6
自宅に帰ると、いつもおかえりなさいと出迎えてくる美少女が姿を現さなかった。
もしかしてようやく逃げたかと俺はウキウキしながら部屋を一通り見回っていると、美少女が俺の寝室のベッドで寝ていた。気持ちよさそうに寝息を立てている。
よし、今の内にどこかに捨ててこよう。
俺が美少女に近寄り、お姫様だっこをしようと、背中と足のあたりに両手を差し込んだ時だった。美少女が目を開けた。
「あ」
と言ったのは果たしてどちらだったのか。
美少女が驚いている。
だけど、俺が気まずそうに離れようとしたら、腕を掴んできた。
「・・・いいよ」
美少女がか細くポツリと呟いた。
「何が?」
「あなたの思うままにしても、いいよ」
「そうか。なら、お前を捨ててもいいか?」
「それはダメ」
美少女はムッとした顔をしたあと、すぐに頬を赤らめた。
「・・・してもいいよ」
「あー、そういうことか」
「うん。そういうこと」
美少女が目を閉じて、小さな唇を向けてきた。俺は美少女の頬をムニーッと引っ張った。
「にゃにするのー!」
俺が手を離すと、美少女は痛そうに頬をさすった。
「エロガキ」
「エロじゃないもん。あなたが好きなだけ」
美少女の告白は別に嬉しくなかった。そう思い込むように洗脳してきたからだ。返品しようにも、どこで奪ってきたか忘れてしまった。
「ねえ、あなたは私の事どう思ってる?」
「後悔の塊」
「そんなっ・・・」
美少女が涙を流す。
俺を嫌って出て行くのも時間の問題かもしれない。早く洗脳が解ければいい。俺は美少女の涙を見ながら、ボンヤリ思った。