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平安の世に花をさかせて。  作者: 七草せり
3/5

現状把握

その頃、京の都が黒い雲に覆われ、帝が住む紫宸殿に悪の根源の手下達が帝達を脅し、実権を握ろうと画策しているなんて、私には予想すらつかなかった。



「それにしても、何故藤原の何とかさんの家臣とやらは、堕天使と手を組んだのか。主人思いなのは分かる様な気がするけど、本当にそれだけなのでしょうか……」



「藤原の四家はお互いが頂点に立ちたい。けれど無念にも、栄える事の無い家もありました。

暗殺された者もいた様です。

自分の主がそんな目に合えば、自ずと己にも影響があります。そう言う恨みも勿論あったのでしょう。

堕天使とやらも己が唯一の存在になりたい。利用できる物は利用するでしょう。

ただ、何故この時代なのかは分かりませんが、歴史を見て怨念だの利益だの、魑魅魍魎だのを信じる者が多い。人間の心理に漬け込み易いのでしょう。利害関係が一致した、と言っても過言ではない。

事実、様々な神が私の周りにいますからね。

それに、邪魔な陰陽師なる者を潰したい。そんな所かと」



「……はあ。そう言うものなんですか。何だか話が壮大過ぎますが、色々大変なんですね……」


「他人事ではありませんよ? 貴女の時代にも影響が及ぶと言いました」


「そうでした! でも一体どうすれば良いのでしょう? まさか敵陣に乗り込むとか、無いですよね?」


「今直ぐにはないです。なれど……。帝達をお救いせねばならないでしょう。朝廷にまで危害が及んています」


「帝、ですか。天皇ですね。では助けに行きましょう」


「おい。そんな簡単に言うな」


私の案に珠光さんが突っ込んできた。



「じゃあどうしろと? 他に何があるんですか?」


「術を使えないお前が行っても捕まるだけだ。師匠、ここは四神に頼むしかないのでは?」


「四神、ですか。使役できると?」


「……いや、私はまだできません。完全には」


「天后が柚葉さんを呼んだ理由は、分かりますね?」


「はい」


「柚葉さん。貴女は四神と言う物をご存知ですか? ご存知なら話が早いのですが」


「四神? えーと…。都を護る神様みたいな?」


「そんな感じです。しかしながら四神の力をもってしても、悪には敵いませんでした。ですが、四神を使役、つまり使いこなす。と言った方が簡単ですね。四つの神を呼び、敵と対峙する。柚葉さんにはそれができるのです。

けれど、条件があります。それは珠光と心一つにしなければ、四神の本来の力が発揮できない。つまりはお二人が力を合わせなければならない。分かりますね?」


「……分かっています。ですが、いくらそういわれても、異界の者を信用できません」


「まだその様な事を……。あれだけ説明したではないですか」



珠光さんの言葉にカチンときた。



「私だってそんな事を言われても理解できません! 心一つにって言われて、この人を信用できる訳ないじゃないですか!」


「お二人には困ったものですね。事態が解っていない様だ。とにかく、急を要します。つべこべ言わずお願いしますよ」



そう言って師匠さんは部屋から出て行ってしまった。


残された私と珠光さんの間には気まずい雰囲気が漂う……。


どうすればいいのよ。


いきなり平安に連れて来られて、都を救えだの、帝を救えだの、四神がどうのだの言われたって、頭がゴチャゴチャになるだけだ。



「柚葉とやらは、四神をきちんと理解している訳じゃないだろう? きちんと理解し、どれがどう言う力を発揮するか、必要な四神を直ぐに呼べるか、大事な事は沢山ある。急を要する事態だと師匠も仰っていたから、俺もつべこべ言うつもりは無かった……。けど、何にも分からないお前と一緒に帝をお救いできるか不安なだけだ」



かなり現代風な話し方をする珠光さんは、複雑そうな顔をした。



「じゃあ教えて下さい。きちんと覚えます。私だってここまで来たら引き下がれません」


「ーー分かった」



そんなこんなで四神の事を教えて貰う事になった。

ぶっきらぼうな感じだけど、案外いい人かも?




「まず、都を護る四神は、四つの神と思ってくれ。東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武。

青龍は炎系、白虎は風、朱雀は光、玄武は闇。それぞれ役割がある。ここぞと言う時、どれを使役するか、きちんと判断しなければならない。紫宸殿で帝をお救いする時、恐らく邪魔が入るだろう。そんなときどうするか、どう対峙するか咄嗟の判断が重要になる」



「……はあ」


「俺は完全に使役できない。使役できても、四神の力を発揮させられない。だから師匠の言う通りお前の力も必要になる。ここまでは分かったか?」


「何となく?」


「使役する場合、必要な四神を念じるんだ。そして命令を的確に下す。そうすれば闘ってくれる」


「念じる、ですか……」


「自分の力量が試される事になる。だから、二人の力を合わせ、四神に最大の力を発揮させなければならない」



「何となく分かりました。けど、直接襲われてしまったら?」


「術を使い回避する」


「私、何にもできないんですけど……」


「いや、師匠が言っていたが、術を使えるらしい。呪術の素質があると、仰っていた」


「えー! まさか!」


「選ばれし者なんだから、使えるだろう? 後で必要な術を教えるから。とにかく、だ。さっさと問題を片付けたい」


「う、う……」


「不満があるのか?」


「不安です!」


「それはお前次第だ」



そんな……。



結局戻ってきた師匠さんと、いつ帝を救うか、敵は何処にいるか、どんな敵なのか、様々な話をして、夕方になり、お食事を頂いて与えられた部屋で一人考えた。



めまぐるしい日々が始まろうとしている。

元の時代に帰りたい。けれどそれはまだ無理だろう。


何であれ、闘うしかないのだろう。

自分に何ができるか、どこまでできるかは分からない。けれどやるしかない。


決意新たに薄い布団に入った。


因みに必要な物はやっぱりな式神さんに揃えてもいました。

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