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プロローグ

 この世界(オフィーリア)には二種類の人がいる。

 ひとつはこの世界に生きる者たち、もうひとつは異世界を知りこの世界に生きる者たち、異世界を知る者を人々は知創者(ライブラー)と呼んでいるが、知創者(ライブラー)の能力は前世の記憶・知識・経験とそれらに付随する能力と考えられている。

 知創者(ライブラー)が前世に由来する能力である以上は、国を造れる者や異世界の技術で世界に技術革新を起こす者もいるが、大半の知創者(ライブラー)が元一般人で世界を変えれる程の能力は無い。

 なぜなら世界(オフィーリア)は科学技術は未発展の剣と魔法とモンスターのファンタジーな世界だと異世界(地球)の前世を持つ知創者(ライブラー)がその昔は言っていたが、今では科学は進化を遂げ魔法と融合し魔法科学なんて物もある時代だ、知創者(ライブラー)が一度は罹る病気の「俺の前世の記憶を使って…」は人口50人に1人はいる知創者(ライブラー)がすでに広めた技術や知識、今や重箱の隅をつつくか新たなアイデアでも見つけなければ元一般人の知創者(ライブラー)知創者(ライブラー)の能力の使いどころがほとんど無い。

 元技術者であっても現代の科学技術は細分化が進んでいるため一人ですべてを賄う事はできない、異世界の知識で進化の先は見えている分だけ技術革新も早いが、しかし、高度な技術ほど基礎技術の積み重ねと同じように積み重ねのある周辺技術が必要になり近年は技術革新も足踏み状態が続いているのだ。


「こんなところだ。ジャックは知創者(ライブラー)について他に聞きたい事があるか?」


 僕の名前はジャック・ウェンバー。

 今年で12歳、エメリア大陸の最西端の国ブラックローの田舎町マヨルカで宿屋を営む両親の元に生まれた。

 マヨルカは農業と牧畜が主産業の町で、オリバー・メイラント男爵が納めるメイラント男爵領の領都でもある。メイラント男爵領は大陸最西端の国ブラックローの最北西メイラント半島全体が領地となる。これは、男爵領としては広大なのだが、領都マヨルカと隣村の漁村と農村が2つの領民約400人と辺鄙なところだ。

 ブラックローは知創者(ライブラー)が造った国で貴族と民の垣根も低い、貴族と民の結婚もよくあることで、ブラックローの貴族は支配者ではなく地方自治体首長や政治家としての側面が大きい、メイラント男爵領を治める男爵も世襲の町長と思って間違いはない。

 語弊はあるけど貴族の位は名誉称号程度の価値しかない国なのだ。


 数日前の地震で、崩れた小屋の下敷きになった僕は、生死の狭間にさ迷いかけ、前世を思い出し知創者(ライブラー)になってしまう。

 そこで、メイラント男爵領領内にいる知創者(ライブラー)の10人のうちの1人が男爵本人だったこともあって、男爵から知創者(ライブラー)についての説明を聴くことになったのだった。

 余談ではあるけど下敷きになった僕は、魔法で身体強化した男爵が、崩れた小屋からパパッと掘り出し、怪我も魔法で回復したらしい。


「え~と、さっきの話だと知創者(ライブラー)には前世の記憶・知識・経験とそれらに付随する能力とのことですよね? 経験はまだ分かりませんが、記憶が僕にはありません」


 僕は前世の知識は思い出した。しかし、記憶が無い。自分が誰で職業が何だったのかも、自分の最後も覚えていない。

 学校は知っている。でも、どこに通っていたか分からない、自動車は知っている。でも、乗ったことがあるかは分からないと、いったように。

 ただ、学校で何を習い何をするのか、自動車の運転や車固有の癖は分かる。経験していなければ分からないことも、知識としては覚えていた。前世で経験したことの記憶が思い出が無いのだ。


「ふむ、知識は有れども記憶が無いか…」


 男爵は顎に手を当て少し考え込んでからゆっくり話し始める。


「記録上において知創者(ライブラー)が記憶や知識を覚えていなかったことは何度も記されている…」

知創者(ライブラー)は魂に刻まれると言われ、記憶や知識は思い出せないことは多々あることだ、前世の体に染み付いた経験だけは確実に現世の体に引き継がれる」

知創者(ライブラー)の知識が必ず役に立つわけではない…分かるかい?」


 はい、分かりますと男爵に頷く。

 一般人程度の知識ではどうにもならないことが多い、たとえば自動車は分かっても原理や仕組みが分からない以上は自動車は作れないといったことである。


「役に立たないことがあると言っても知識が知創者(ライブラー)にとっては最も重要な要素だ、次に経験、最後が記憶だ。思い出は大切な物かもしれんが、現世を生きていくうえでは邪魔になることもある。思い出はこれからも作れる気にすることは無い、いつか思い出すかもしれないしな」


 そう言い男爵は僕の頭をガシガシと撫でる。

 励まされて心が軽くなってうれしく思うが、僕はもう撫でられて喜ぶ子供じゃない。


「ちょっと、やめてよ。僕はそんな子供じゃないんだから!」


 すまんすまんと男爵は撫でる手を放す。


「もうやめてくださいよ… あとひとつ、知創者(ライブラー)の能力って何ですか?」

「能力とは言っているが実際はおまけのようなものだ、全員に共通するものは二つ、ひとつが”精神力強化”知創者(ライブラー)は前世の分だけ精神力にゲタを履かせた強さになり、精神力の強さは主に加齢による増加でしか上がらない、精神力が高ければ魔力や魔法抵抗も高くなる。もうひとつが”習得速度上昇”上昇の度合いは人それぞれだが一般人の数倍の速さで物事を学習・習得できるとされる。人によっては発現す能力としては第六感に関係する物があるとされる……危険予知や未来予知など超能力と言われる物がそうだ」

「第六感ですか…」

「実際のところ第六感関係は魔法で行えるし、魔力や魔法抵抗は才能による部分が大きく精神力は追加ボーナスみたいなもの、習得速度も前世に関係して上昇速度が上下するから魔法習得に関しては速度が1倍だ」

「微妙な能力ですね…」

「おまけだからな、知創者(ライブラー)に転生チートは無いんだよ…割と現実的な世界さ」


 男爵の言葉に二人で苦笑する。


「さてと、そろそろ時間か」


 男爵はチラリと置き時計に目線を一度向けた。


「知識があればオフィーリアに存在しない高度な技術の再現をしてみるのもいいだろう。まだ時間はある。ジャックが何をしたいのかじっくり考えてみなさい」

「はい、何ができて何がしたいか考えてみます」

「うん、何かあったらまた聞きに来なさい」

「今日はありがとうございました。何かありましたらまた来ます」


 男爵邸を出て自宅に向けて歩き出す。

 現在、僕は12歳。15歳になれば基礎学校を卒業することになる、そのあとは家業を継いでもいい、他の仕事に就いてもいい、上の学校に進むこともできるだろう。

 もしかしたら前世の知識を使って何かできることもあるかもしれないしな。

 可能性は無限大。夢が広がるってもんだ。

 

「……がんばってみるかな」


 頬をパンパンとたたき気合を入れると、自宅に向かって領主邸の丘を駆け下りた。

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