アントホーム・奥です6
『怒り』で攻撃力は上がった。まあ防御力は下がったけど。でも問題はない。回復は『再生』と『自動回復』とマナの回復魔法に任せればいい。俺は
「攻撃に専念する。マナ、回復は任せた」
「え? メイ? ちょっと!?」
俺はワープで再びやつに接近する。
今度も足元に来ると予想したのか俺の下をやつの足が通り過ぎる。さっきのも勘だったのか。なんかその攻撃をくらったのが悔しくなってきた…。まあいいや。
俺は『鬼の一撃・付与』を使った剣閃でやつの胸を切る。黒い血が出て俺の体を汚すがしょうがない。すぐに奴の後ろに転移した。俺がさっきまでいた空間をやつの腕が通過する。
「遅い」
今度は背中を切る。すぐにやつが振り返るがすでにワープして背後に回っていた。
剣閃で足を切り付け、バランスを崩す。それから腕、胸、腹、足、腕、背、足と次々に転移しては切り、転移しては切りを繰り返す。消耗が極端に激しいがしょうがない。『怒り』『鬼の一撃・付与』『小規模ワープ』の3つを常時使用しているような状態だ。これで消耗が少なかったらもうわけがわからない。
そして、十数度目の転移でやつの腕の1本を切り落とした。血が噴き出して切れた腕を喰らう。一瞬にして腕は俺の瞳の中に消えていく。
『パラメータ:全上昇(極小)を習得しました』
「クソガァ!!」
俺に腕を喰われて、自分では喰らうことができず、回復手段を奪われたやつは俺をにらみつける。自分の体の一部を喰らうことで自らを回復させる。俺の予測ではそんな感じの能力だったのだがたぶん正解なのだろう。ダンジョンコアを吸収したことによって得た能力だとは思うからダンジョンコアをなんとか奪うことができればいちいち喰らわなくて済むのだがまあその辺は喰らうことでパラメータが上がるからいいのだが…。そもそもたぶんこいつを倒さなければダンジョンコアを奪うことはできないだろうからこれが最善だろうな。
やつは、自分が回復する手段の代わりとして俺を喰らうため噛みつこうとしてきた。それを剣で受け止めると、やつの陰から繰り出された腕を剣を滑らせながら上に跳んでかわす。
急に均衡が崩れたためにやつは地面に倒れ混む。その隙をついてその攻撃してきた腕を切り落として喰らう。全上昇(極小)を習得してワープで距離をとる。あと残る腕は…一本だな。
よく考えてみると4本も腕があったのになんで一本ずつしか攻撃しなかったんだろうか。2本で押さえてもう2本で攻撃とかされてたらもっときつかったと思うんだが…。
「クソクソクソクソ! コアヨ、モットダ、モット我ニ力ヲアタエヨ!」
やつの叫びに応じるかのようにどす黒い魔力がやつの体中に溢れ出す。見るだけでなんだか嫌な感じがするほどだ。でも、体の表面に俺が何度も何度も切り付けて作った傷は、すべて消えており、腕も1本だけだったのが2本に戻っている。4本すべて生えてくるわけではなさそうだ。
「フフフフフ。マダコレダケノカが眠ッテイタトハ。コレナラバキサ…」
それまでスムーズに話していたやつだったが、突然胸を押さえて苦しみだした。
「オカシイ。オカシイオカシイオカシイ。ナンダコノ苦シミハ。嫌ダ、消エタクナイ。飲マレタクナイ」
そう苦しむ間にもどんどん魔力はあふれ出ていた。そのあふれ出た魔力は、胸に浮かんできた球体に吸収されている。たぶんダンジョンコアなのだろう。
やつはあふれ出る力を制御できていないのだ。大きすぎる力に飲まれようとしている。
「な!?」
そんなとき、やつの体にある変化が起きていた。
「グルルルル」
体の表面に白い毛がはえてきたのだ。
それだけではなく、あふれ出ていた禍々しい魔力が完全にコアに吸収され、それまでとは違う、白い魔力がそれを覆って魔力があふれるのを防いでいた。
「突然苦しみガ収まった。スバラシイ力だ。これが『私』の力ナノカ」
やつはそれまで苦しんでいたのが嘘であるかのように自然体となった。
「まあお前を倒すことにはかわらないけどな」
俺は『テンション』を使ってさらに攻撃力を上げた。
そしてやつに向かって地面をけった。ついでに走りながらアイテムボックスから槍を取り出して投げつける。それは当然のようにはじかれてしまうが、問題はない。少しでも意識を向けられれば。
俺は一瞬でワープでやつの後ろにとぶ。
「ブレイクショット!」
そしてブレイクショットをその無防備な背中に繰り出した。
俺の予想とは違い、完全に攻撃が入った。やつは吹き飛ばされて壁に直撃する。あれ?
壁に激突して倒れたやつは、頭から黒い血を流しながら起き上がる。そして俺のほうを向くと、おもむろに口を開いた。
いったい何をしたいのか疑問に思っていると、やつは勢いよく口を閉じた。
その瞬間、俺の周りに半透明な牙が現れた。
「な!?」
それが勢いよく閉じて俺をかみ切ろうとしてくる。なんとか上に向かってワープすることでそれを回避した。この技は何度か見たことがある。というか俺が何度も使っている技だ。
「おかしいだろうが。それは白虎の技だぞ!? その白虎を喰らった俺ならともかく、なんでお前が使えるんだ!?」
俺の悲鳴にも似た言葉を無視するように次々に半透明な牙が現れる。
それをワープを使って次々にかわしながら奴に近づいていく。もしかしなくてもあの表面に浮かんでる白い毛に関係があるんだろうな…。
やつに近づくにつれて攻撃は激しくなる。でも
「お前がそれを使えても別にお前が白虎になったわけじゃないだろ? なら問題ない」
ワープを繰り返し、やつに剣が届く距離まで来た。これで終わりだ。
「『剣閃』4連撃」
ステュラで剣閃を四角形を描くように使う。その4連でダンジョンコアの周りをえぐる。
「ラストだ。コンボ5、『一刀両断』!」
『鬼の一撃・付与』、『怒り』、『テンション』、『コンボ5』
その4つのスキルが合わさった状態での一刀両断。それはすいこまれるようにコアを切り裂いた。
その瞬間、それを起点にまるで暴風のように魔力が噴き出し、俺を吹き飛ばす。幸い、距離のあったマナとヒツギの二人のところまでは魔力は届いてないらしく、風が吹き付けるだけで済んだようだ。
2人の近く飛ばされた俺も、何とか剣を地面に突き立てて止まり、やつのほうを見る。
やつは完全に倒れており、その体からは白色の毛は完全になくなっていた。
「…ヒメ?」
ただ、そのすぐ前には白虎が現れており、やつのほうを向いていた。
そして頭を下げたかと思うと、真っ二つになったダンジョンコアを両方咥え、ぽいっと上に投げ上げた。
「かあぁう!!」
そして、それをさっきも見た、半透明の牙がばらばらに噛み砕いた。
砕かれたそれは、パラパラと破片を散らし、空気にとけるように消えていく。俺たちはそれをただただ茫然と見ていた。
「…ああ。そういうことでしたか…。納得がいきました」
やつはなんだか穏やかな雰囲気になりぽつぽつとしゃべり始めた。
「もともと何か少しおかしいとは感じていました。彼らの前にだけ他とは一線を画すような強者ばかりが召喚される。普通に考えてみればありえないことです。このダンジョンは私の眷属である魔物しか召喚しないようになっていました。ですが、キメラアントという眷属は私には存在しない。あの場で突然変異種として生まれた新しい眷属であることも考えましたが、あなた様の力が加わっただけだったのですね」
キメラアントといえば5層で倒したフロアボスだ。たしかに強かった。
「あなたの力が、私を通してダンジョンコアに流れ、そして強力な眷属を生み出した。耐性を持った個体もそうですよね?あなた様によって加えられた力が彼らにも派生した。その結果、耐性という形で現れたのでしょう」
「かあぁう。かうかう」
「隠そうとしなくてもわかりますよ。あなた様は……主は、主を捨てた我々を、ずっと、ずっと守ってくださっていたのですね。だからこそ、強大な力がある彼らをここまで来させないように強者を生み出し、魔物を強くし、なんとか追い払おうとした。ですが、なぜですか? なぜ我々のようなものを…」
「かう。かぁうかああああああう!」
「『たとえ離れたとしてもお前らは我の眷属である』ですか…」
やつの瞳からはとめどなく涙がこぼれていた。やつは今胸のあたりを完全に切り裂かれている。あふれ出る血の量からみても死ぬまでもう30秒もないだろう。でも…
「マナ、回復してあげられない? 私はもう大丈夫だから」
「…私でも無理だよ。もう完全に治らないところまできてる。あれを治すにはたぶんヒール7以上が必要になる。でも、今の私じゃあヒール5までが限界」
「けっこう深く切りつけた感触があったからな…」
今の今まで敵だったはずのやつを治してやりたい、癒してやりたいという思いが俺たちの間に広がっていた。
「かう?」
「主よ、私自身の命です。私が一番理解しています。最後に、私の、願いを聞いてくれますか?」
「かう!」
ヒメは、強くうなずいた。
「できることならば、もう一度、もう一度、この命、主のために。我らのすべてを主の…力…に………」
真アンセスタークイーンアントは力尽きた。
その体は、光の粒子へと変わった……。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
格闘家 LvMAX
狙撃手 LvMAX
冒険者 Lv63/99
盗賊 Lv44/50
剣士 Lv46/50
武闘家 Lv41/60
戦士 Lv43/50
魔法使いLv49/50
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv10/20
????の勇者Lv9/??
狙撃主 Lv20/70
獣人 Lv1/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60 』
納得がいかず弄ってたら結局4日後『以降』になってしまいました…
多少余裕ができたので次は3日後に!
ついに戦闘終結!!!
でもこの話はもう少し続きます
ではまた次回




