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BLOOD STAIN CHILD Ⅱ  作者: maria
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十八章

 リョウとミリアが社長と女秘書の二人を見送るべく楽屋を一歩出ると、客席からファンのざわめきが聞こえてきた。まだいてくれたのかと、リョウとミリアが慌てて客席に出向くと、あっという間に囲まれることとなった。

 「今日、リョウさん無茶苦茶迫力出てましたね。」

 「リョウさん何でMCやろうと思ったんすか。凄ぇ気迫でしたけど……。」

 「MCなんざ今までやったことねえじゃねえすか。」

 次々にファンが話しかける。

 リョウは苦笑いを浮かべて何と答えるべきか考え込む。その脇ではミリアが上機嫌でリョウの腕にぶら下がっていた。

 「……ま、まあ、デスメタルのエネルギーは怒りだってことだ。俺は今日、そう、確信した。でももう、それはたった今雲散霧消したがな。」

 ファンの顔が一斉に綻ぶ。

 「良かったあ。今日はライブ終わってすぐ、帰ろうかって思ってたんですよ。あんまりステージでのリョウさん怖かったから。絶対プライベートでなんかあったな、なんて思って。でも、機嫌直ってんなら、良かったです。」

 皆がそうだと言わんばかりに笑い合う。

 「今、何かいいことあったんすか?」

 「おお。」リョウがぶら下がっているミリアを、前に突き出した。

 「今度、ミリアが雑誌に載せて貰えるかもしんねえんだ。」

 「おお、凄ぇ! なんのメタル雑誌っすか? あ? ギター雑誌?」

 「ファッション。」ミリアが答える。「夏服。」

 ファンの顔が一斉に固まる。「え、ファッション?」

 「さっき、モデル事務所の社長さんって野郎が来てて、話したんだ。来月? その撮影ってのをやるみてえで。」

 「凄ぇ……。」ファンの一人が呟く。「でも、ミリアちゃんスタイルいいし、美人だし。モデルって言われればモデルでも全然いけるよなあ……。」

 男たちはぎこちない微笑みを浮かべ、黙った。

 「……あの、バンド、辞めないでね。」その中の一人が意を決してミリアに進み出た。「モデル成功しても、俺らにこれからも、ずっとギター聴かせてね。俺らみんなリョウさんとミリアちゃんのギターが、凄ぇ大好きで毎回ライブ来てるから。」

 ミリアは微笑む。「うん。ギターが一番だから、大丈夫。」

 「でも、その雑誌出たら、教えてくださいよ。」別の男が言った。「頑張って買うから。」

 「うん。」と、ミリアは笑顔で肯く。

 「……でも、モデルじゃあ、」困惑した表情で若い男が言う。「これからはメタルTシャツ着なくなるんすか? 俺、ミリアちゃんがLast RebellionのTシャツに軍パン履いて、ヘドバンしながら弾いてるの、凄ぇ好きなんだけど……。こう、なんか、健気な感じでさ。」

 「ライブの服、これしか持ってないもん。」ミリアが堂々と答える。

 「お前、余計なこと言うんじゃねえよ。」リョウが慌てて窘めた。

 男たちは一斉に笑いだす。

 「良かった。俺らにとってもこのTシャツがライブ参戦のユニフォームみてえなもんだし、それがメンバーと同じっつうのが、何か、いいんだよな。」

 男たちは肯き合う。

 「だろ? 俺が絵心なんざ一切ねえ癖に、散々デザイナーに口出ししまくって完成させたデザインだからな。最後、デザイナー泣いてたしな。」やたら誇らしげにリョウが語った。

 「リョウ!」物販のブースでファンと話をしていたシュンが、声高く呼ばわった。

 「何?」

 「Tシャツ完売! 再販かけて!」

 リョウはにやりと笑んで、「ほらな。」と更に誇らしげに言った。

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