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19話『スキル販売店サッカス』

明けましておめでとうございます。

本年も拙い小説ではありますが、よろしくお願いいたします。


厳格なる翁アマルス

創造神の化身(アバター)であり、契約と罰則を司る神。

右手に天秤、左手に法典を持ち、眼光鋭く顎髭は腰まであり法衣を着た姿で知られる。


この世界には魔法や技能なんてものがあるから犯罪も狡猾で残忍であり、犯罪の隠蔽率も高く商売で不利益を被る事が多い。


かの神の持つ天秤は真偽と公正を量り、法典には法律は勿論のこと、世界中の人物の罪が日々記載される。

神の御前では虚偽や不正は出来ず厳格に法に則って裁きを受ける。


ちなみに、『厳格なる翁 アマルス』は12月の月神である。


*********************


今日も東区を散策している。

迷宮攻略準備は終わっているので、今日は+αを探し求めて歩き回っている。何かに出会えれば良いやとの楽天的な行動。

ま~それを人は散歩と言うのだろうけどね。

メインストリートの商店を冷やかしつつ、腹が減れば屋台で買い食いをし、気付けば14時の鐘が鳴っている。

今いるのは、メインストリートから2本ばかり南へ入った所だ。


ふと意識に引っ掛かった、あっちへ行かなきゃと言う感情。


ふらふらと夢遊病者のような足取りと意識で南東へ向かう。


ハッと意識が覚醒し辺りを見回す。

外壁沿いで陽当たりも悪く、雑多な建物が連なる一角にポツンと、しかし、不自然に差し込まれた陽光を受けた建物。

軒先に看板が出され、そこには『スキル販売店 サッカス』と書いてある。


ドアノブを回し開く。

カランコロンカランとドアに取り付けてあるベルが鳴る。

カウンターに背を向け、新聞を拡げていた男が身体ごと此方に向き直る。


髪は黒髪の合間に、メッシュのように白髪が交ざるが、オールバックに撫で付け、鋭い眼光、品良く整えられたカイゼル髭、咥えられたパイプ。

何処かの名探偵の作者のようだ。


店主であろう男は、此方を一瞥するとまた、新聞へと視線を戻した。


商売気は余りないようだ。


「いらっしゃいませ~。」


不意に頭上から子供のような甲高い声が降ってくる。

見上げると。背に2対のアゲハ蝶の羽を羽ばたかせた妖精がいた。


「あっちは店主のサッカス。あたしは妖精のアウラよ。」

「どうも、初めましてシンと言います。」

「シンね、よろしく。この店はスキルスクロールを販売してるの。」

「スキルって販売出来るモノ何ですか?」

「スキルスクロールってどう言うモノか知ってる?」


質問に質問で返された・・・


「知らないです。」

「スキルスクロールってね、迷宮で宝箱から手に入れるか、技能保有者から抜き取るかなんだよ。」

「えっ!?」

「犯罪者からね、抜き取るの!」


とても良い笑顔で怖いことを言う。

妖精がいたずら好きで愉快犯だと言うのが如実に語られている。


「ぬ、抜き取るですか・・・」

「そう!抜き取るの!」

「・・・・・・」

「おい、アウラ。その説明だと誤解がある。」


渋い声と優雅にカップを操る所作・・・

って、いつの間に紅茶飲んでるの!?


「え~っとね。犯罪者からね、審判騎士?って言うのが、えいやってスキルを抜き取るの。」

「はぁ~・・・。アウラ、説明は正確にしろよ。いいか?犯罪者は裁判で刑が確定する。死刑や終身鉱山労働、危険なスキルは『厳格なる翁アマルス』の信徒である審判騎士団によって剥奪される。抜き取られたスキルはスクロールに封印される。勿論、危険なスキルや希少なスキルは市場には出回らない。こう言った店に回って来るのは、下位職(C)や(D)のモノか用途不明なモノぐらいだ。」

「へぇ~そうなんですね。」

「ま~、適当に見てって。」

「買うなら声をかけろ。」

「はい、わかりました。」


店内を見回す。

ガラスケースの中に丸められたスクロールが並んでいる。

スキル名と簡単な説明が書かれている。

『貫通』:相手の防御効果を一定の割合で貫く。割合はスキルレベルに依存する。

『罠感知』:罠を発見する。発見率はスキルレベルに依存する。

『忍び足』:物音を立てずに移動出来る。移動速度はスキルレベルに依存する。

『解錠』:鍵を開ける。成功率はスキルレベルに依存する。

『毒薬作成』:毒物を作れる。効果はスキルレベルに依存する。

『剣術』:刀剣類による攻撃力が上がる。上昇率はスキルレベルに依存する。

『盾術』:盾の重量が軽減し取り扱いが楽になる。軽減率はスキルレベルに依存する。


こうして見ると盗賊系のスキルが多い。犯罪者から抜き取られるから仕方ないのかな?


「『貫通』って使えそうなのに安いな、何でだ?」

「『貫通』使用中は常に魔力が消費される燃費が悪く扱い難い。店の中で最安値な部類だ。」

「だから金貨1枚なんですね。他のは金貨数十枚から数百枚か」

「有用なスキルは高い、当然のことだ。」

「そうですね。・・・ん?『ベクトル操作』?」

「そのスキルは高レベルの『鑑定』でも用途が知れない。試しに使った者もいたが、効果が解らなかった。更に消費魔力も多く使い難い。その話は有名でな、迷宮産のハズレ品扱いだから安い。」

「だから金貨1枚なんですね。」


イヤイヤ、ベクトルを操れるってチートですよ。

切り付けて刃当たりが悪くても、接触面に対して垂直に刃筋を当てたことに出来るんですよ。

最大限の攻撃力を与えることが出来る・・・


「えっと、それじゃぁ『貫通』と『罠感知』、『ベクトル操作』を貰えますか」

「『貫通』は金貨1枚、『罠感知』は金貨25枚、『ベクトル操作』は金貨1枚だ。それにしても、『ベクトル操作』とは・・・話を聴いていなかったのか?」

「迷宮産がオークション以外で買えるなんて、珍しいじゃないですか。コレクションですよ。」


店主はヒラヒラと手を振り、アウラに対応を任せた。


「は~い、では金貨27枚のお買い上げ~。こっちにお金置いて。」


トレイに金貨を出す。


「あっ!悪いけど5枚ずつ重ねて並べてくれる?」

「あっ、はい。」

「5、10、15枚・・・余りが2枚で、お買い上げありがとー。」


店を後にし、逸る気持ちを押さえながら帰路へと着いた。

本来は、年末に更新する予定でしたが間に合いませんでした。申し訳ありません。

今月はもう1話Upする予定です。



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