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「ボスは?」
「世界一周旅行に出かけたわよ」
シャンティアビル2階。
赤い爪の女が視線をこちらに向けずに、冷たく答えた。
「その嘘は前にも聞いた。ボスは今、どこにいる?」
「さあね。知らないわ」
「大事な話があるんだ。居場所を教えろ」
「嫌よ」
「なら、他の奴に聞く」
「あなたに教えるバカはいないわ」
「いるさ。コレを突きつければな」
俺は銃を見せた。
赤い爪の女がようやく俺に視線を向けた。
「あなた、仲間を傷つけるつもりなの?ボスが黙っていないわよ」
「話があるから、丁度いい」
俺は赤い爪の女に銃口を向けた。
「・・・狂ってるとは思ってたけど、ここまでとはね。撃つなら撃ちなさいよ。ボスはあなたを許さないわ」
「試してみるか?」
「試してみなさいよ」
赤い爪の女が睨みつける。俺はソレをバカにしたように笑った。
「冗談だよ、冗談」
俺は銃を下におろした。
それなのに赤い爪の女はまだこちらを睨んだままだった。
「冗談だったんだから、笑えよ」
「ついにイカれたのかと、思ったわ。正常で安心したわ」
皮肉たっぷりに赤い爪の女がそう言うと、視線を自身の爪へ向けた。
「あなたがいつまでここにいようと、ボスの居場所は分からないわよ。さっさと、出て行って。知ってると思うけど、あなたの顔を見たくないの」
でしょうね。
焦りすぎてしまったな。
「驚かせて、悪かった」
「え、今なんて?」
「ボスが来たら、教えてくれ。頼む」
「頼むですって?」
「ああ。大事な話があるって言っただろ」
「あなたがそこまで言うなんて、どんな重要な話なの?」
赤い爪の女が興味を持ったのか、再び視線を向けてきた。俺のことなんか見たくもないくせに。
「それはボスに直接言う。ボスが来たら連絡しろ。いいな」
俺はそう吐き捨てると、ビルを後にした。