第三試合です
『これにて第二試合は終了となります。20分後に第三試合を開始するので出場する選手はこの間にフィールドに出ておいてください』
第二試合は個人的には見所がそんなになかった。過去に決勝までいってる人が8人も集められた試合だったのだが、勝ち上がった二人はその誰でもなく、初参加の冒険者だった。終始喧嘩してたけど知り合いかな?
俺はゴーグルをはめなおし、ローブをしっかり被ると、ダンジョン『アントホーム』で拾った槍を持ってフィールドに出た。
俺を含め、この試合の出場者は36名。周りの人の話を聞く限りでは、二人有名なやつがいるそうだ。
ムーアという大斧使いと、フライの名で登録してある文字通りの風魔法の使い手。空を飛んで上から魔法を降らせるらしい。フライの方は『鑑定』してみると、
『フライ・ド・チーク(人種)』
と表示された。本名がフライなのね。
二人とも少し観察してみたけどそんなに脅威に感じなかった。
ムーアが持っている斧は能力こそ『反動軽減』となんとも言えない能力だが、立派な魔斧だ。
それにフライは魔力もそれなりにありそうだし、空を飛ぶのも魔法を使ってのことだろうし、その状態で魔法が使えるってことは二つの魔法を同時に使えるってことだ。俺は割りとよく使ってるけど実際にはそうとう難しいとマナにすごい言われた。それをやってのけるだけでも実力があるのは間違いないのだ。
そして20分が経ち、第三試合開始の時間になった。
『それではぁ!第三試合、開始!』
俺の試合が始まった。
始まるのと同時にフライが飛び上がった。あらかじめ呪文を唱えていたのだろう。まぁ俺もだけど。
空をとんだフライをにらみつけるやつが数人いるが、そんなことしてる暇ないだろ。
案の定、その一人のがら空きになっていた胴に他のやつの剣が突き刺さり、光の粒子になった。
「よそ見してんじゃねぇよ!」
俺にも剣の切っ先が向かってくる。それを槍で弾いて突進をかわす。
「へっへっへ、まさかいきなりてめぇと戦うことになるとはな。よかったな」
なにもよくないんだけどな。それよりも
「なんでお前第三試合なんだよ。ワラッタだっけ?」
「ワグーサだ!決勝の一対一でお前をこてんぱんにしてやろうと思ったが、今ここでやってやるよ!」
「そんなに決勝でやりたいのか?」
「決勝になれば視線はすべて戦ってる二人に向く。そんな状態でいたぶるのがいいんだよ」
「そっか。なら決勝でやらせてやるよ」
「は? 何をいって」
既に準備は完了した。あとは誰を残そうか悩んでたんだが、こいつでいいや。ほんとは耐えきったやつって思ってたんだけど…足りないかもしれんから黒槍の雨も追加しとこう。
そんなとき、歓声が大きくなった。そういやアナウンス聞いてなかったな。
『決まったぁあ! 第三試合の注目選手の一人、フライ選手のトルネード! 一気に4人をリタイアだ!』
あ、そんなことになってたんだ。
『フライ選手は今回も、地に降りることなく勝利を』
「『地より天に堕ちろ、『黒雷』』『雨となって降り注げ『黒槍の雨』』」
詠唱は適当だけどこんな感じでいいだろう。地面の中から真上にダークランスの槍が伸びる。それはフィールドの全体から、ワグーサだけを避けるように飛び出た。そのうち1本は俺のローブの裾を軽く破る。
この攻撃でだいたいの人は光の粒子となった。しかし、数人は傷を負いながらも耐えていた。その中には、フライやムーアも残っていたが、その視線はまったくの無傷であるワグーサに向いている。ただ、すぐに違うと判断したのか追撃に備えようとしているあたり、やっぱそれなりには強いんだろう。それにしてもローブもったいないな…。
だが、これで終わったわけではなかった。上空に張られていた結界にあたって消えると、今度は上から黒槍の雨が降り注いだ。またもワグーサだけを避けるように降り注ぐそれによって、残っていた選手は片っ端から光の粒子になってリタイアしていった。
『スキル:黒雷Lv1を習得しました』
『決まったぁぁぁぁああああああああああ!!! なん、残ったのは初参加の冒険者シャドウ選手と、前々回に出場した後前回は出場していませんでしたが、今回のために修行をしてきたのでしょうか? ワグーサ選手だぁああ!!!』
今使った『黒雷』をスキルとして習得する一方で、アナウンスで俺とワグーサの二人が決勝に進出したことが告げられる。茫然としているワグーサだが、はっとしたように俺のところに歩み寄ってきた。
「て、てめえ、いったい今何を」
「よかったな。これで決勝の舞台で一対一で俺と戦えるぞ」
「冗談じゃねえ! お前みたいな化けも――」
「化物? 俺はただの人間だよ。大事な仲間を奪われそうになってちょっと怒ってるだけの」
「ひぃっ!」
笑顔でワグーサに告げると、なぜか怖がられた。ローブとゴーグルで隠してあるから口元しか見えていないはずだが、あきらかにワグーサは俺を見て怯えていた。
正直に言えば今いらってきているのはこいつに対してではない。俺の怒りの矛先は今はあの騎士団長なのだ。こいつに負ける気はまったくなかったからこいつにはそんなに怒っていない。まあ少しも怒ってないかって言ったらうそになるけど…。
「お二人とも、こちらにお願いします」
そんな風にワグーサと話をしていたら、通路の方から係員がやってきた。今後の予定の説明を行うそうだ。すでに第1試合、第2試合の決勝進出者には説明を終わらせたらしい。
「わかりました。どこですか?」
「こちらです」
係員の後について俺たちは別室に移動した。
別室に移動すると、そこには数名の係員を周りにおいた、なんか偉そうな人が座っていた。もしかして領主さんかな?
「ワグーサ様、シャドウ様、こちら領主のクライン・アライエ様です」
「紹介のとおり、俺はここの領主のクライン・アライエだ。まずは決勝進出おめでとう」
「「ありがとうございます」」
俺たちはそろって頭を下げる。
「そっちのは初参加だな。お前さんは前にも出てたろ?」
「は、はい。前々回とその前と4回ほど出させていただいています」
「やっぱそうか。前と比べてずいぶん強くなったようだな。あれだけのことができるんだからな」
「い、いえ、あれは」
「そう謙遜するんじゃねえよ。次の試合もあるから簡潔に済まそう。俺が聞くのは2つだ。まず1つはお前らを貴族に推薦するか否か、それから2つ目は貴族のスカウトを受ける気があるか否かだ」
どうにもワグーサがあれをやったって思っているようだ。まあ俺はわざととはいえ少しくらっているからな。自分の魔法を自分が受けるわけないって考えがあるんだろうな。
「あの、どういうことでしょうか?」
「これから説明する。決勝進出ってのはそれだけで実力があるって証明でもある。当然貴族からスカウトを受ける連中はたくさんいるし、逆に貴族に自分を売り込むために決勝にでようと努力するやつもいる。ただ、そういうのをまったく望んでいないやつもいるのも確かだ」
俺とかな。
「今から10年以上前のことなんだが、その大会で準優勝した奴が貴族ともめてな。それ以降に追加されたルールだ。もし貴族のスカウトなどが目当てじゃないならこの場で言っといてくれればそいつへのスカウトはこの大会後から1か月禁止になる。違反した貴族は今後この会場に入ることを禁止するから破るやつは過去に1家だけしかでていない。で、どうする?」
「お、俺はお願いしたいです!」
ワグーサの顔がかすかににやけている。絶対に何も考えていないな。
本来、貴族のお抱え冒険者というものは、ヒツギに聞いている分には、基本的に楽な仕事だそうだ。しかし、それはどの貴族なのかにもよる。
低ランクだけど商業的な価値の高い素材をとれるモンスターの狩りならいい。しかし、自身の見栄のために自分よりも高ランクの魔物の狩りといった仕事をさせられることがあるらしい。
逆らったりしたらそこにはもういられなくなるので戦いに行くものの、結局狩ることができずに、逆に狩られてしまうなんてことは当たり前。命からがら生きて戻っても、失敗を理由にクビ。その時の怪我を理由に碌な仕事もできないような有様になることだってある。
だから慎重にならないといけないのだ。
こいつはおそらくそれを全く理解していない。貴族のところで楽に遊んで暮らせるとか考えてるんだろう。
「俺は拒否したいです。貴族にいい思い出がないもので」
「まあ人それぞれだからいいさ。じゃあワグーサには許可を出しとくぞ。俺の用事はこれだけだ。決勝も頑張れよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ありがとうございます。がんばります」
クラインさんと係員が部屋から出ていった。残ったのは俺とワグーサ、それからここに案内してくれた係員だけだ。
「では今後の予定を説明いたします。まず、お二人には本日の最終戦の1つ前、つまり第7戦までにここにお集まりいただきます。そこで決勝トーナメントの対戦相手の決定を行います」
「決勝自体は3日後でしたっけ?」
「はい。明日は従魔の部の予選を行い、その翌日に従魔の部決勝、そしてその翌日、最終日になりますが、一般の部の決勝を行います。シャドウ様は従魔の部にも登録されていますよね? そちらもお忘れのないようにお願いします」
「もちろんですよ。明日の今日と同じ時間ですよね?」
「はい、その通りでございます。私からの説明は以上になりますので、宿に戻って休まれるのもいいですし、観客席で試合を観戦するのもいいですし、決勝に向けて訓練をするのもいいですが、第7試合が終わるまでにはこちらにお越しください」
「わかりました。では失礼します」
俺は自分の未来を想像しているのかにやにやとしているワグーサをほっといて部屋を出た。さて、マナとヒツギのところに行くかな。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
????の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60 』
前回の話で出た「モニター」がわかりにくいという感想をいただきました。
これは、映像を映し出す魔道具です。的確な表現がわからずモニターと表記しています。
指摘いただいてから前話のモニターがでてるとこの記述を一部追加してありますが、「まだわかりにくいわ!」って方がいましたら感想までお願いします。
表現を変えますので…
ではまた次回