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不意に前世の記憶がよみがえりました。
俺の前世は普通に生きて、家族に見守られて寿命で死んだ。満足のいく人生だった。
それなのに今の俺の人生ときたら、快楽殺人者ときたもんだ。さっきまでヒャッハー!と奇声を上げて殺した御遺体が足元に転がっている。
「お前、またそんなグシャグシャにしたのか。後片付けする者の身になれよな」
背後から連絡していた掃除屋の声が聞こえた。
「あ、悪い」
俺は咄嗟にそう言ってしまった。悪いなんて思ったこともない極悪人が。
「え、悪い?お前の口からそんな言葉が出てくるなんて、一体どうした?熱でもあるのか?」
片付けに入ろうとした掃除屋が俺を見る。俺は困惑していた顔をすぐに消して、ニヤリと笑った。
「今日は機嫌がいいのさ。たまにはいいだろう?」
「たまにじゃなくて、いつでもまともでいてほしいね。ついでに殺し方もまともになってくれたら、お前にキスをしてやるよ」
「考えとくよ」
「・・・おい、お前本当どうした?随分まともじゃねーか」
掃除屋が俺を不審そうにジロジロ見てくるもんだから、ハエを追い払うようにシッシッと手を振った。
「うるせー。後は任せた」
俺が現場を去る間際、
「・・・ああ、任された」
とどこか茫然とした声が響いた。