キャラビーとユウカの物語です19
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
今回もキャラビー視点です。ご注意ください。
会議も終わり、その後のゴールド様、トーチ様、そしてマナ様とのお話も終わりました。
魔王軍の幹部クラスの魔人たちの襲来の時、あの渦の転移魔法によってばらばらになった『マツノキ』。情報収集を始め、まだ居場所どころか無事であることの確認すら取れていなかったのですが、今回の会議の場で思いもよらずお二人の情報を得ることができました。
『ヤカリ森国』のトップであるエンシェントエルフ様のもとで客将として戦争でも活躍したご主人様。
『ベスティア獣神国』にある『魔法学園』の本拠地で、ギルドマスターを務めるトーチ様とともに研究をしているマナ様。
お二人とも無事に生きていてくださったことはうれしいのですが、まさか国外まで飛ばされているとは思いませんでした。特にマナ様などはトーチ様とドルトムント・ベスティア・レルド国王様の会合を行っていた盗聴や転移による襲撃など様々な対象への妨害を施した会議室に直接転移してきたとのことで、なんとか説明、説得に成功したようですが即死刑でもおかしくなかったでしょう。
どこまでが本音かわかりませんがトーチ様自ら施した結界魔法をあっさりと突破してきた転移魔法に興味があったから話を聞く方向にシフトさせたとのことでした。結果的に正解だったと語っていましたが、自信満々に「私はもはや七色の魔法使いではない!」と宣言したあたり、マナ様から上位属性の魔法を習っているのでしょう。
ご主人様の暗黒魔法やマナ様の獄炎魔法の威力を見ていれば上位属性の魔法の使い手が味方に増えると言うことの心強さは計り知れません。マナ様もトーチ様との共同研究と、『魔法学園』に蓄えられていた書庫の知識も合わさって使えるようになった魔法がさらに増えたとも話していましたし、今後の戦いに向けてやる気に満ち溢れていました。
冒険者ギルドを後にした私たちは、好ましくない方々に絡まれるのを避けるため、速足でユウカ様のお屋敷に戻りました。
もともと王都にいらっしゃったというアーカイブ様を除き、招集されていたSランク冒険者の皆さまは既に転移で元の拠点に戻られているそうです。私たちも転移で戻るかと問われましたが、シーラさんたちとも話したいですし後ほどお願いすることにしました。ソロで活動されているモモ様とカラカリ様は少し違うかもしれませんが、他の方々はやはり『ベスティア獣神国』で見られていると言うスタンピードの兆候の件でしょう。
『赤の団』や『スモールブレイブ』の様に既に大々的に協力を取り付けているギルドはともかく、他のギルドの面々は正式にはスタンピードの情報が広まってはいませんでした。もちろん現地で活動しているパーティは冒険者ギルドとして注意喚起が行われていたのでしょうから完全にゼロではないと思いますが、今回の会議でアハト様が正式にSランク冒険者たちに展開した以上、この内容はいち早くギルド全体で共有しなければならないと判断したのでしょう。
冒険者ギルドとしては追加の派遣は不要と言っていましたが、各ギルドとしては何もしないわけにはいかないでしょう。『赤の団』と『スモールブレイブ』と違い、協力要請がなされていなかったのであればその地にいるメンバーでは対処は難しいと冒険者ギルドに判断されているのと同じです。全面撤退というのはギルドのメンツ的にもできないでしょうが、戦力的に未熟なメンバーだけを残していてもいたずらに被害が増えてしまう可能性はあります。人海戦術のためにもある程度の人数は必要でしょうが、それも厳しいのであれば交代要員を送って別の場所に移動させることもあり得ます。もしかしたら今後『魔法学園』経由でマナ様もそちらに協力を依頼される可能性はありそうだとユウカ様も考えておられました。
「おかえりなさいませ、ユウカ様、キャラビー様」
館につくと、門のところにはハンスさんとエスタさんのお二人が構えていました。
「うむ、門番の務めご苦労じゃ。シーラとフレッドはまだ中におるか?」
「シーラ様は執務室です。フレッドは離れでしょうから、向かうように連絡しておきます」
「頼んだのじゃ」
またみぃちゃんを見に行っていると思われるフレッドさんへの連絡を任せ、私たちは先にシーラさんの待つ執務室へ向かいました。
扉をノックして中に入ると、本棚に資料を片付けているシーラさんが待っていました。何か調べ事でしょうか?
「お疲れ様です、ユウカ様。会議はいかがでしたか?」
「とりあえずは無事に終わったよ。これという根本的な対策は難しそうという結論になったがの」
「戦争の件は私も多少は聞き及んでおりますがかのハイエルフたちでも防げないとなるとやはり厳しそうでしたか」
「まあ成果なしとは言わんよ。っと、フレッドも来たか」
連絡を受けて急いで来たようで、私たちが着いてからそれほど時間をおかずにフレッドさんも執務室へやってきました。立ったままというのもなんだということで、机を囲むようにソファに腰かけると、さっそくユウカ様が本題を切り出します。
「わしとしても予想しておらんかったが、今日の会議の場で二人に頼んでおったメイとマナの生存、そして居場所がわかったのじゃ」
「なんと。もしや今日集まられたSランク冒険者の方々のところに?」
「はい。ご主人様は『ヤカリ森国』のエンシェントエルフ様の客将として。マナ様は『魔法学園』本拠地でトーチ様の共同研究者として今は生活しているようでした。魔道具越しですがマナ様とは直接会話もできましたし、頻繁には難しくても、こちらに戻る前には連絡を入れると」
「王都でもグリムでもどちらでもよいと言ってしまっての。すまんがこちらに連絡が来たら急ぎで通達を出してほしい」
「承知しました。でしたら戻られる際に通信用の魔道具をお持ちください。フレッド、予備が倉庫にありますね?」
「先週修理に出したのもあったはずなので念のために後ほど確認します」
「頼むのじゃ。わしらは明日の午後にはグリムの町へ戻ろうと思っておる。冒険者ギルドで転移魔法使いを用意してくれとるからの」
「急、というわけでもありませんか。どうかお気をつけて」
「あと半日と少し……可能な限り目に焼き付けておかないといけませんね」
「フレッドさん……」
「おっと失礼。ユウカ様、居場所が分かり、お一方とは連絡も取れたとのことですが、残るメイ様との連絡の目途はたっておいでですか? 『ヤカリ森国』は戦争の影響もあって連絡が取りづらくなっておりますが……」
「マナとも話したのじゃがな。メイは今回の戦争で大いに活躍したそうじゃ。その報酬として何らかの手段で連絡が来る可能性が高い。悩ましいところではあるが、わしらはグリムの町で己を鍛えて待とうと思っておる」
トーチ様にもアドバイスはいただいていましたが、マナ様を含めた3人で話し合った結果、私たちは待つことに決めました。少しでも強く、今度こそ逃がされることなくご主人様と共に戦えるように。
ユウカ様の言葉を確かめるように私に視線が向けられますが、私も覚悟を決めています。シーラさんとフレッドさんの目をしっかりと見つめ、力強くうなずきました。
どうもコクトーです。
今回もキャラビー視点のため職業レベルは無です。
新年一発目から飛ばすことなく済んで少しほっとしています。え?間に合ってないって?
キニシナイキニシナイ。
今年もこの小説で少しでも皆様に楽しんで頂ければなによりです!
ではまた次回