呪われました(?)
「……え?」
何となくで被った帽子も瞳に喰われた。俺はまさかそんなわけはないと首をふってもう1体の帽子を被る。
『パラメータ:防御上昇(極小)を習得しました』
「……嘘だろ?」
兜が落ちてるとこまで走る。
『パラメータ:防御上昇(小)を習得しました』
オーガアーチャーの帽子へと走る。
『パラメータ:防御上昇(極小)を習得しました』
バンダナを掴み、慌てて巻く。
『パラメータ:器用さ上昇(極小)を習得しました』
あ、バンダナは防御じゃないのね。
「……って、ざっけんじゃねえぞ!?」
俺はどうやら呪われた(?)そうです。頭部への装備を禁止されました。
「もしかして他の装備も喰えるのか?」
頭のなかでやるなという警告音が鳴り響く。しかし、俺の体は興味には勝てませんでした。
鎧、ローブ、グリーブ、靴と使うつもりのない防具を次々目の近くにやっては喰らっていく。その度に防御上昇(極小)や(小)、素早さ上昇(小)が増えていく。結局俺はオーガシーフの使ってた短剣4本とオーガナイトの鉄の剣、オーガアーチャーの靴以外すべて喰った。靴は替えがあるに越したことはないが2つも3つもはいらない。そのため残したのは一組だけだ。
「よし。さて、道戻るか。まさか骨たってる方が正解とかねえよ……」
『職業:盗賊になりました』
「……さーて、さっさといくぞぉー!!」
俺はなにも見なかったことにした。普通こうなると思う。倒したオーガから奪った装備を着けたら盗賊とかねえよ。
そんな風に現実から目をそらしながら来た道を戻る。そして分かれ道まで来ると、すぐに今度は反対の、骨のたっている道を進む。
こちらではモンスターは今のところ出てこなかった。広場も宝箱も行き止まりもない。ただの一本道だった。その道を両手にそれぞれ短剣を構えて進む。警戒はいくらしても問題はない。
そして視界の先に少し通路より明るくなっている場所を見つけた。そこのすぐ近くまで来ると、その広場にいるモンスターが視界にはいる。これまでのものと比べてサイズがまるで違うオーガと、その取り巻きの強そうなオーガが2体。
『オーガキング(オーガ種)』
『オーガガーディアン(オーガ種)』
『オーガソード(オーガ種)』
でかいやつの名前はオーガキング。座ってるはずなのに隣にいるオーガたちの3倍くらいある。棍棒じゃなくて巨大な剣を使ってることや、どう見ても他のオーガと違い角が鋭く王冠をして玉座に座っているあたりオーガと言われても納得できない。俺は頭には装備できないのに。
俺は現在の武器を思い浮かべて戦いかたをイメージしてみる。ここから投擲で1体減らせればいいかな。減らせなくてもダメージ与えれれば十分。
「よし、とりあえず試してみるか。ダメならダメージ覚悟で1体減らしにいこう」
俺には戦いにおいて最終手段の瞳で喰らうという手がある。それならダメージの有無とか関係ない。どれだけ負けそうになっても顔をつけちゃえばいいんだから。そんなことを考えながら短剣から鉄の剣に持ち替えて片手で棍棒の残骸を掴んだ。そして、まわりにはあと2つ残骸をおいてある。
俺が棍棒の残骸による投擲攻撃を行ったことで戦闘が始まった。
3つの残骸はすべてまっすぐオーガキングを狙った。しかし、オーガキングに届く前になにか見えない壁に阻まれた。俺の初撃は失敗してしまったようだ。見るとオーガキングの前にオーガガーディアンが浮いていた。周りが微かにキラキラしている。何かの魔法だろう。あの壁を形成したと考えると、おそらく結界系の魔法。そうあたりをつけて頭を切り替える。
走ってくるオーガソードの剣を鉄の剣で受け止める。俺の剣はただ力任せに振るってるだけだが、オーガソードの剣はなんというかきれいな剣だ。型に沿っている感じがある。しかし、隙が見当たらない。
何度も何度も、剣をたたき折るくらいの気持ちで剣を叩きつけるもそれはことごとく受け流され力が加わっている感覚がしない。そこで俺は剣を替える。片手で攻めている間にもう片方の手に短剣を構える。そして攻め手を短剣に変えてそれまで攻めていた剣も短剣にかえる。攻撃力は大幅に下がったが、それでも筋力上昇であがりまくった俺の力なら大して影響はない。実はこっちのほうがあってんじゃないかな?
攻撃が短剣2本になったことで俺の攻撃回数は2倍になった。それに伴ってオーガソードに攻撃があたり始める。それでもオーガソードはうまく体を捻ってダメージを逃がしているため致命傷はない。
右の短剣が相手の剣を止めている間に反対の短剣が相手の腕を狙う。オーガソードは比較的大きな両手剣を武器としている。なので腕を1本使えなくすればおそらく今みたいな動きはできないだろう。片手と両手とでは大きく違うからな。
俺は狙いがばれないように執拗に心臓部や頭、足を狙いにかかる。それらに注意がいけば腕への注意は薄れるだろう。
そのまま攻防が30秒ほど続いた。その間にも少しずつダメージを与えていく。その一方で、逆に俺もダメージが増えていく。やっぱ数が違うのにさばききれてる秘訣は剣術かな。
戦いのなかで1つだけ疑問に思うことがある。はじめからそうだがオーガキングやオーガガーディアンが一切戦闘に参加してこないことだ。守るためと言えばその通りだが、いまいちしっくりこない。
そんなことを考えながら戦っていた罰か、俺の頬から血が飛ぶ。あぶねえ。少しずれてたら首じゃねえか。頭に浮かぶ疑問符を無視して意識をオーガソードだけに向ける。一対一を望んでるならそれはそれでラッキーだ。1体に意識のすべてを向ける。そろそろ勝負に出よう。
オーガソードの動きが一瞬止まる。スキル『威圧』。レベルマックスになっているからか効果が上がりオーガキングやオーガガーディアンにはまったくききそうにないが、かろうじてオーガソードには有効だった。それでも一瞬にすぎないが、それだけで十分だった。オーガソードの左腕を切り落とす。一瞬反応が遅れたオーガソードの剣はそれに間に合わない。オーガソードの腕から血が噴き出る。オーガソードは後方にとんで俺から慌てて距離を取った。俺の足元にはオーガソードの腕。俺は躊躇いなくその腕を瞳で喰らう。
『パラメータ:器用さ上昇(小)を習得しました』
オーガソードは失った左腕に目を向ける。未だ血が出ているが、オーガソードは片手でしっかりと剣を構えて向かってきた。先ほどまでのような剣術じゃなくただ力で押すだけの攻撃。その瞬間勝負は決したようなものだった。いくらオーガキングの側近とはいえ1体の、それも片手で両手剣を扱っているオーガの力と、数多のオーガを喰らってきて筋力をかなり上昇させてきた俺の2本の短剣。どちらの攻撃が勝るかは一目瞭然だった。
バランスをとりにくいのか、若干ふらつきながらも両手剣を振り下ろしてくるオーガソード。俺はそれを短剣でいなして首を狙う。後ろに下がってかわされるが反対の手の短剣で脚を切る。がくっと膝をつくオーガソードとの距離を一気に詰める。そしてすれ違う瞬間、心臓と首に短剣を差し込んだ。オーガソードは血を噴きだして絶命した。
「なんてやつだよ」
俺は脇腹を押さえる。そこには血が滲んでいた。最後のすれ違い様に切られたのだ。あのふらついていた動きはフェイク。俺を確実に殺すために自分を捨てやがった。自分が死んでもオーガガーディアンが俺を殺せれば十分。オーガキングさえ守れればそれでいい。つまるところそういうことだ。
「ほんとすげえわ。まあやられるわけにもいかんがな」
『再生』が発動して傷が塞がっていく。それでも傷が塞がるまでは血が噴き出し続ける。結局完全に塞がったのは俺がオーガソードを喰った後だった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
薬剤師 Lv7
冒険者 Lv3
格闘家 Lv3
狙撃手 Lv3
盗賊 Lv2
????の勇者 Lv1 』
ボス登場!
ではまた次回