基地に仕掛けられた盗聴器(前編)
「さてと、それでUWでは彼女のことをどうするんだい? 魔法力をほとんど持たないから一般人と変わらないだろうが、過去に戻れるだろうその能力は条件付とはいえ発動可能だ。やはり匿うのかい?」
ヴァイスはそれまでの温和な表情に一筋辛味を差して、角のある目で桐生を見る。桐生に限らずUWの面々は小首を捻って誰もがどうしたものかと唸る。
「そうだなぁ、彼女みたいなケースは俺としても始めてだからなぁ。能力者として見るべきか一般人として見るべきか、難しいよな。本部に知らせれば確実に囲うことになって、もっと細かい実験をさせられることは確実だろうけど」
「まあ、そうなるやろうな。わしは反対やな、研究所に渡すのは。あいつら、ろくなことせんぞ~」
穂高の研究所嫌いは、ここぞとばかりに脅し節を利かせる。
「俺も同じかな。能力が特殊なだけに、佐久間君のときのように、実験が済んでからそのままこの基地に配属、というわけにはいかないような気がするからね。それに、能力も未発達だ、見守る形でその詳細を調べていくって事なら俺たちだけでできる話だからね」
と、村田も研究所に渡すことは反対である。
「それはつまり、前回の薙刀のあの子のように一部の記憶を消してと、そういうことですか?」
今度は滋が聞く。これには弥生が答える。
「その必要はないんじゃない? 一応、能力者なんだし。私が不思議な現象を追いかけているっていうことも以前から知ってたわけだし。なにより、彼氏がここで働いているんだから。消そうにも絶対に上手くいかないわよ」
皆で村田をジッと見つめる。
「所長に頼んで、ここに置いてもらうというのはどうなの? 菓子屋の事務職に今度、寿退社する人がいるんだろ?」
「ヴァイス、何でお前がそんなことまで知っているんだよ?」
「この基地のことはそれとなく調べているからね。それも定期的に」
「まさか、盗聴とかしていないよな?」
「俺が? いやまさか。簡単に入れるからね、俺にはその必要はないかな。ただ、俺じゃない誰かが、盗聴器を設置しているみたいだけどね。この訓練所の天井のほうに一個ついているはずだよ」
彼の人差し指が天井を指す。全員、糸に引かれたように顔を上げる。
「嘘だろ?」
「あれ? 知らない? まあ、知っていたら外すか」
「いったい誰や。マスコミ関係とかか? まさかな。それに定期的にチェックはいれとるはずや」
「それでもつけられているということは… 身内か?」
そう言って桐生は周りの面々を順に見るが、それをして得をする者など、ここだけに限らず、この基地内にはいないはず。
「ちなみに、そこの端っこの非常ベルの内側にも隠されていたりするんだけどね」
ヴァイスの言うことにUWの面々は揃って眉根を寄せて驚いている。いったいいつ調べて発見していたのか不思議なものだが、実際調べてみると非常ベルから確かに一つ出てくる。自分たちの基地が心理的に、間接的に攻撃を受けているようで、桐生は気に入らない。出てきた盗聴器を握り潰してしまうと、そのまま天井へと跳ねて、もう一つの盗聴器も見つけ出す。
「そっちのは壊すなや。指紋から何から調べて犯人を見つけだしてやるんやからな」
「じいさん、念入りに頼むよ」
「任しとけや。まあ、それにしても村田の彼女の能力がもっとこう、特定の場所で、その場所の過去に戻れるようなものやったら、誰が仕掛けたか、その仕掛けた現場を確認してもらいたいものやったけどな。それなら一発でわかるやろうに」
「そんなことができるんですか? 私って…」
「いや、わからんけどな。まあ願望の話や」
「彼女のあの不思議な能力は、彼女を軸にして起きてるみたいだから、その場所の過去に戻るというのはおそらく無理なんじゃないかな?」
そう村田がすぐにフォローする。
「自分の彼女となると、保守的になるな~ まあ、わしも無理に実験する気もないけどな」
続きます




