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第1話

 マヨルカはメイラント半島開拓の為の砦跡に造られた町だ。

 町の中心部は砦時代に作られたの外壁に囲まれ、一箇所だけある門を入ると大通りの左右に数件の商店が並び、そこを抜けると広場の周りに公共施設、奥の小高い丘の上に男爵邸、外壁の周囲に民家が並び木製の柵を挟み田畑や牧草地が広がっている。

 マヨルカ唯一の宿”マヨルカ亭”は僕の両親が経営している。一階に食堂兼酒場、2階には客室、家族は裏庭の離れに住んでいる。

地震の影響で臨時休業の札が掛けかるマヨルカ亭に入ると、一人で母さんがカウンターの内で片付けをしていた。たぶん、父さんは厨房をに居るのだろう。


「ただいま、僕も手伝おうか?」

「おかえりなさい、もう終わるから大丈夫よ。それより、お話は分かった?」

「うん、大丈夫。何かあったらまた聞きに行くよ」

「それなら良かったわ」


 僕の返事に母さんは笑顔で頷くと片付けを再開する。

 さて…手伝うことも無いみたいだ…夕飯まで時間がある、部屋に戻ろうかな。

 暇な時間でこれからどうするかを考えるのもいいか。


 部屋に戻ると母さんに告げようとすると、誰かが店の戸をコンコンとノックする。

 母さんが開いてますよと言うと戸が開き幼なじみのマイアが顔を覗かせた。


「こんにちは、ニナさん… あっ、ジャック気が付いたの!?」


 マイアは僕の方を見ると一瞬驚いた表情を浮べるが、次の瞬間には笑顔になり僕に駆け寄り抱き着いてきた。


「怪我は治っているのに、ジャックが全然起きないから心配したんだからね」

「ごめんな、起きてすぐに知らせれば良かったよ。それより、マイアが男爵たちを呼んでくれたんだろ? マイアのおかげで僕は助かったんだ。ありがとう、マイア」

「うん、当然のことをしただけだよ。でも、今度はすぐに教えてね…すっごく心配したんだから…」


 なんだかしんみりした雰囲気になってしまうが、僕達二人には気がして、


「今度はって言っても、今度下敷きになったら死んじゃうよ」


 そう茶化すとマイアはすぐ茶化すんだからと言い頬を膨らませる。

 とはいえ、生まれたときからの幼なじみ、あしらいかたは分かっている。頭を撫でればマイアは、気持ち良さそうに笑顔を見せた。


「そういえば、何か用事があったんじゃないの?」

「そうだ、お店のことできたんだよ」


 と言うとマイアは抱きつくのを止め母さんの方を向く。


「えーと、お父さんが業者さんから電話があって、注文の品物はベイトの駅に明日の朝に着くので、夕方以降に届けれますって」

 

 マイアの家は雑貨店を経営していて、マイアのお父さんイアンさんが商品の仕入れと配達、お母さんのアリサさんが店番をやっている。地震で壊れた店の食器類を母さんがマイアの家に注文したようだ。

 ベイトとは、メイラント領隣のイクセリア領の領都で、メイラント半島の付け根に位置する港町だ。マヨルカからベイトまでは、馬車で3時間程度の距離にあり、北西部有数の都市でもある。

 ベイトの駅とは鉄道の駅で、蒸気機関車が走っている。ただし、オフィーリアの蒸気機関車とは魔法科学の産物で、石炭を燃やすものではなく、火霊炎熱管という銀製の装置に繋がったボイラー ―――― 火霊炉 ―――― で魔力を使って蒸気を発生させ走る、魔導蒸気機関車と言われるもだ。

 ちなみに、電話は魔法を使わない純粋な電化製品である。


「はい、お母さんに伝えておきます」

「ええ、おねがいね。マイアちゃん」


 いつの間にか母さんとの話は終わっていたようだ。

 マイアは僕の方を見ると、


「そういえば、ジャックにもお知らせがあったよ。先生が明日から学校が再開するって言ってたよ」

「そっか、教えてくれてありがとな」

「どういたしまして、それじゃあそろそろ行くね」

「部屋に上がっていかないのか?」


 僕の問いにマイアは悲しそうな顔になる。


「まだ、お店の手伝いがあるから今日は遊べないんだよ。ニナさん、さようなら。ジャックはまた明日ね」

「さようなら、マイアちゃん。今度はおやつ用意しておくわね」

「また明日な」


 入り口まで送るとマイアはじゃあねと手を振り広場のほうに走っていった。

 店の戸を閉めると母さんに部屋に戻ると言い店の裏に向かう。奥の厨房をのぞくと父さんが片づけをしているが、聞くともう終わるとのことでそのまま裏庭に出る。

 裏庭の井戸の前で妹のジャンヌが野菜を洗っているので声を掛けると、ジャンヌは夕飯の用意をしているらしい。


「今日はジャンヌが夕飯を作るんだね。僕も手伝おうか?」

「ありがとう、お兄ちゃん。お野菜を台所に運ぶのをお願いしてもいいかな?」

「いいぞ、これを運べばいいんだな」





 昨日はジャンヌを手伝い夕飯を作って家族と食べた後、寝るまでの数時間これからのことを考えてみた。

 僕の知識で何かを開発したり、商売を始めたりすることが出来るかは、まだ結論を出すことはできない。どれだけ掛かるかは分からないが考える時間が要る。とは言え使える時間にも限界がある。今のままだと基礎学校卒業までの3年だが、専門学校や高等学校に進めばさらに3年の時間が手に入る。6年も時間があれば十分だろう。何が出来て何をするのか分からない以上、僕には高等学校が都合がいい。そうなると、今僕がやるべきこともある程度分かってくる。取りあえずは勉強と学費を稼ぐことだ。


 朝食を食べ終えるとジャンヌと隣のマイアの家に向かう。いつもマイア姉妹と一緒に学校に行っているためだ。マイアには2歳上のアリアという姉がいて、僕達兄妹にとっても姉のような存在だ。

 家の前に行くとちょうど二人が家から出て来るところだった。


「アリアさん、マイア、おはよう」

「アリアお姉ちゃんとマイアお姉ちゃんおはよう」

「あらっ、ジャック君とジャンヌちゃんおはよう」

「おはよう、ジャックにジャンヌちゃん」


 挨拶するとジャンヌとアリアが話しながら歩き出し、その後をいつもの様に僕とマイアが並んで歩く。


「今日、学校が終わったあとマイアは時間あるか?」

「うん、時間はあるけど?」

「大事な話があるんだ。」


 僕の言葉にマイアは顔を赤くして頷き、前を歩く二人が驚いた顔をしてこちらを見ていた。

 あっ、ごめん。言い方が悪かった。みんな誤解しているが、そういう意味じゃないんだよ…


 



 その後、何とかみんなの誤解を解くことに成功する。

 ただ、誤解だと知ったマイアに足をおもいっきり踏まれるわ、怒るマイアをなだめるのに一日を費やすわとさんざんな一日になった。


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