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平安の世に花をさかせて。  作者: 七草せり
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やっぱり大天使ミカエル

当面、帝と姫君は師匠さんの用意した屋敷へ移ってもらった。

厳重に結界を張り、尚且つ聖水を撒き散らし何処で調達したのか、銀の十字架まで準備されていた。


「これで悪しきもの達は入って来れません。場所的にも問題ありません。暫くの間我慢して頂きましょう」


「十分すぎるお屋敷ですね…。師匠さんのお屋敷ですか?」


「いや。厳密には違いますが、詳細は省きます。でも信用できる屋敷です」



謎な人だな。とは思っていたが、やはり陰陽師は謎の人だ。でも細かい事は気にしないでおこう。


取り敢えず帝と姫君の為に数人ではあるがお付きの者をつけた。

護衛も勿論ぬかりない。高貴な方には窮屈だし、不便かも知れないが、今は仕方ない。



「帝も気に入って頂いた様です。当面目立つ事のない様に動かなければなりません。

帝のご様子は式を通して報告させます。勿論悪しきもの達に気付かれない様にします」



「それは大丈夫でしょうと思いますが、それより異国の天使とやらは?」


「天后が色々知らせてくれました。堕天使なるものを探して、この日の国に入った様です。じきに対面する事になるでしょう」


やはり大天使ミカエルだ。ミカエルがこの国まで来ている…。



「お気を安らかになさい。今すぐどうとなる訳ではありません。異国の天使と申すものを天后がこちらに連れて参るとの事です。我々の呪は効果はあまりないですから、異国のものは異国のものに任せるとしましょう」


「そんな安易な事で良いのでしょうか…?」


「勿論、我々とて力を尽くします。なれど今回ばかりは勝手が違う。協力なくして、です」



そう言って穏やかな笑みを浮かべた。




それから暫くしてーー




「おい、柚葉! 」


廊下から珠光さんが私を呼んだ。


「何でしょう…?」


「直ぐにお師匠様のお部屋へ行くぞ! 」




何処か落ち着かない様子の珠光さんと、師匠さんの部屋と向かった。



「お師匠様…」


「…入りなさい」


御簾を上げて中へ入ると…。



「!! !」


そこにはこの時代にはそぐわないお方が師匠さんの前に座っているではないか!



「…これ、何をしておる。こちらに来なさい」



暫し呆けてしまったが、何とか気を取り直して近づいていき、師匠さんの右横に少し間を空けて座った。師匠さんの方を向く感じだ。その隣に珠光がこれまた固まったまま座った。


「珠光、柚葉さん。此方は大天使ミカエル殿だ。大丈夫。言葉は通じます」


「…そうですか…」



横目でチラリ。大天使さんとやらを見る。


う、美しい!やっぱり絵画はあてになる!裏切らな美しさだ。

日本人とはまるで違う美の持ち主の大天使様に話しかける勇気など私にはない…。



「如何いたした? 大丈夫だと言ってます」


「…し、師匠さん。いくらなんでもお言葉をかける事などできません…」


必死な訴えに珠光も無言で頷いた。



「何を言うかと思えば。困りましたね。これから一緒に闘うお相手なのに。しかも遥々天界からいらっしゃったお方だ」



その言葉に大天使様が口を開いた。私達に向き直って…。


「初めてお目にかかる。我が名は大天使ミカエル。柚葉とやらは私の存在はご存知だと?」



透き通ったお声だ!やはり裏切らない。



「あ、あの。えーと…。知っていると言いましょうか、私の時代では存じている者がかなりいまして…。この時代から千年以上経った後になりますが…」


しどろもどろな口調で説明した。



「成る程。少しばかり貴女の時代を覗いた事があります。この時代とは随分違う様子だし、まあ異文化が入っていてもおかしくはないでしょう」


「も、勿論そうですが、絵画に描かれているお姿や、教科書や本に載ってるお姿しか知りません。当たり前ですが…。だから今日、本物を拝見して驚いたというか…」


「おい、何を言ってるか分からないぞ?」


「じゅ、珠光だって固まってたじゃない! 」


「当たり前だろう? 異国の天使なんて存在すら知らなかったんだから」


「まあまあお二人共、おやめなさい。ミカエル殿が驚きます」


「っ…申し訳ありません…」



二人で頭を下げた。



「しかし、この時代に来ているとは。ルシファーは何を考えているのか。他の悪魔まで引き連れて」


「波長、でしょうか。この国のこの時代と波長が合った。この世は神々を信じ、仏に祈り、悪しきものを恐れます。

病になれば祟りだと恐れ、祈り縋る。何かあれば陰陽師や寺の僧侶に頼み祈りを捧げる。逆を言えば操りやすいのでしょう。帝に取りいり野心を剥き出しにします。叶わぬと怨みつらみをたれ、人を呪う。浅ましき者達がいる。そう言う異国の悪しきもの達と波長が合い、時を超え、国を超えて引き合わされた。そう考えるのが自然だと…」


「陰陽師殿は様々をしっている。確かにそうかも知れない。だから我々に追う事ができなかった訳か…。まさかここに居るとは思いもしない。堕天使とて頭のいい奴、そして口も達者だ。人を騙すのはお手のもの…。だから厄介なんだ」


「しかしながら、その厄介事を何とかせねば互いの時代にも国にも平和はきません。ミカエル殿、お力をお貸し願いますか?」


「それは当たり前の事。我はルシファーを倒す命を神から受けた。こちらこそ、異国の悪魔を倒して頂きたい」


「そうと決まれば話は早い。宮中を拠点に悪しきものが集まっています。異国の悪しきものも。まだそのルシファーとやらは姿を現してはいません。ですが必ず現れる。その時はご一緒に…」


「他の天使に偵察をさせたのだが、直ぐに見つかってしまった。あちらの状況を知る事ができるか?」


「如何様にも方はあります。…しかし、天使をですか…。あちらに貴方がこの国に来た事が分かってしまったかも知れません」


「そんな事はどうでも良い。どちらにせよ倒しに行くのだから。それより…」


「あちらの動きをお知りになりたい。ですね? 式をこっそり飛ばしています。聖水とやらをかけ、尚且つ結界で護られた式です。捕まる事はありません。そろそろ戻って来るかと…」


「それは心強い。この国は優秀な陰陽師がいるから安心した。ではその偵察結果が分かったら知らせて欲しい」


「承知致しました。ミカエル殿はあちらの奥で休まれて下さい。またお呼びに参ります…」



師匠さんが頭を下げると、バサっと背中の羽を動かしてミカエル様が立ち上がった。



「では…」


そう言って奥へと消えた。




「はーっ! 何だか疲れました…」


「私は面白かったですよ? 滅多にお目にかかれないお方とお話ができましたし」


「お師匠様は肝が座っていらっしゃる…。私も緊張しました…」



「おやおや。それではいけないと言いましたのに…。おや? 式が帰って来た様ですね」



庭の方から白い小さな鳥が中へ入って来た。


師匠様の前に行くと、「ただいま戻りました」


一人の青年に変化した。



「白鷺、ご苦労でした。で、あちらの様子は?」


「はい。珠光様達に奇襲され、少しばかり態勢が崩れましたが直ぐに別の異国の悪魔が来て、持ち直した様です。ルシファーとやらはまだ姿を現しませんが、話によるとじきに来るとか……。藤原氏は益々おかしくなり、今やすっかり帝気取りです。けれど姫君を捜し出せと。この国のあらゆる悪しきもの達を呼びだしております…。都が混乱するかも知れません…」


「そうですか…。実に厄介ですね。まあ今は仕方ありませんか……。ミカエル殿も到着された、後はルシファーがいつ宮中に現れるか…」



何やら思案していた師匠さんは、再びミカエル様を呼んで話を始めた。



「ルシファーは何処にいるのか……」


「宮中に近い場所に居るはずです。今頃力を溜めているのでしょうか…」


「…力をつけられては分が悪い。けれどあっちも馬鹿ではないからな。誰かをたぶらかしているのだろうか…?」


「ふ、む…。どちらも得になる相手。鞍馬の天狗……」



「天狗ですか! お師匠様! その様なものと手を結ばれては…!」


珠光が思わす立ち上がる。



「案ずるな。如何様な事になっても、勝算はありますよ」


「だといいのですが…」



ゆっくり息を吐き出した珠光は、それでも心配そうな顔をしていた。





「珠光…?」


「柚葉……」


「眠れないの?」


「色んな事があり過ぎる。頭がついていかぬ…」


「私だって絶賛混乱中だよ。でも、信じるしかないでしょう? 師匠さんを、ミカエル様を。そして四神を…」


「強いな…」


「強くなんかないよ。不安だらけ。でも、やるしかないんでしょ? この国を、この時代を、私の時代を守る為に…」



月明かりの下、私達は誓ったのかも知れない。


天には丸いお月様。けれど、赤く光っている。

まるで血の様な、そんな赤だ。

怪しく光っている感じで、とても不気味だ。




「さて、明日もあるし寝るか」


「そうだね」



月を気にしながら屋敷の中に戻った。


ちっとも眠れない。でも、明日も色々話し合い、作戦を練るだろう。


またもや眠れぬ夜を過ごす事になった。



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