14話『気付いた気持ち』
今回は少し短めです。
今日は何時もの倉庫で、マジックバッグの中身を整理している。
このマジックバッグだが、定期的に中身を確認して整理しないと、中に何が入っているのか分からず無駄な買い物をしたり、時間停止機能なんて無いから素材が腐ったりと大変なことになるのだ。ゲームや、漫画みたいに中身が表示されることも無い。
何故か取り出したい物を思い浮かべながら手を入れると、それが手にとれると訳の分からない仕様はある。
それ以外は普通に物置小屋と同じだ。但し、取り出すまでは重さを感じないが、出した瞬間に重さがかかる。
水の入った樽とかを出すときは注意が必要だ。バッグから出した瞬間、数十キロメルの重さが腕にかかる。足の上に落としたら複雑骨折待ったなしだ。
と仕様説明は、ほどほどにして何がしたいかと言うと、初戦闘で手に入れた狼の皮を鞣して革にしようかと思い取り出した。
必要な素材は、まず灰色狼の皮を取り出し・・・
「くさっ!!」
素人が処理し、そのままバッグに入れたままだったから付着した脂が腐ったようだ。翌日に処理しすればよかったともう反省。
倉庫の窓と扉を全開にし換気を促す。
臭気が鼻をつくが我慢して、こびりついた脂を剥がす。何とも言い難い手触りに背筋がゾクゾクする。
生ゴミを焼却箱に放り込み、箱に付いている火の魔石に魔力を流しゴミを燃やす。
大きなたらいに水を溜め石鹸を使い皮を洗う。
濁った水を流し、何度か水を変えながら濯ぐ。
「うん、臭いは何とかなった。」
たらいの中に新しく水を溜め、そこに取りい出したるは茶色の粉末。
魔力回復薬を作った時に抽出したタンニンの粉末である。
「ミレイユ先輩・・・」
ミレイユ先輩が学園迷宮に潜ってから5日が過ぎていた。まだ帰還の話しは聞かない。
先輩は学園でもトップクラスの有名人なので帰還すれば直ぐに噂が流れるからだ。
そんな事が、ふと頭を過る。
「なんだ、やっぱり先輩のこと心配してたんだ」
自分でも意識していなかった感情に気付いてしまった。
この世界で『胆力』スキルを手に入れ、精神的に強くなったけど、心の何処かで職業ランク差別が堪えてたんだね。職業では無く、私自身を見てくれていた先輩に惹かれていたんだね。
無事でいてくれたら良いけど・・・
いや、弱気な考えは止めよう。頭を振り邪念を振り払う。
「よし、続きと行きますか!」
たらいに溜めた水にタンニン粉末を入れ溶かす。
ここからは錬成術の出番だ。『浸透』、『均質化』満遍なく溶け込んだ溶液に皮を漬け込み『浸透』。本来なら長時間かけて徐々に浸透させるのだが、魔法のある世界は、こう言うところが便利だ。
「灰色狼の革完成!」
品名:灰色狼の革
品質:A
性質:均一に鞣された高品質な革
作ったは良いけど何に活用するかは全然考えていない。
肉はどうしたんだって?
うん、実は肉も中に残ってるんだけど怖くて取り出せない。
一応、素人知識で塩漬けして保存している。
木製のバットに塩を敷き詰め狼肉を起き、上から塩を盛り包み込んだのだ。
バッグから取り出して見ると盛った塩が赤黒く変色している。どうやら肉の水分が血と一緒に出てきたようだ。漂う臭いも先の皮程では無いが腐臭がする。
「腐ってるな、失敗か」
この時は気付いていなかったのだ、マジックバッグの内部は風の動きが無いため乾燥させるには不向きであったことに・・・
冷凍するなり風にさらするなりして水分を飛ばして乾燥させる
バッグの中にある全ての狼肉を焼却箱に入れて処理する。
「はぁ~、もっと色々なことが出来るようになりたいなぁ~」
バッグの中を探りながら、ため息がこぼれる。
もっと積極的に色々な物を作っていたら、もっと先輩の役にたてたかな?
とか、そんな思いが後から後から湧いてくる。
先輩の安否が気になって仕方なかった。
この気持ちを表すのには気が引ける、前世と合わせると50歳を過ぎている。素直に表現するには歳を取りすぎた。
もやもやとした気持ちのまま、バッグの整理を続けたが何をどうしたのか記憶は無かった。