十歩目
時は満ちていた。
同盟軍のガミューオ兵と共に、宮の内国のぎりぎり手前で戦乱を起こしてもらう―――威嚇程度のもの。
ガミューオ兵に対応するため、魔女の魔法兵はそちらへ向かい、城内警護を最小限に止めさせる。
ユキラは言う。
「魔女は一人です、かつ彼女は決して有能ではありません。もし国を相手にするなら――魔法で作り上げた兵などでは、数が足りないんですよ」
一体の威力は強力。
だが兵を分散したとき、多勢が付け入る隙がある。
そして兵を操っているのは魔女一人。
ならば、頭を叩けば魔法は消えてしまう。
「まぁそれができなかったから、今こうなっているわけですが。
しかし今は目的が違う。王を助け、魔女を一時的でも退却させる。
それが目的です。」
ユキラは菜々含む、仲間達に述べた――流浪剣士と破壊屋に。
役割は与えられた。
ガミューオ兵は魔法兵の分散、剣士は城内侵入の手助け。
そして破壊屋には国内で国民を巻き込まないテロ騒動を仕込み、魔法兵をさらに分散させること。
「え、ユキラ。
魔法って…そんなにいっぱい使えるものなの?」
「もちろん使えませんよ。
普通の集中力では保たないし、まずそんなコストを払うことをしません。
だからあの魔女は、有能ではないといったのです」
つまり、と剣士は言葉を続ける。
「精神力を削がせて、追い出す」
ユキラは頷く。
「いくらなんでも一国の兵力と奇襲の破壊活動、くわえて剣士さんと姫様の侵入では―――このひ弱な気象予報士相手とて、全力で戦えませんよ」
そういうわけで、菜々と剣士のキコは無事任務を終え、一人王の間に向かったユキラのところに走る。
「だ、大丈夫かな。
ユキラ、やられちゃってるかなっ」
菜々は心底心配している。
ふらふらしている足取りのため、キコは菜々の手を引いて走っていた。
「…しかし一番の汚れ役を自身で買って出るとは…他は抜け目がないのに、不自然なもの」
キコの呟きに、菜々は首を傾げる。
一寸黙った後、キコは視線を戻す。
「…どちらにせよ、私は無傷。
姫に何かあれば、私が動けばよいこと、という思惑だろう」
だん、と重い扉を開ける。
中は薄暗い。夕暮れだというのに灯りを付けていないのだろう。
菜々はキコの後ろに控えながら、ユキラの名を暗闇に呼びかけた。
ゆら、と奥の闇が動く。
キコは一瞬身構えるが、ユキラの返事がした。
「ユキラ!ぶじだったん…」
「お待ちを。
……一応、合い言葉は?」
はやる菜々を制し、キコは静かに問う。
ユキラはキコの態度に喉で笑い、答える。
「“知らない”」




