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竜人外骨格服を着用しての飛行は初めてだったが、昔、父さんに教えてもらった方法を試してみると、驚くほど安定して飛ぶことが出来た。
初めは、堰神の剣仙とリンクさせて飛ぼうかとも思ったけど、昔取った杵柄というか、飛行に関しては全く問題ないようで良かった。
あとは戦闘だけだが、今現在、俺が顕現できる武器は爪型の粒子刃だけだ。
他は、巨爪の化け物にセットされていないので、何か問題が起きた場合は、俺も堰神と同じように近接戦で戦わなければいけない。
俺に合わせて飛んでいるからか、堰神の飛行速度は竜人外骨格服にしては、やや遅い。お陰でついていけているが、荷物になっているようで情けない。
「――はい」
飛行注意、通信が入った。前を飛ぶ堰神からではなく、外部からの通信だ。
その通信回線を開くと、俺の携帯経由で届いた電話のようで、呼び出しには『クラエス』という表示があった。
「どうしたの?」
集中を欠いたため、飛行速度が著しく低下した俺の異変に気付き、堰神が近くまで戻って来た。
「クラエスからの電話だ」
「出なさい」
今は緊急事態なので後でかけ直せばいいか、と思い、通話の『切断』を押そうとすると、堰神から待ったがかかった。
「でも、今は急ぎだろ?」
「そちらが急ぎではない、という理由はないわ」
確かに、クラエスが連絡を寄越すとしたらメッセージが主だ。学校が終わったから、というのも考えられるが、長いことコール状態にあるにも関わらず、クラエス側から切ることは無かった。
何か、問題が起きたのかもしれない。
「もしもし」
通話状態にすると、クラエスの声は聞こえなかった。代わりに、『ドッ』『ガッ』という、何かを殴る音と一緒に、携帯が地面に落ちる音が聞こえた。
「クラエスッ!? おい、どうしたッ! クラエスッ!!」
その後、すぐに電話は切られたようで、聞こえてくるのは『ツー、ツー』という無機質な音だけだった。
「何かあったの?」
「クラエスに何かあったらしい」
問う堰神に、何とか平静を保ち答える。しかし、鼓動は早くなり内心は不安でいっぱいだ。
「連絡はつかないの?」
「さっきからリダイヤルしているけど、つながらない。そもそも、切れる直前に嫌な音がした」
嫌な音がしたが、ランドリーで斎藤たちを殴り、軽々、放り投げていた。そんなことが出来るクラエスに、対抗できる人間が居るだろうか?
そこまで考え、頭を振る。
できるかどうかではなく、今、クラエスの身に何かが起きているんだ。ならば、今やるべきことは、クラエスの安否を確認すること。
「確か、逆探が……」
逆探なんて大仰な物ではなく、ただの迷子アプリだ。ただし、これは竜人外骨格服を経由して表示できないので、携帯を取り出しての操作となった。
携帯に表示されているのは、今から30分前の物。そこで途切れていた。
「どこか分かった?」
「近くのホテルだ。そこで、アプリが切れてる」
「なら、行くわよ」
俺の携帯を覗き見て、表示されているホテルがどこの建物かすぐに理解した堰神は、俺が言うよりも早く飛び出した。
「おい、待てっ!」
俺も堰神を急いで追う。操作に慣れたおかげで、堰神が飛ぶ速度にもついて行くことができるが、たぶん、本気の速度はもっと早いんだろう。




