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漆黒の聖騎士  作者: 鷹峰
三、紅蘭の舞姫
19/39

三、紅蘭の舞姫(20)

 と、思いきや。

「待ちやがれ、オカマ野郎」

 ぴたっ。

「〜〜何ですってぇぇぇぇッッ!?」

 麗人はえらくあっさり立ち止まった。

 血相を変えるジャスティンには構わず、ロウはずかずかと詰め寄る。そして、

「テメエ、独りで領主の居城(ところ)に乗り込む気だろ」

 そこにいる全員に届くはっきりした声で、そう尋ねた。

「それは……、」

「領主?どういうことだ、ロウ」

 聞きとがめる親友に、それがよ、と大仰に肩を竦め。

 砦で救出できず、領主のもとへ連れて行かれた娘たちが数名いること。そして、そこにジャスティンの仲間がいるかも知れないことも。ロウは一同に説明した。

「何だって……!?」

「で、だ。こいつらを無事村へ送り届けてから、仲間を助けに行くつもりだったんだろうけどよ――

 生憎、そういうワケでまだ終わっちゃいねぇんだ。

 ……その『数名』も助け出すまではな!」

 鼈甲色の三白眼が、真っ直ぐに吟遊詩人を見据える。ジャスティンは目を合わせることができず、逡巡ののち俯いて黙りこくった。

「ロウさんの言う通りだ!こんな酷い仕打ち、繰り返させる訳にはいかない。

 それに――」

 一段、ラグナの声が沈む。

「キャラバンの仲間を捜してたなんて……初耳だ。

 そんな大事なことを、どうして今まで――」

 長い時間という程ではないにせよ、道中を共にした間柄である。麗人を見遣る彼の瞳は、どこか寂しそうなものだった。

「……ゴメンなさい。でも、これはアタシの個人的な、」

「――っつーわけでよ。おばちゃん、皆。

 悪り。急用ができちまった」

 ちょっと片付けてくる――と、ロウは勝手に宣言する。

「ちょっと、ロウちゃん?人の話を――」

 聞くつもりはない。

「ご馳走はまた今度、腹一杯食わして貰うからよ。

 ちったあ時間あるし、ゆっくり準備しててくれていいぜ?」

 現在の村にそんな蓄えがないことは十も承知で、大きく手を振ってみせる。

「ロウに話したのが運の尽きだな。

 勿論、僕も同行させて頂きますよ?ジャスティンさん」

 片目を瞑る相棒に、ロウは満足そうな視線を送る。

 さらに。

「満場一致――ですね。

 村の皆さん、すみませんが俺たちは先を急ぎます」

 娘さんたちもゆっくり休んでください――と、一片の労いを添えて。

 ラグナはぺこり会釈し、身を翻す。

「……ロウ、」

「悪いな、おばちゃん。

 ――行ってくる」

 何か言いたげな恰幅の婦人を、遮るように詫びを入れるロウ。

「もう、あんたって子は……。

 判ってるよ、どうせあたしが止めたって行くんだろう?あの子といいアンタといい、言い出したら聞かないんだから……ねぇ。

 ……ね、ロウ。絶対に無茶はしないでおくれよ。無事に帰ってきておくれ。頼むよ――」

 そのままおいおいと泣き崩れてしまう婦人。

 誰も何も、かける言葉を持ってはいなかった。

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