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神器遣いと竜姫の闘舞(ダンス)!!  作者: いぬぶくろ
豪結
42/42

エピローグ

ちょっと書き換えようと思ったら、しっくりこなかった……。

そのままで投稿です。

 フェリーでの戦闘――というよりも、大捕り物といったほうが良いのか、それが終わってから半日が経過した。

 俺と堰神は宮前さんの研究室で、制服に着替えた姿でこの部屋の主が帰ってくるまで大人しく待っていた。

 怪我らしい怪我は、殴られた堰神の頬くらいしかない。その堰神の頬には、女の子ということもあるのだろうか、消毒だけではなく皮膚再生薬といった特殊な薬液を塗り込む徹底ぶりだった。


「いやー、ごめんごめん。色々と手続きに手間取っちゃってさー」


 ガチャリドカドカ、とドアを開けると同時に騒がしく入って来た宮前さんは、俺たちに笑いながら謝罪した。

「えっと、まずねー」

「あの、クラエスはどこですか?」


 さっさと本題に入ろうとする宮前さんの言葉に被せるように、心配事だった『誘拐された』はずだったクラエスがどこに居るのか聞いた。


「私は、ここに居るぞ」


 背後から声をかけられた。驚き振り返ると、五体満足の、普段通りのクラエスがそこに立っていた。


「大変だったみたいだな。私のために、ありがとう」

「いや、無事で良かった」


 話を聞けば、クラエスはずっとこの研究所に居たらしい。そこも含めて今から、宮前さんが説明してくれるらしいけど。


「簡単に言っちゃうと、松島って神器遣い――あぁ、今は神器遣いじゃないみたいだけど、その松島が裏で色々と悪さをやっているってことで、その証拠を得るために泳がしたのが今回のことよ」

「つまり、おとり捜査って奴ですか?」


 刑事ものとか、そういった作品を見ていないので何とも言えないけど、たぶん近いのはこれだろう。


「そう思ってもらって構わないわ。そこで重要となってくるのが竜人のクラエスさんで、彼女は幸徒くんと接触してすぐ辺りから松島に目を付けられていたみたい」


 気付いていたのだろうか、とクラエスを見ると、クラエスはふるふると首を振った。

 自分が竜人だと誰にも言っていないとクラエスは言っていたので、松島たちは何らかの情報源か人と竜人を見分ける方法を使い、確定したんだろう。


「そもそも、松島に対しては前々から目を付けていたけど、これがなかなか尻尾を出さなくてね。そんな時に、松島から『自分の仲間に入らないか?』って打診があってね。あっ、これだ、って思ったわけ」


 宮前さんは笑って言っているけど、本当なら結構ヤバい話なんじゃないだろうか?

 それでも宮前さんは気にした風もなく話し続ける。


「私は獅童さんに教育してもらった獅童さん派だし、獅童さんのやったことには肯定的だったから狙われたんだろうね。でも、そのやり口が気に入らないから断ろうと思ったの。でも、そんな時に、イリヤちゃんから幸徒くんについて相談があってね」


 堰神の名が宮前さんの口から出ると、今まで静かに座っているだけだった堰神が急にわたわたとし出した。


「何でも、おかしな理由を付けて制覇大会に出られなくなったみたいじゃない? 学校がそんなめちゃくちゃをやるなら、私たちだってめちゃくちゃをやってやろうと思って」

「それで、今までの話と俺が制覇大会に出られない話がどうつながるんですか?」


 いまいち要領を得ず問うと、宮前さんは携帯端末を操作して、その画面を俺に見せて来た。

 そこには『神代学園の生徒、お手柄!』という見出しと共に、俺と堰神がフェリーをバックに歩いている写真がのったニュースが表示されていた。


「いつの間に!?」


 あの時はドタバタとしていたけど、ニュース系のカメラマンは居なかったはずだ。

 あそこにいたのは、宮前さんと警備部隊の人間しか居なかったはずだ。


「勝手に撮って、ちょっと加工して流しておいたわよ」


 確かに、宮前さんが言う通りちょっと(・・・・)加工されていた。俺は精悍な顔つきになっていて額から血を流し、さらに激しい戦闘が行われたような傷跡が竜人外骨格服(アークスマイトスーツ)についていた。

 堰神は、竜人外骨格服(アークスマイトスーツ)こそおれと同じく傷ついているが、頬のアザがなくなり美人に仕上がっている。


「ちょっと?」


 いまいち自信が無くなり問い返すと、加工した張本人は笑うだけだった。


「最近、テロやらなんやらで民衆のヘイトも溜まっていたから、こうしたやり返した系の話は皆大好きで、閲覧数や感心はもううなぎ上りのトップよ」

「凄い。今も凄い勢いで閲覧数が増えている……」


 更新するたびに、閲覧数の表示が上がっている。たぶん、まとめサイトなどにも取り上げられる勢いだ。


「そこで、話は元に戻るの。ねぇ、幸徒くん。学校の制覇大会の出場者欄を見てみて」


 今さら見て何になるというのか、という言葉を飲み込み、宮前さんに言われた通り学校の行事欄から検索する――と。


「えっ?」


 Eクラスところに、斎藤の名と一緒に俺の名――獅童幸徒という名前が追加されていた。


「序列1位と一緒に悪へ立ち向かい、ボロボロになってまで戦ったヒーローが、制覇大会に出られないわけないじゃない」


 パチリ、と可愛くウィンクする宮前さんを放っておいて、どういうことかと検索をかけると、その理由が分かった。

 堰神は有名だから皆すぐに分かるが、Eクラスの俺は、悪評は有名でも善評では無名だ。そんな中で、様々な人が「誰だ、誰だ」と探すなか、ある書き込みでそれがEクラスの獅童幸徒だと分かる。

 初めは悪辣な言葉が書きこまれているが、次第に肯定的なコメントが増え、最後には俺を無理矢理、制覇大会に出させないようにした学校への抗議コメントが多く書き込まれるようになっていた。

 学校に所属する生徒が書かれたように偽装されているけど、たぶんこれは宮前さんかそれに近い人たちによる情報操作だろう。


神代学園(むこう)が無茶苦茶をするなら、私たちだって無茶苦茶で対抗すればいいだけよ。松島にはその餌になってもらったってわけ」

「つまり――」


 ガクリ、と体から力が抜け、椅子から滑り落ちそうになる。


「全て、釈迦の手のひらってことだったのかよ……」


 どうりで、何事も上手く運ぶと思っていたんだ。堰神が優秀なんだと思っていたけど、まさか堰神もグルだったとは……。


「よくもまぁ、こんな手の込んだことを手伝おうと思ったな」


 呆れながら隣に座っている堰神に言う。


「あら、幸徒くんを何とかしてほしいって言ったのは、イリヤちゃんよ」

「マジっすベゴゥ!?」


 驚きの声が、隣に座る堰神の拳に阻まれてしまった。散発的だったとはいえ、竜人外骨格服(アークスマイトスーツ)を操り、やらに戦闘までこなした体にはかなり堪える。


「あなたがヘタレるのが嫌だったのよ。何もかも、『自分さえ諦めれば綺麗に収まる』っていう腐った顔を見るのも」

「お前、何もそこまで……」

「――嘘だな」


 堰神から放たれる辛辣な言葉に凹んでいると、今まで静かだったクラエスから助け船が入った。


「そこの女は嘘をついている。本当は、心配だった。今も恥ずかしくてたまらないという臭い(・・)が出ている」


 冷静に解説されてしまった堰神は、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。かなり恥ずかしいのか、声をかけても反応しなくなってしまった。


「青春はそのくらいにしてもらってぇー」


 心なしか、声にトゲが生えているような気がする宮前さんは、再び場を仕切るように声を出した。


「これで、幸徒くんは問題なく制覇大会に出場できるようになったわけよ。ここまで皆に協力してもらって(・・・・・・・・・・)出場できるようになったんだから、下手な成績残せないわよ?」


 挑発するように言う宮前さんだったが、この程度の言葉は挑発にも入らない。


「もちろんですよ。1位になってやります」

「おっ、頼もしい。イリヤ、宣戦布告されたわよ」


 茶化すように言う宮前さんに対し、さすがに今の言葉は聞き捨てならなかったのか、堰神が顔を真っ赤にしたまま口を開く。


()、成績が良かったからってEクラスごときに負ける訳ないじゃない」


 確かに、と無意識に口にしそうになったが、何とか頑張って口を閉じた。ここで負けを認める訳にはいかない。


「言ってろ。その足元をすくってやる」


 笑って言うと、堰神も顔は赤いままだけど笑顔になった。


「それと、色々と心配かけさせて悪かった。こんな手の込んだことにまで突き合わせて。心から感謝する。ありがとう」


 素直な、嘘偽りない感謝の言葉を口にする。夢にまで見た制覇大会に出場できるのは、色々な人の協力があってこそだけど、まず発起人となった堰神が居なければ始まらなかった。


「そして――」


 続いてクラエスをみる。


「来てくれてありがとう、クラエス。クラエスが来てくれてから世界が変わった。クラエスが来てくれたお陰で、俺の世界はまた光を取り戻した」


 感謝の言葉を伝えると、やはり後ろめたい部分はあるのか、堰神と違いしどろもどろになった。


「わっ、私が居なければユキトは――」

「クラエス。もうそれは良いんだ。今は、感謝の言葉だけをクラエスに伝えたい」


 目を見てハッキリと伝えると、クラエスにしては珍しく顔が赤くなった。


「あの、私もユキトと出会えて良かった。かけがえのない存在として、これからも支えていきたいと思っている。これっ――これからも、末永く、よろしく頼む」

「あぁ! よろしく頼む!」


 返事と共に、クラエスの手を強く握った。

 突然、手を握られて初めは驚いたクラエスだったが、すぐに俺の手を握り返して来た。





 父さんがクラエスの父親の魂が入った神器核を盗み出さなければ、俺はこんな生活になることは無かっただろう。

 しかし、進んだ時計の針は元に戻らない。ならば、今のこの状況下で最善を尽くさなければいけない。

 クラエスは、地獄のような日々を終わらせる、俺にとって天使のような存在だ。

 そんな彼女と共に、これから歩んでいこうと思う。


読んでいただき、ありがとうございました。

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