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13話『日常のひとコマ』

ヒロイン候補登場

初戦闘を終えた翌日、いつもの倉庫にて、私は頭を捻っていた。

それは、狼を解体した時の事。脳内に響き渡ったあるアナウンス。『スキル『解体』か解放されました。』と

スキルの『取得』では無く『解放』これが分からなかった。『取得』とはスキルの条件に合致する行動をとり続ける事によって習熟し得るもの。剣術スキルなら剣を使い続け、体に染み込ませた結果得ることが出来る。その後研鑽を続ける事によってスキルレベルが上がって行く。

では、『解放』とは?昨日の状況を考えると元々備わってたものが解放されたって事だと思う。トリガーは該当する行動を取る事。習熟するほど反復しなくて良いっぽいのは有難い。

『解体』にはスキルレベルの表記が無い。どのようなスキルでも取得したてはLv1と表記される。

だが『解体』にはLvの表記が無い。推測ではあるがLvによって解体の上手さが変わるのではなく知識量によって変わるのだろうと思う。

もっと色々と知りたいんだがどうもレシピブック自体には『解析』の効果が無い。だからどれだけのポテンシャルがレシピブックにはあるのか?が分からない。


机に向かいウンウン唸ってると、「コンコン」と側面より音が聞こえた。

ハッとして扉の方を向くと、そこには扉にしな垂れながら此方を見つめている美少女。腰上まである艶やかな黒髪、細面に黄金比のパーツ配置、少し肉厚のエロスが感じられる唇、普段は切れ長のキリッとした目のクールビューティな美少女。と言うか妖しい魅力に溢れる美女である。でも今は何か微笑ましいもの見たって感じの優しい目つきで母性をうかがわせる。


魔導科4回生のミレイユ=ストーレン先輩

ストーレン侯爵家の長女。職は炎術士(B)。魔術士の特化上位職だ。


余談だがこの世界の爵位は、上から公爵、侯爵=辺境伯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵となる。


「御用は何ですか?ストーレン先輩」

「あら?そんな余所余所しい呼び方をしないでネ❤️ミ・レ・イ・ユよ❤️」

「えっ・・・えぇ、ミレイユ先輩。今日はどんな御用ですか?」


この先輩は、柵を作らない。貴族らしくない人と思うかも知れないけど、他の人には凄く塩対応だ。

こんなにデレ・・・いや、フレンドリーになったのは、今から造る物を気に入り、認めてくれたからだ。


「ふふっ、いつものをネ❤️はい、素材ネ❤️」

「雨斗草の露と冷泉水ですか。魔力回復薬ですね?」

「ええ、いつもの通りでお願いネ❤️」

「分かりました。」


まずは、雨斗草の露から加工する。この露は、魔力雨と呼ばれる高濃度の魔力が溶け込んだ雨が降った際に、花弁が袋状になり、雨水を溜め込み、花粉と混ざりあい、それが直後の晴れの日に日光を浴びることにより出来る。

このままでも魔力回復薬として使えるが、とんでもなく苦い。味覚が一日は麻痺する程に。これは高濃度のタンニンが含有されているからだ。

このタンニンの存在を知らないため、世に出回っている魔力回復薬は全て苦いのだ。

だから私は、こうする。


「『抽出』(小声)」


露の入った瓶の外に薄茶色の粉末が現れる。抽出したタンニンだ。直ぐ様タンニンの粉末を片付ける。

冷泉水の瓶に露を注ぐ。本来ならこれで完成なのだが、もう一工夫で二つの液体を混ぜ『撹拌』する。

出来た液体を試験管のような瓶に注ぎ完成だ。


「先輩出来ましたよ。」


品名:魔力回復薬

品質:A

性質:魔力最大値の60%回復。蜂蜜レモン味


後ろへ体ごと振り返ると、むにゅっと柔らかい感触が頬に当たり、ふわっと香水の香りが鼻腔をくすぐる。

頭を抱きしめられ豊満な胸に一層顔が埋まる。

そう、この先輩は、小顔に細くしなやかな手足、括れたウエストなのに胸とお尻の肉感が凄いのです。男にとって理想の容姿をしています。


「これは、お礼よ~♥」


さらにギュッとされる。


これは、私が金銭を受け取らないからでしょう。こんな美人に頼られるだけで嬉しいのに、お金なんて取れるわけ無い。でも、10歳の身体に引っ張られた精神では、性的な興奮を起こしてくれないのが悲しいです。


「先輩、離してください。苦しいです。」


「あら?ゴメンね♥️でもシン君がお金を受け取ってくれないから仕方ないのよ?」

「何故に、疑問系なのですか?」

「ふふ、あの学年もこんなに凄い子を雑用にしてるなんて頭がおかしいのよね。」


あっ先輩の塩部分が出てきた。


「いえ、ランク差別の虐めにあうより、この方が気楽ですし、此処にいなかったら先輩に認めて貰うことも出来ませんでしたし。」


教室で造ってたら周りのレベルにあわせて、市販品の劣化版を提出したでしょうし。


「とっても可愛いし、こんな美味し魔力回復薬まで造れるのだもの、認められても良いのだけれど!」

「僕のために怒ってくれありがとうございます。でも良いんです、この薬は広めるつもりは無いです。先輩と僕だけの秘密ですから。」


この先輩は、自分が納得する魔力回復薬が欲しくて、毎年錬磨科に薬のサンプル作成依頼をしているのだ。

昨年までは回復量が比較対象で、5回生の方が担っていたのだが卒業してしまったので、皆にチャンスが有ると錬磨科の生徒は盛り上ってたのだとか。

この先輩に認められたくて皆、躍起になってるのです。

何せ侯爵家との縁も然ることながら、絶世の美女ですからね。


勿論、今年新入生の錬磨科にも依頼したのだが、お眼鏡に叶った物は無く、私の事も知らなかった。

偶々、ダンジョン攻略準備でパーティメンバーから、薬草類の補充を任され、この倉庫に足を運んだ際に知らない生徒がいたから、魔力回復薬を作らせた。ダメ元で試したら完全にはまった訳です。魔力回復量も然ることながら、味まで改良してあるのは革命的だったそう。


まぁ私自身、魔力量を増やすために魔力枯渇まで使いきって回復と繰り返すなか、不味すぎる魔力回復薬に辟易して改良したんだけど、売り出す事はしなかった。既得権益と揉めるのが目に見えていたから、出回れば絶対他の回復薬は売れなくなる。それに製薬機械になるのはゴメンです。なので、この薬の存在は先輩しか知らないのだ。製作者秘匿を条件に作成依頼を請け負ってるのだから。


「あっそうだ。先輩これ野営で使ってください。」


濃い茶色をした角砂糖のような物体が詰まったガラス瓶を手渡す。


「これは、何かしら?」

「スープの元です。沸かしたお湯に入れて溶かすだけで簡単ですよ。サンプルなので感想を聴かせてくださいね。」

「ありがとう。野営が楽しみになるなんて初めてよ♥️じゃあね」

「気を付けて行ってらっしゃい。」


去り行く先輩の艶かしい後ろ姿を眺めながら、スキルの『解放』について悩むのは、情報の少ない今じゃなくて良いやと思ったのだった。


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