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キングアントでもめました

 イリアスの町のギルドマスター、ガラハム・ジェイクは元々は他の迷宮都市からやってきた冒険者だ。

 10年前にここに来た時点でランクA-。いや、正確にはA-になったのがここに来たのと同時だった。他の場所での活躍と、昇格試験の結果がよくて昇格したのを知らされ、ギルドカードを更新したのがここなのだ。

 当然のように、ここに来てすぐにダンジョンにも挑み、破竹の勢いで攻略していった。

 当時ガラハムには相方がいた。相方もランクはB+。その相方と共に、昼夜を問わず突き進んでいた。

 そしてこの町に来てわずか一月という短い時間で15層へと到達した。彼らのランクを考えれば別におかしなことではなかった。ここのダンジョンの14層までのランクはD-。ガラハムたちが苦戦するような相手はいない。それこそ傷はできても大した怪我はしないでいけた。

 彼らはこのとき浮かれていたし、油断していなかったのか? と聞かれたらしていたとしか答えられなかったはずだ。だからこそ、ろくな対策もたてずにボスのキングアントへと挑んだ。

 その結果、相方と左足を失った。

 相方の死体を置いて逃げ出した。そうせざるをえなかった。あれは普通のとは次元が違う。おそらくキングアントの中でもそうとう強い部類だろう。キングアントが普通に出てくるダンジョンもあると聞くがあんなやつが何体もいてたまるか。

 たまたま高位の回復魔法をつかえる人間が町にいたこともあって足は戻った。だが前のようには動けなかった。相方の仇を討とうにもそのための力はなかった。

 体長10m以上。アントがかわいく見えるほどだ。体中傷だらけだが、俺と相方の攻撃は効かなかった。一度だけ相手の甲殻を凹ませたが、それに耐えきれずにハンマーが壊れた。


 しかし、そいつはつい最近倒された。

 相方の仇をとってくれたと、一人相方の墓の前で酒をかけながら泣いた。酒はあいつが好きだったやつだ。

 10年の月日が経ち、歳で弱くなっていたのかと思わなくもなかったが、それは違っていた。 体長は15mを超し、傷は当時よりも深く、多くついており、腕も俺が挑んだときより鋭く、太くなっていたそうだ。俺のつけた傷も生々しく残っていたと聞いた。持ってこられた素材を見る限りそんな様子はなかったが、ボスとして君臨していたやつだからな。ドロップ品になってしまうのも仕方がない。

 それから数日後、信じられない話が入ってきた。

 キングアントを仕留めたという話だ。

 どうせ嘘だろうが、一応話を聞く必要はある。俺はそいつらを呼び出した。


---------------------------



 俺たちは扉の中から聞こえた低い声にしたがって中に入った。


「よく来たな。俺がイリアスの町のギルドマスター、ガラハムだ」


「ギルドマスター、こちらが話を持ってきたメイ、マナ、ヒツギさんです」


 俺たちは、その姿を見た瞬間、かたまった。


「おう。なーに突っ立てんだ。ほら、座っていいぞ?」


 ガラハムさんが座るように促すが俺たちは動かなかった。受付嬢さんは早くも扉から出る。仕事かもしれないけど俺たちを見捨てないでくれ!


「どうした? 獲って食おうってんじゃねえんだ。そう緊張すんなよ」


「なんで……」


「ん?」


「なんで裸なんだよ!?」


 ガラハムは上半身裸だった。

 そのたくましい筋肉を惜しげもなくさらして椅子に座っている。服は? ねぇ服は!?


「あー驚いたか? これが常時だ。慣れてくれ。この町のやつはみんなもう慣れてるからな」


 なんという住民たちだ! そう言われてしまうと俺たちも慣れなくてはいけないように感じてしまう。


「あ、えーっと、失礼します?」


「おう、座れ座れ」


 俺がとりあえず座ると二人も続いて座る。顔が少し赤い。そりゃあ……なあ。


「ま、本題に入るぞ」


 ガラハムがそれまでの少しほんわかした感じから一気に変わった。俺たちも背筋をただす。


「キングアントを倒したらしいな」


「ええ。一層のモンスターハウスで」


「モンスターハウスか…………待て」


「?」


「一層だと? お前らが今潜ってるのは15層じゃないのか?」


「今日初めて一層に入ったところだが……」


「一層でボスがでるだと……そんなことがあっていいのか……?」


「それなんですけど、勇者が倒したのってほんとにキングアントですか?」


「どういうことだ?」


「変異種という可能性は?」


 メイが言った『変異種』という言葉でガラハムは目を閉じて何かを考え始めた。なにか口出しできるような雰囲気ではなかったのでガラハムの言葉を待つ。

 じっくり1分ほど考えてようやく目を開けた。


「その可能性は大いにある。お前らが倒したキングアントの素材はあるか?」


 ガラハムはまだ嘘だと頭のどこかで考えながら一応聞く。なければ嘘で確定だろう。偽物を出してもガラハムにはあるアイテムがあった。偽物を出した時点でこいつらを罰しよう。そう考えていた。


「ここじゃ狭いからもうちょい広いところはないですか? サイズは4mちょいくらいだったからそれくらいが出せる広さで」


「4m? えらく小さいな。勇者たちが持ってきたのは15mクラスの獲物だったらしいぞ?」


「んなもん知らないって。とりあえずここじゃ出せないってことだけは確かです」


「アイテムボックスもちか?」


「俺が今は死体を持ってます」


「……俺の訓練施設が裏にある。そこなら大丈夫だろう。あ、その口調面倒だろ? やめてもいいぞ」


 ガラハムが席をたって扉に向かう。俺たちもそれに続いた。

 訓練施設と言っていたが、どちらかと言えばただの倉庫という感じだった。広さはそれなりにあって、縦横20mくらいありそうだ。ただのだだっ広い空間。そこの中央までガラハムは移動する。


「ここなら大丈夫だろ? さぁ出してくれ」


「はいよ」


 ガラハムの目の前にどんとキングアントの死体を出してやる。拾っておいた腕のパーツも残さずに出す。

 一瞬だけびくっとなっていたガラハムだったが、すぐにアイテムボックスから水晶のようなものを取り出してキングアントにかざした。

 それがどんな道具なのかわからない俺たちはそれをぼーっと見ていた。


「こいつは鑑定の宝珠。そいつがどんなものなのかを鑑定する道具だ。昔にダンジョンで見つけてな。今でも愛用してる」


 鑑定か……俺が使えるって知ったらどうなるかな……。


「そろそろ結果が出るぞ」


『鑑定結果:名称 キングアントの死体

      部位 全身

      状態 良好    』


 なんか俺の鑑定よりもよっぽど性能がいいんだが……。まあダンジョンでゲットしたものらしいし仕方ないか。


「本物のようだな。改めて聞くがこいつどこででた?」


「1層のモンスターハウスです。たくさん出てきた中でこいつだけ格が違って見えたんで」


「といってもメイが一人でやっちゃったんだけどね」


「こいつを一人でやるとはな。だがこのサイズの奴ならいけなくもないか」


「思ったよりもろかったしな。で、そろそろしまっていいか?」


「ん? 換金なら別にここでそのままやってやるぞ?」


「あーごめんなさい。私たちこれ売る気はないんです」


「どういうことだ? キングアントの素材はまだほとんど出回っていない。かなりの額になるぞ?」


「そこは企業秘密です。とにかく売る気はないので」


 俺はそう言い切ってキングアントを再びアイテムボックスに戻す。


「本当に売る気はないのか? 今なら俺が少し高く買い取るように口をきいてやるぞ」


「売る気はないです。私たちにとって有効に使えますから。それとも、ギルドは私たちが得たアイテムや倒したモンスターをどうするかを決定する権利でもあるんですか?」


「……キングアントの甲殻はとてもいい防具になる。足も加工次第ではいい武器になるんだ。そいつがうまく市場に回るようになればこの町はさらに発展できる。それにダンジョンコアを支配下に置くのも時間の問題だ。そうすればキングアントは本当にでなくなってしまう。そうなるとどうしてもここでの武装強化はできなくなってしまうんだ。頼む」


「いや、別にここじゃなくて他の町で武装を強化すればいい話じゃないの?」


「それはそうだが、いざというときに対応できなくなってしまっては困るんだ」


「これくらいならすぐ倒せるから大丈夫だって。それにもう遅いと思うぞ」


「メイの言う通りだね。ダンジョンコアを支配下に置くのが時間の問題って言ってたけどたぶんキングアント変異種に負けるようなら無理だと思うよ」


「何が言いたいんだ?」


「これはあくまで推測だけど、このダンジョンは15層なんかでは終わらない。今のうちに高ランクの冒険者を呼んでおいたほうがいいですよ。じゃあ失礼します」


 俺たちは言いたいことを言い切って向こうには話させないようにして早足で訓練場を去った。あのままあの場にいたらむこうはどんな手を使ってでもキングアントの死体を買い取ろうとしてくる可能性もあった。


 後日聞かされたことだが、ギルドマスターにはその町周辺で出たモンスターの素材について一定の条件の下でその持ち主から強制的に買い取ることができるらしい。当然その条件は厳しいし、これまでほとんど発令された事例はない。しかし、一部のギルドマスターが研究のために、あるモンスターを買い取りまくってたこともあった。

 だが、その時は、近隣の町で流行っていた疫病を治す薬の作成のために必要だったということもあり、有益であると認められたため発令できただけだ。ちなみにその薬の発見もそのギルドマスターによるものだったりするのだが、もちろん俺たちは知る由もなかった。


 訓練所を出た俺たちは、俺とヒツギの強化のためにいったん町を出て、森に入ることにした。森でクエイク使って壁を作れば見られることはない。そのはずだ。


どうもコクトーです

体調崩して1日遅れの更新です

咳止まらない(泣)



『刈谷鳴』

職業

『ビギナーLvMAX

 格闘家 LvMAX

 冒険者 Lv49/99

 狙撃手 Lv38/50

 盗賊  Lv34/50

 剣士  Lv35/50

 武闘家 Lv31/60

 戦士  Lv33/50

 魔法使いLv40/50

 薬剤師 Lv34/60

 鬼人  Lv7/20

 ????の勇者Lv8/??

 狙撃主 Lv1/70

 獣人  Lv1/20

 狂人  Lv1/50

 魔術師 Lv1/60 』

次回はダンジョンに戻ります

あかん、この章長くなる気がしてきた…


まぁいっか



ではまた次回

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― 新着の感想 ―
今更、この小説を見つけて読んでます。 キングアントの素材を売らなかったけれど、これからの現金収入をどうするんだろう?と楽しみです。 いつでも倒せる相手なんだから値が高いうちに売っとけばとは 思うけど、…
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