オーガキングと戦います
『スキル:剣術Lv1を習得しました』
オーガソードから得られたのは『剣術』スキル。とはいったもののあんまり実感がない。『体術』スキルのときは重心のこととか相手のバランスの崩しかたとか頭に入ってきたが、今回はなにもなかった。『体術』も最初はレベル1だったし、別の要因がありそうだ。
オーガソードが喰われたことで地面に落ちた短剣を手に持ちオーガキングの方を向く。しかし、そこで1つの違和感に気がつく。
(オーガガーディアンはどこにいった?)
俺の視界にオーガガーディアンの姿はなかった。オーガキングが座っているだけ。 先程までずっと結界を張り続けていたあのモンスターはどこにいったのだろうか?
「逃げたにしろ隠れたにしろこれってチャンスじゃね?」
オーガキングを仕留めれば俺の勝ち。ならばオーガガーディアンと戦わなくていいのは俺にとってはプラスしかないはずだ。疲労も減るし、もしものことも避けられる可能性があがる。
俺は短剣をしまいオーガソードの両手剣を構える。なんとなくこれの使い方がわかった気がした。
俺が武器を変えたのは相手の大きさによるところが大きい。自分よりも遥かに大きな敵にたいして短剣による攻撃がいったいどれだけ通じるかわからないのだ。
オーガ種についてこれまでの経験からわかったことだが、オーガたちは筋力のつきかたが人間とは異なる。それは筋肉が人間と比べてかなり分厚いことも影響しているだろう。筋力上昇でどんどん上がっていったから分かりにくかったが殴ったとき、骨に届いている感覚が数度したが、そのどれもが完全に拳1つ分肉を凹ませたところで感じていた。肉か筋肉かはわからないがおそらくすべて筋肉。となるとこのオーガキングの筋肉の厚さは相当なもののはずだ。
「とりあえず攻めるか」
俺はオーガキングに向けて駆け出した。両手剣をしっかり握りしめ、まずは動きを制限すべく脚を切りにかかる。
(まずは1本)
キィィィイイイン
剣がオーガキングに当たる前に弾かれた。その衝撃でこれまで俺の攻撃からオーガソードを守っていた両手剣が折れる。
そして何が起こったか理解できずに唖然とする俺の目の前にオーガキングの剣がやってくる。状況を理解したときには既に遅かった。
剣が俺の体をとらえる。
血で弧を描きながら俺の体は吹き飛んでいく。そのまま後方の壁に激突して、壁が崩れるのと共に地面に落下した。『再生』による回復が極めてゆっくりと進むなか、俺は剣に飛ばされる寸前に見たものを思い返していた。
(あのオーガキングの口元に見えたのって赤く染まってはいたけど布……だよな? でもここにあった布って言うと……)
嫌な予感が頭をよぎる。
「まさかこいつオーガガーディアンを……喰らいやがったのか!?」
おそらく喰われたオーガガーディアンは既に吸収されている。それが俺の考えだった。さっき俺を弾いたのはオーガガーディアンの使っていた結界だ。腹の中でオーガガーディアンが使っている可能性も考えたがそれだと使うタイミングがわからなくて常に張り続けることになる。そうなればしばらく様子見してればいずれ使えなくなり攻撃が簡単に通ってしまう。それに先程の結界をはるタイミングが完璧すぎた。俺の攻撃にあわせて結界をはっていたのだ。といってもあくまでそう感じただけだが。
「ともかく……まずは回復しないとな。『再生』があるからって油断してた」
俺は岩をどかしながら体が回復するのを待つ。動きを阻害している岩をどかしきってそのまま岩陰に隠れてオーガキングをみつめる。先程からまったく玉座から動かない。岩が動いているのだから俺がまだ生きていることはわかっているはずだ。ただ動かないのか、それともなにか動けない理由があるのか。
「可能性が浮上しただけましかな……」
それを暴くための作戦を考える。普通に突っ込んでも結界に弾かれておわりだからな。
(というかそもそもあの結界はどういう技なんだ? この世界の基準がわからんが一定量の合計ダメージまで防ぐものなのか、一定ダメージ以下をすべて防ぐものなのか、物理技と魔法とで違うのか)
「あ、魔法あんじゃん。試さないと」
左の道を行った先で戦ったオーガメイジを喰らって身に付いた『ファイア』のことを思い出した。つか忘れるなよ俺……。よく考えてみると一度も使ってないことに気がついた。威力も攻撃速度も範囲も消費魔力も何一つわからない。『ファイア』の魔法自体はオーガメイジも使っていたので問題はない。フレアとはまた別の魔法らしいが一体何が違うのだろうか? そもそもきちんと使えるのだろうか?
考えてもわからないならば使ってみるしかないという結論に至った俺はさっそくオーガキングめがけて試しに1発撃ってみる。『ファイア』と念じると俺の手から火の玉が飛ぶ。それはオーガキングに当たる前に剣で斬られてしまった。それでも今ので『ファイア』がきちんと撃てることとオーガキングまで届くことがわかった。それだけでも作戦に組み込める。届かなかったら近づけばいいだけなんだけどね。
頭に今あるものをリストアップしていく。武器としては両手剣が折れてしまったため、もともとの短剣と片手剣があるだけでダメージを与えられそうにない。他にあるのはたくさんの残骸とそこらへんにある石と岩。
「選択肢なんか1つしかない気がするわ」
近接格闘なんか論外だ。ダメージがあるのかわからないのにんなことできない。となると遠距離から魔法と岩を織り混ぜて攻めるしかない。それでじわじわと削るのが最適だと思う。
回復も終わり、残骸を取り出すと俺はオーガキング正面に位置するように動く。そして顔を動かして俺を見据えてくるオーガキングに残骸を投げつける。次は『ファイア』を放つもまたも剣で切られる。1発1発ではまともにダメージはないと判断し、攻撃の手を増やす。
1発でダメなら2発。2発でダメなら3発といったように攻撃をはやめていく。岩を、棍棒の残骸を、『ファイア』の魔法を次々に飛ばす。オーガキングはそれらをことごとく防ぐ。時折オーガキングの上のほうに投げて上から岩を落とすような攻撃もしてみるがそれも防がれる。頑張ってオーガキングの真上にあたる天井や、その周囲の天井を崩して攻撃しても結界に防がれてしまった。あたりには結界に阻まれた際に砕けて小さくなった岩が散らばる。作戦通りに。
攻撃をしていてわかったことがある。それは結界についてだ。結界に魔法を防ぐ力はない。現に『ファイア』はすべて剣で防いでいる。そのためか防ぎきれずに若干焦げ付いた場所も体にはできていた。そしてついに残骸のストックが切れた。アイテムボックスの中にあるのは剣のみ。遠距離攻撃をしようにも今自分の周りに岩はない。
だが、仕込みはすんでいた。
なぜ俺がひたすらに残骸や岩を投げ続けたのか。
それには二つの理由があった。一つは相手の魔力を消耗させること。見た目的にはかすかだが疲労が見て取れるしこれは成功したんじゃないかと思う。俺も『再生』がなければ疲れて動けなかったと思うが。
そしてもう1つは弾をばらまくこと。攻撃が弾かれることでいい感じにオーガキングの周囲全方向にばらまけた。天井を少し崩したのも効果的だったようだ。さらに大きい岩は手頃なサイズまで砕けている。
「つか考えてみりゃ倒さなくても喰えば終わるんだよな? なら倒す必要ないんじゃ……」
『オーガキングの討伐は確認されていません
オーガキングを喰らうことができません』
なんか答えてくれた。なにこれ、そんな機能ついてたわけ?
それはともかく、第2? いや第3か。第3戦といきますか。これで終わらせてやる。
一方的に切られた第1戦、ひたすら正面から岩などを投げ続けた第2戦とまともなダメージはないがこの第3戦で決めるつもりで俺は動き出した。
円を描くようにオーガキングの周りを走る。その中で地面に落ちている岩などをつかんで投げつける。そして45度走ったところで『ファイア』を放ち、さらに45度走ったところでまた投げる。それをひたすら繰り返す。
オーガキングは突然剣を後方に突き立てる。一見あきらめただけのようだが実際には違っていた。剣があることで後方からの攻撃はあまり通じなくなった。攻撃は剣に当たってしまい届かないのだ。それでも時々当たるものの俺は正直コントロールがよくない。そんな狙ったとこに確実になんていかないのだ。
とにかく数で攻めるべく岩を投げる。それを6周近く繰り返したとき、俺は1つの違和感を覚えた。
オーガキングの突き立てた剣についてだ。あれは本当に自身を守るためだったのかということだ。
剣をつきたてて剣より上の方の防御はしないくせに剣より下、つまり玉座があるところに来た岩に対しては結界をつかうのだ。
さらに前方からの攻撃をすべて素手で対応し始めた。初めは結界を温存するためとも思ったが後方へはすぐに使う。その事を思えば温存は考えられない。
俺は浮かんだ1つの疑問を解決するために動くことにした。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
薬剤師 Lv7
冒険者 Lv3
格闘家 Lv3
狙撃手 Lv3
盗賊 Lv2
????の勇者 Lv1 』
レベルに変化はありません
ではまた次回