本当の黒幕
文化祭当日、僕らの教室はオシャレ?なカフェと変わっていた。
もちろん僕は何もせず、後ろでぼーっと眺めているだけだったが、その感想としてロボット君、霊感少女、月夜、先生、その他もろもろがスケジュールを粉砕したと言っておこう。
「じゃあ、私は文芸部の方に行ってくるからあとはよろしくね」
はい、姐さん。という言葉が聞こえてきそうなくらいの雰囲気で送り出す。
カフェは大盛況で、たくさんの人が今も教室にいる。
このまま眺め続けるのも邪魔になりそうなので騒動の中心となった文芸部を覗きに行く。
「あら、見に来るなんて珍しいわね。買っていくの?」
何やら突っかかってくる月夜を無視しながら文芸部の部室を見回す。
思ってた以上の人数が買いに来ているようだ。
だが、みんなが一斉にスマホを見る。そして即座に教室から、いや、学校から出て行ってしまう。
「何が起きたの?」
「分かりません、一体何が起きたんですか?」
文芸部の部員が混乱しだすが、僕は落ち着いて行動する。
別にどんなことが起きても落ち着いて行動できるなんて特技、出来そうではあるが今回は違う。元々何かが起きることが分かっていただけだ。
少し気だるげな体を屋上へと向ける。
屋上は風通しもよく、ここら辺の街を一望でき、昼休みにはヤンキーやらぼっちやらが昼飯を食べに来ているが、今日ここに来ているのは1人だけだ。
「ここで何してるんだ、七峰先生」
「早見か、こんなところに何しに来たんだ?」
「あんたこそ」
屋上の扉を閉め、2人だけの空間を作り出す。
「学校から出ていく人たちを上から見て」
「それが楽しいのか? とか聞いてくるのか?」
悪役に対する常套句。でも、僕は別にヒーローでも、生徒会長でも、ましてや月夜でもない。
「眺めるのが楽しいのは分かる。僕もそうだからだ」
「なら何をしに来たんだ?」
「これ、あんただよな」
そうして見せたのはこの学校の掲示板。そこにはいつものような明るい話はひとつもなく、ただ、誹謗中傷だけが詰まっていた。
「証拠でもあるのか?」
「霊感少女が念写した証拠写真と、クラス会議の時に月夜が集めてた同一IPによる投稿に関する証拠、どっちがいいんだ?」
七峰先生はニヤリと笑って、その刹那、右手に持ったスマホを空へと誘った
方向としてはひとけもなく、にんきもない場所なので、安全面は問題なさそうだ。
恐らく、これでもう書き込みは出来ないと彼なりに証明したのだろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
「別に僕はあんたがこんなことを続けたってどうでもいい。知りたいのはなんでそんなことをしたのかっていう動機だ」
「それは調べたりしないのか?」
ダメだこの人、なーんにも分かってない。
「他人が想像した空想なんてつまらない。本人の口から聞かないとダメなんだよ」
理解できないような顔をするが、律儀に答えてくれる。
「私はね、吹奏楽部を続けるために教師になったんだよ。いくら歳を重ねても吹奏楽に携われるようにね」
遠く、遠くの講堂から吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
「でもダメだった。やはり自分で演奏しないと楽しくない。他人が演奏するのを見るのはもう飽きた。だから全部ぶち壊そうとしたんだ」
恨めしそうな目でこちらを睨んでくる。そんな変なことをしたつもりは無いのでやめて欲しい。
「君がいなかったらもっと楽しめるはずだったんだけどね」
どうやら彼と僕とのあいだには無視出来ない大きな価値観のズレがあるようだ。
「予測できない世界の方が面白いと思わないのか?」
「自分の思い通りにならない世界なんて面白くないよ」
どれだけ話し合っても理解し合えないようなので、別のイベントを回ることにする。このイベントはもう充分楽しんだ。
屋上の扉に手をかけた時に七峰がボソリと呟く。
「また繰り返すぞ」
どうぞ、お好きに。それがどんなことでも外から楽しませて貰うよ。




