11話『武具が揃えば(前編)』
投稿が遅くて申し訳ありません。
この処女作で駄作な作品を楽しみにしてくれている方にお詫びを。
いや、少ないと言うより、いないと思うから大丈夫なのかな?
翌日の昼。
学園の授業後に『鋼鉄の腕』に来ている。
何故昼に?と思うかも知れないが、この世界では職を得た子供は見習いとはいえ戦力とされる。
生産職は何処かの工房や実家などで見習いとして経験を積むし、戦闘職なら冒険者組合で駆け出し冒険者として登録し経験を積む。
午前中に学園で基礎を教わり、午後からは実地で現場体験や応用を学ぶと言うのが表向きの理由だが、裏と言うほどでは無いけど、生徒の衣食住が王国の方針で無償で賄われていると言っても、税金で賄える範囲は限られるため、少しでも良いものをと思えば自分で稼ぐしか無い。
基本項目が無償とは、衣食住で言えば、『衣は制服』、『食は朝夕の食堂飯』、『住は寮』に加えて授業料と付随する教材のこれらは無償だけど普段着とか筆記用具類、嗜好品とかは自腹です。
少しでも快適さを求めるなら、午後はバイトで稼げ!と言う方針です。王国側は学園で教えることで労働力の指標となる下限を確定できるし、雇う側も学園で教わる内容を知っているからこの仕事は大丈夫と判断がつき易くお互いがwin-winの関係である。
なので学園の授業は昼までなのだ。よく出来たものであるが、生産職の入学1年目を雇う工房は何処にも無いでしょうけど。
ドアを開け中を覗くが誰もカウンターには居ない。奥の工房にでも居るのか?と思うが鉄を打ち音は聞こえない。
「すいませ〜ん。」
元日本人の癖で何故か謝罪で声をかける・・・この世界では滑稽な事この上ない。癖みたいなものだから直らない。
「ちょっと待ってな!」
奥の工房から声が聞こえてくる。しばし待つと工房主のザカルドさんが出てきた。
「おう坊主来たな。」
「出来てますか?」
「あぁ、持ってくるから少し待ってな」
奥の作業部屋から持ってきたのは、研ぎを依頼した槍と短剣それと革鎧。
「まずは研ぎ依頼の品からだが、どうやったのかは知らんが、素材は高いレベルで融合しているが不純物が内部に残っていたから鍛造しておいた。」
「凄いですね!輝きがまるで違います。素人目で見ても違いが判るんですから」
日本製のインゴットを錬成術で融合させたけど、やっぱり本職の目から見れば、刃物に適した金属なのか、不純物の混入状況とかが判るんですね。やはり餅は餅屋と言ったところですね。刀剣類は触れたことはあっても自作、それも製品として作刀したことなんて無いんですから納得です。
「次は革鎧だ。これは硬皮蜥蜴の革を使用している。新米冒険者に最適な鎧だ。硬皮蜥蜴の皮だけなら衝撃には強くても斬撃に対する防御が弱い。だから胸部と背面部の部位には、外皮と内皮の間に薄いが鉄板を仕込んである。多少重量は増すが命を守るものだから我慢しろ。それと着け方は判るか?」
「いえ、初めてのことなので良くわかっていません。」
「なら、教えてやるから着けてみろ。」
「まず、胸部と背面部の部位を肩にあるベルトで繋ぎ留める。取り敢えず今は適当な穴位置で止めとけ。次に頭から被るようにして両脇の下にある幅広のベルトを繋ぐ。後は自分の体に合うようにベルトを調整しろ。」
「長靴と小手については教えられなくても着けれるだろ?」
「はい、そっちは大丈夫です。内側で紐を結ぶだけですから。」
防具を身に纏い武器を持つ。短剣は腰の剣帯に下げ、槍を手に持つ。
「うむ、これで少しは冒険者らしくは見えるだろう。料金は武器の方が100G。研ぎだけなら40Gなんだが鍛造直しがあるからその値段だ。それと革鎧一式の費用が500Gだ。」
「では銀貨6枚で」
安宿とは言え一泊大銅貨3枚=3千円だったことを考えれば、初心者用の防具だとしても5万円は妥当なのかな?
『鋼鉄の腕』を出て門へと向かう装備が整ったのなら次に取る行動は1つしかない。そう、戦闘訓練だ。
本来なら冒険者組合への登録を先に済ませた方が良いのだろうけど、D等級が登録するとなれば絡まれること請け合いです。それにザカルドさんに忠告を受けましたしね。
何でも、新品の装備を着けている新参冒険者の装備を奪う追い剥ぎ行為をするような屑冒険者もいるそうです。スラム街の人々ならそんな事をするのも頷けますが、堂々と追い剥ぎ行為がまかり通ってるのが怖いですね。戦える事を確認してからにしないと早々に屍を晒すことになりそうです。
平和な国に生まれた普通の元サラリーマンに、武器の扱いがどれだけ出来るのか?ってのもありますし・・・
まぁ〜錬成術で倒す方法も考えてあるので、一通り武器の扱いを練習をした後は錬成術の訓練もしますけどね。
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さぁ、やってきました草原です。都市のすぐ近くですけどね。いきなり森とか入ってゴブリン退治!とかしませんよ。
ゲームじゃ無いんですから、死んだら終わりですし、ゴブリンが弱いとも限りませんし。
自分がどれだけ動けるのか?錬成術を使っての戦闘が上手くいくのか?を確認しないと魔物相手は危険過ぎます。
まずは、草食動物から!
この草原には『角兎』と言う動物がいるそうです。臆病ですぐに逃げてしまうので狩るのが難しいらしいです。後、お貴族さまの外套の素材として人気なのだそうです。フワフワでサラサラな手触りがご婦人方に人気なのだそうです。
取り敢えず何処に獲物がいるのか?は、職業『狩人』や『斥候』とかじゃ無いと分からないので、風下から風上に向かって進んで行きます。
革製品とは言え、着て動くと上手く体が動かないですね。ましてや武器まで持ってますし、漫画とかだと違和感無く動き回ってますがアレは嘘だと判ります。とっても動き難いです。
草原を歩くこと暫し、獲物とのファーストコンタクトです。
ですが角兎は既に立ち上がり、周囲を警戒する行動を取っています。目標との距離は50リム=50m。
慌ててしゃがみ込みますが、下草がカサカサと鳴ったと思ったら直ぐに逃げて行きます。
これが本当の脱兎の如しですね・・・
草原の下草の背丈は足首程で、かなりの距離を見渡せます。50リム程の距離で此方も角兎に気付けましたが、向こうは既に警戒態勢ってことは武器を使っての戦闘訓練は攻撃的な動物とかじゃないと難しそうです。
方針転換!錬成術による戦闘訓練へと切り替えて、次の獲物を探します。