商業区、南は工業区、西は一般住居区なので屋台は中心部から東の商業区側に伸びている通りにある。ちなみに学園は北東、高級住宅街こと富裕区と商業区を分けるように境界として在る。
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『商業区屋台広場』立看板にはそう書かれてある。だが周囲は静かなものだ、静かとは言え調理する音は聞こえるが、客を呼び込む声が聞こえない。
「やけに静かだな。」
屋台と言うと、どうしても縁日を思い出す。もっと客引きの声が聞こえてきて、喧騒なはずだが?
「おっ、坊主此処等は初めてか?」
すぐ右手で声が聞こえる。どうやら首を捻って不思議がっている子供に見えたようだ。売り物は、串焼きか?ファンタジーの定番だな。
「そうですよ。」
「なら、驚くよな。静かなのは、領主様の方針だよ。なんでも、五月蝿いのは駄目だそうでな。客引きに大声出す事が出来ないんだよ。だから皆、調理する音と匂いで客を引こうとしてる訳さ。」
「そうなんですね。納得しました。ところで、おじさんの売っているのは串焼きですか?」
「ん?あぁ、そうだよ。1本6Gだよ。」
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この世界『アルスゲニア』の通貨はG貨幣は、1G=銅貨1枚=100円、10G=大銅貨=1千円、以降10倍毎の貨幣価値で銀貨=1万円、大銀貨=10万円、金貨=100万円、大金貨=1千万円、白金貨=1億円、その上は魔法証書での金銭契約となる。魔法証書を造れるのは『書士』から派生する希少職である『造幣書士(S)』のみだから希少性が高く、その分お値段も高い。
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「じゃあ、銅貨6枚で。1本ください。」
「はいよ、毎度あり。」
何故お金をもっているかって?女神様からの支給品で大銀貨1枚、銀貨10枚、大銅貨10枚と銅貨10枚貰ってました。円換算で21万1千円。結構手厚い支援です。因みに、初日の宿は大銅貨3枚=3千円(提携宿なので1泊分は、国が建替え)、乗合馬車は銅貨4枚=400円でした。
(閑話休題)
では早速食べてみますか!パクっ、モグモグ・・・
「うまっ!何この肉!!」
前世で食ったことある、どんな肉よりも肉々しくて、油が濃厚で甘やか、ピリッとした香辛料の効いたソースが良く合う。
「ん?香辛料?」
「おっ!気付いたか!その香辛料が肉の臭みを取りつつ油の甘味を引き立てるのさ!」
「おじさん!香辛料って気軽に買えるの!?」
「おっおぅ、普通に商業組合で買えるぞ。そこそこ良い値がするが、俺は定期的に大量購入するから割引してもらってるぞ。ん?どうした?」
そうか、異世界モノの定番『香辛料で儲ける』は出来ないのか・・・って、思えば地球の品を入手出来るスキルとかも無いから関係なかったな(笑)
「さて気を取り直して、他のも味見するか!」
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夕刻、学園寮にて
今日は結局『食』の調査しか出来なかったな、『食』項目で解ったことは、香辛料は少し値が張るが庶民でも買える程度。だけど、味付け事態は凝ったものは無く、最初の串焼き屋が一番手が込んでた。聞いて回れば大人気店だそうだ、道理で旨い訳だ。話を戻して、基本は塩味後は+胡椒って感じだった。
「いけそうだな。後は直接買い付けと売れ残りの買い付け交渉、飲食店の廃棄食材の購入どれで進めるか・・・いや、明日の『衣』の調査結果次第だな。」
こうして、夜は更けて行く。