七歩目
「なんという愚問!
あなたはそれでも王族なのですか?!」
菜々を叱責したのはガミューオ次期王ではなく、側仕えの少年だった。
思わず顔を上げる菜々。ユキラも苦笑していた。
「…あっ。
しっ、失礼を…」
気付いて赤面する少年。
ガミューオ次期王は優しく笑っていた。
「すまぬの…タジーは我の教育係でもあるのだ。
無礼を我に免じて許せ。
だがタジーの言うことは間違ってはおらぬ」
菜々はガミューオ次期王をじっと見ていた。
透き通るその瞳は、答を待っているようだ。
その意志の強さに、彼は一瞬驚き、好感を持った。
「そなたは王を助けたい。
だがそれは王族としてか、それとも家族としてか?」
考える菜々。
質問の意味を、吟味する。
黙る菜々に構わず、ガミューオ次期王は続けた。
「権威は周りから請われるものでなく、自覚するもの。
だが我らは生まれ落ちた瞬間から権威を求められる、次の王族である」
ユキラは菜々の後ろで、黙って聞いている。
「我らは民に生かされていることを自覚し、民の住む国を守らねばならぬ。
王たる者は常にその意識を持っている…そなたの父君も」
菜々は言葉をゆっくり飲み込むように、頷く。
「そなたは王族。
家族である前に、来る王位にふさわしい判断をしなければならない。
家族として助けたい、では王位を継ぐものとしては…
そなたはどうすべきか」
ガミューオ次期王はそこまで言って、背を向けた。
檀を上がり、御簾に手を掛ける。
「そこからはご自身で考えよ、幼き君」
するすると衣ずれの音が遠退いていく。
ユキラは菜々を連れ、王の間を去ろうとした。
するとタジーと呼ばれた少年が、門まで送ってくれるという。
「王として…」
小さく呟く菜々。
今までになく考え込んでいる菜々の背を、優しく支えるユキラ。
タジーとユキラは何か話しているようだが、考え込んでいる菜々には聞こえなかった。
菜々自身王位のことを自覚したのはこの時が初めて。
周りの目と自分の姿勢を振り返り、食い違っている要求に気付いていく。
王としての自覚を持ったとき、周囲をどう見るか。
自身がやらねばならないことは何か。
菜々が考え込んでいる間、ユキラはずっと黙って控えていた。
門を去り、また気球を出して、砂漠の岩場に戻る。
そこで何日も滞在できるように焚き火を起こし、日夜何かを準備していた。
「私、決めた」
菜々は呟く。あれより二週間が過ぎていた。
ユキラは言葉を待っていたように、うすく笑う。
「……では姫様、どうされますか?」




