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キャラビーとユウカの物語です17

今回もキャラビー視点です。ご注意ください。


 映像通信の魔道具に映る『魔法学園』の一室、トーチ様の背後の壁に掛けられていたのは私たちの探し人の一人であるマナ様の着ていたローブにでした。ユウカ様も私の言葉を受けそのことに気が付き、目を見開きます。


「いやいや、さすがにそんな偶然はないじゃろう。あのタイプのローブをマナが来ておったのは間違いないが、わしの刀やメイのゴーグルみたいな品ではない。たまたま似たようなタイプの物を『魔法学園』の誰かが使っておるのじゃろうて」


 トーチ様とアハト様の話が続いていますので小声で話していますがユウカ様もどちらかというと信じられないという思いが強く表れていました。

 それというのも、以前からユウカ様はマナ様の魔法に関する能力は身内贔屓はあるかもしれませんが、この場に集まるSランク冒険者たちにも引けを取らないとおっしゃっていました。初めて見る魔法をその場で解析し、その構成を改変することで無効化する。スカイ様やドレアム様など、それぞれが得意とする属性の魔法であればある程度同じことができるでしょうが、マナ様はほぼ全ての属性でそれができる。それがどれだけ異常なことかは火を見るより明らかでしょう。


「わしにはわからんかったが、ヒツギの言い様じゃと転移魔法の渦の改変には成功しておったはずじゃ。マナがこの場にいない以上無効化はできておらんとして、おそらくいじったのは座標じゃろうな。その変えられた座標が、たまたま魔法に特化した冒険者たちの多い『魔法学園』の本拠地だったなど信じられるか?」


「ですが、マナ様であればできそうじゃないですか?」


「特定の意図した座標に変えることができていたのであればすぐ真上なり近くに転移させたはずじゃ。それができなかった以上は地中を避けたり、遥か上空といったことを避ける程度しかできんかったのじゃろう。それで国境すら超えた『魔法学園』にたどり着くなどどんな確率じゃ」


「……そうですよね。いくらなんでもそんな都合がいい状況ないですよね」


「まああれを見たらそう思ってしまうのも無理はない。わしだって……」


 言いかけたユウカ様が固まりました。その視線の先はトーチ様の映る映像。私たちが話している間にも会話は進んでおり、今はトーチ様がいる部屋の話になっているようでした。


『そうそう。私の研究室だから今は私の他には一人だけだよー。今はまだうちの子じゃないんだけど共同研究者ってやつかな。もしかして映っちゃってた?』


「ばっちりな。なんか転びそうだったが大丈夫か?」


『どう? ……うん大丈夫そうちょっと大事な会議だから離れててね。マナ(・・)ちゃんも参加する? あ、しないか。それじゃあさっきの結果まとめておいてくれる? あ、うん。ありがと。お願いねー』


「部外者なら部屋から出てもらった方がいいんじゃないかい? というか君の自室に『魔法学園』でもない人物を入れるなんて珍しいね」


『うちにおいでって毎日言ってるんだけど首を縦に振ってくれなくてね……。あ、ユウカさんいるよね? マナちゃん『魔法学園』にくれない? もう幹部連中全員納得させたから後は本人だけなんだけど』


「トーチ殿、個人的な話は後にしてくれ。ここの会議室と魔道具はそのままにしてやるから」


「う、うむ頼むのじゃ」


「それなら僕もいいかな? ユウカさんのところの彼とうちのパーティがもめてしまったみたいでね。正式に謝罪しておきたいんだ」


「む、わか、わかったのじゃ。とりあえずは会議を始めようではないか」


 トーチ様、そしてゴールド様が何気なく話すその内容を理解するのに私もユウカ様も時間が必要でした。私に向かってないないと言っていたのに映像にさらりと映ってしまったのだろうマナ様を見て頭を整理している最中にトーチ様から追い打ちの様に話しかけられ、その衝撃が覚めぬ中で飛び出したゴールド様からの情報。その三コンボに普段のユウカ様からは信じられないような動揺が見て取れました。


 周りの方々もユウカ様の様子におかしな点を感じてはいるようでしたが、今はそれをつめる場合ではないとアハト様を中心に今回の議題へと話を進めていかれました。


「キャラビー、疑ってすまんかったの」


「大丈夫です。でもマナ様とご主人様、二人共の情報がでるなんて」


「思わぬ収穫じゃったな。会議が終わったら二人でゴールドらをつめるぞ」


 手元の資料を示しながら、『ヤカリ森国』で発生した戦争の内容を説明し始めたアハト様をよそに、私たちはふってわいた探し人の情報に心を躍らせるのでした。





「……と、これくらいか? やっぱりお前たちから見ても最重要事項としてはこの転移の基盤を作らせないってところに尽きるか」


 本格的に会議が始まって二時間が経過しました。

 アハト様の読み上げる資料と、実際に現場を経験したクリステラ卿の説明の合間合間で交わされる意見は各々の得意分野の観点から発想を得た物が多かったのですが、やはり一番の肝となるのは共通していました。


 エルフたちの総力を挙げた調査と、『青き空』の情報提供から始まった戦後処理。転移の起点とするための特殊な加工を施された宝石探しです。


 たった一日で攻め込んできた大量の魔王軍を殲滅したこの戦争。戦闘行為自体は『ヤカリ森国』のトップであるエンシェントエルフ様が派遣した客将の冒険者の働きが非常に大きく、指揮官クラスと考えられたの四体と二人の魔人。それらはドレアム様をして完璧な制御は無理だと言い切られた危険なモンスター、グレイブキングエレファントを除き、すべてがその冒険者によって倒されたとのことで、皆様もそこまで効果的な対策として思い浮かぶ物はないようでした。戦略として対多数の足止めで使えそうな物がいくつか出たくらいですね。

 一方で『ヤカリ森国』のある指揮官の冒険者蔑視、あるいはエルフ至上主義とでも言える思想による問題があったようです。しかし、それも正式に国から冒険者ギルドと参加した冒険者たちに謝罪が行われて解決しているとのことなのでここでは大きく取り上げられませんでした。

 冒険者ではあるものの、国のトップの客将としての参加ということで資料上は名前は伏せられていましたが、ゴールド様の話より、生きて『ヤカリ森国』にたどり着いたのは間違いなく、人がドラゴンに変化して敵を殲滅したなど、語られた特徴を考えるとその冒険者とはおそらくご主人様でしょう。さすがご主人様です!


「転移を防ぐためとなるとやはり結界が一番だが、コスト面を考えると厳しいか。王都クラスの結界を国全体に広げるなんて無理だしな……。よし、今日皆に出してもらった意見はギルドがまとめ、責任をもって各国に共有させてもらう。協力に感謝する!」


 もうこれ以上はないなと確認をとり、各人から出された意見を書き記した用紙を改めて見直したアハト様が会議の終了を宣言しました。私たちにはこれから各国に渡されたこの情報が対魔王軍の対策として何らかの役に立ってくれることを祈るしかできません。



 そして用事が済んだ方々が退席されていった後、残った私たちはまずはゴールド様に話を聞くことにしました。

どうもコクトーです。


今回もキャラビー視点のため職業レベルは無です。

今年も残すは1週間ちょっと! あと年内に1話は書き上げたいと思います。

29になるか30になるか…


ではまた次回

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