僕は真の勇者だ!その4
前話をあがってすぐに読んでくださった方、非常に中途半端なところできれてしまっていました。
ご指摘を受けてすぐに訂正しましたので、よろしければご確認ください。
申し訳ございませんでした。
「ここにくるのも久しぶりだな…」
「久しぶりと言うほど時間が経ってないですわよ?」
「それを言ったらおしまいだよ!」
僕たちは今、イリアスの街に戻ってきていた。ここに来るまでにいくつかの街に訪れていた。今はある目的のためにその道を戻っている最中だ。
ここの一つ前の街であるコロイドの街でも、そのもう一つ前の町でも、その前も、そのさらに前もと、行く先々で耳にした『噂』がある。僕たちは、その街を通るついでに、その真偽を確かめることにしたのだ。
街につくと、僕たちは真っ先にギルドへ向かった。
「勇者様! よくいらっしゃいました! またお会いできると信じていましたわ!」
元気よく迎えてくれたのは前にここに来たときに僕の虜になってしまった受付嬢さんだ。もてる男はつらいね。
「今日はどうなさったのですか? まさか、私に会いに来てくださったのですか!!?」
「そんなことあるわけがありませんわ。妄想はそれくらいにしてくださいまし」
「ヴァルミネの言うとおりだ。古里があんたに靡くことはないよ」
「あの…本題を…」
「今日はここ最近、あちこちの町で聞く噂の真相を確かめに来たのだ」
「噂、ですか?」
「うん。『ある冒険者パーティーによってアントホームのダンジョンが攻略されて、ダンジョンコアが回収された』って噂なんだけど」
そう。噂とは、ダンジョンクリアの噂だ。まあ僕たちが15層のボスを倒したから攻略しやすいようにはなっていただろう。あの程度のボスならばあそこのモブのほうがよっぽど強い。
それにしてもあのボス名前なんて言ったかな?……そうだ。ビッグキングアントだ。たしか倒す寸前に進化してたみたいだったけどまあ死んでしまっては意味がないよね。
「その噂でしたか」
「僕たちみたいに15層のボスを倒したパーティーがその奥の部屋からコアを持ってきたんだろ?」
今思えばいくら疲れていたからとはいえ、もう少し頑張ってコアを回収しておけばよかったな。出てきてから知ったことだからどうにもならなかったけど、15層でここのダンジョンは終わりだったらしい。ならあと少し頑張ればコアを回収できたのだ。惜しいことをした。
「その噂ですか? たしかにアントホームは攻略されました。なんでも18層にボスの部屋があって、その奥からダンジョンコアを回収したようですよ。数日前に宴が開かれましたし」
「え? 18層? 15層じゃないの?」
「そのパーティが15層を突破して、その先に階層がいくつかあるということをギルドマスターに報告しまして、そこにはキングアントなどが群れていたそうです。そこをなんとか突破して、最終的にボスがいたのが18層だったそうです」
「なるほどな。どうりで15層のあのボスが弱かったわけだ」
「あの程度ならすぐに片が付いてしまいますしね」
「あれくらいのやつなら他のダンジョンにいくらでもいたしな」
「ビッグキングアントと同クラスというとキリハタのダンジョンにいた20層のボスとかか?」
「そうだね。あのボスくらいの強さじゃなかったかな?」
「ビッグキングアント?」
「ああ受付嬢さんは知らなかったっけ。僕たちが15層で倒したボスの名前。あれくらいのやつなら僕たちならあっという間だよ」
にっこりと笑って軽く自分の胸を叩く。まあキングアントだろうと言われてたボスがその上位であるビッグキングアントだったんだからしょうがないか。やっぱり僕たちレベルに強いメンバーが集まっているとダンジョンもそれに応じた強さのモンスターをボスとして召喚するのかな。
「そ、そうですか。ともかく、ダンジョンは攻略されましたよ。勇者様方も挑んでいきますか?」
「攻略成功の魔道具っていうのはまだ残っているのかな?」
「はい。例のパーティ以降まだ攻略できた方はいらっしゃらないので。15層を突破する方はちらほらと出始めたのですが、そこから先に苦戦しているようです」
「へえ。今まで突破できていなかったのに急に突破できるようになったんだ」
「15層のボスが変わったようですよ? 『解析』使いによると以前はキラーキングアントだったのが、エルダーキングアントへと変わったようで、負傷者を出しながらですが、なんとか倒すことができたという方々がいらっしゃいます」
「そうなんだ。僕たちも用事が済んだら挑んでみるのもいいんじゃないかな」
「そうですわね。今は万が一のことを考えるとダンジョンに挑むべきではないと思います」
「あたしは別に挑んでもいいんだけどな」
「…けがする…かも」
「万が一のことを考えろ。お前は大会に出ないからいいかもしれないが出るメンバーもいるんだ」
「私はみぃちゃんを呼ばなければいいだけですがやめておきましょう」
「私も、反対です」
「まだしばらくは18層が攻略されることはないと思いますので大丈夫だと思いますよ」
「そうなの?」
「はい。どうやら群れとの連戦に苦戦しているようで、一番進んでいる方でも16層に降りてすぐと聞いています」
「そっか。じゃあ大丈夫だね」
「なら早めに現地に向かうとするか。丸1日はかかるということだしな」
「武闘大会まで時間もないしそうしよう」
「またのお越しをお待ちしております」
そうして僕たちはギルドを出た。
ギルドを出た僕たちは、さっそくアライエの街への定期便にのるため馬車乗り場へと行くと、衝撃の事実が発覚した。
「間に合う馬車がもうない?」
「申し訳ありませんが今朝出発したものが武闘大会前最後の馬車になっております」
「今日馬車が出ると聞いていたのだが」
「はい、馬車が出るのは朝早くになってしまうのです。どうしても1日は確実にかかりますので朝早くに出発しまして、昼前に到着するという形になっております」
「そんな! いったいどうしてくれますの!?」
「そうはおっしゃられましても、定期便はもうありませんし、馬車で向こうの街に行く商人を待って、同乗させてもらうように交渉していただくしかないかと…」
「そこに馬車があるじゃないか。馬は見当たらないが探せばいるのだろう?」
「でしたらそれで私たちを運んでもらえばいいのですわ!」
「そんなことをおっしゃられても困ります! 私はここで仕事がありますし、あの馬車は預かりものですので使うわけにはいきません。その商人の方も大会が終わるまでは向こうにいらっしゃるとおっしゃってましたので」
「馬車を置いてか? 稼ぎ時じゃないのか武闘大会なんて時期は」
「彼の商売はダンジョンに入る冒険者向けのものですので。ダンジョン内で食べられるような小型の携帯食料やロープなどの道具類を売っていられる方です。武闘大会の場ではそんなに売れるものでもありません。むしろ、武闘大会が終わるまでにいろんな冒険者に声をかけてダンジョンに呼び込み、そこで必要なアイテムを売るといった商売方法をしています。そのため、向こうに商売道具をもっていかないのです」
「そういうことか。少し考えさせてくれ」
僕たちは少しその場から離れた。
「あのまま押せば馬車を出してくれたんじゃないの?」
「そうですわ。もしもごねたのならば私の実家のカク家の力を使えばよかったのではないんですの?」
「あの…ここで実家の力を出すのは違うかと…」
「キャラビーさんは黙っててくださいまし!」
「大声を出すんじゃねえよ。別に歩けばよくねえか? 馬車が行ったり来たりしてるってことはきちんと整備されてる道があるってことだろ?」
「馬車で丸一日かかる道ですわよ?」
「馬車で一日ならあたしたちなら二日もかからないとみるべきだ。今から行けば大会の日の前にはつく」
「走っていく必要がありそうだな。調整をする時間もないが大丈夫か?」
「古里とバラーガにそうそう勝てるような奴もみぃちゃんに勝てるようなやつを連れてくるのもいないんじゃないか?」
「油断は禁物…です」
「あなたに言われるまでもありませんわ!」
「ヴァルミネ、いったん落ち着け」
「自分たちで行くなら急がないといけないね。食料とかはたしか用意できてるよね?」
「俺のアイテムボックスとキャラビーの魔法袋にわけていれてある。あるな、キャラビー?」
「…きちんとあります」
「大丈夫そうだね。なら今から向かおう。地図くらいはもらっていこう。それくらいしてもらっても別にかまわないよね。本当なら僕たちが乗るはずだった馬車を僕たちがいないのに行かせちゃったってことで」
「むしろお金を払ってもらうべきですわ」
「そこまでしてもらう必要はねえと思うぜ。あたしたちが知らなかっただけだからな」
「まあ何時ごろ出るか聞かなかった我々に責任があることだ」
「他の街の馬車と一緒だと思ってたからね」
たいていの定期便の馬車は昼過ぎに出発するものなのだ。でも、ここの馬車が特別に朝に出るということを知らなかった。誰か教えてくれればいいのに。
「じゃあ地図をもらって急ごうか」
僕たちはアライエの街への地図をもらいに先ほどの場所まで戻った。
どうもコクトーです
久しぶりの古里君の話です
前書でも書きましたが本当にすいませんでした!
なんか保存がうまくできていなかったようで…
今後は気をつけます
ではまた次回




