キャラビーとユウカの物語です12
今回もキャラビー視点です。ご注意ください。
休憩を挟みつつ数度の転移を繰り返し、私たちは王都に到着しました。本来の想定よりもみぃちゃん1体分転移対象が増えたことで休憩のたびに魔力回復ポーションを飲んでいた転移魔法使いの顔は真っ青になっています。最後の方なんてもはや吐き出さないように口元に手をあてながら詠唱していたほど。おそらく彼女のように各地にいるSランク冒険者たちを王都に転移で連れてくる役目を任された各地で同じように頑張っているのでしょう。しかし残念ながら魔力の急激な減少と回復を繰り返した結果、体調不良で倒れてしまいました。ここまでギリギリのところで耐えていたのでしょう。ありがとうございました。
私たちが転移してきたのは王都の外れにある騎士の詰所でした。王都の中に直接転移してくる以上はしょうがないのでしょうが、やってきた瞬間に周りを大勢の騎士に囲まれていると言うのは私の立場からすると非常に怖い物を感じます。
みぃちゃんに体を寄せられながら、私は無意識に目の前のユウカ様の袖をつかんでしまっていましたが、警戒していた騎士たちもやってきた面々を見て警戒を解いてギルド職員と話を始めました。王都への入場手続きについてですね。
ギルド職員との会話が一区切りし、騎士の方がユウカ様にギルドカードの提示を求めました。ユウカ様がそれに応えるとすぐに私たちは詰所から解放されました。
「すぐにギルドに向かえばよいかの?」
騎士の方に体調不良で倒れた転移魔法使いの看病をお願いしていたギルド職員の方も詰所から出てくるのを待ち、ユウカ様が今後のことを尋ねました。
「連絡がつくようにだけしていただきたいですが、すぐには大丈夫です。もしかしたらグリムに滞在している間に揃っている可能性はありますが、我々が把握している限りまだそろっておりませんので。それにそちらの従魔を冒険者ギルドに置いておくわけにもいかないでしょうから」
「がぅ」
「さすがにみぃちゃんであれば大丈夫な気もするが、念には念を入れてということかの」
「タイガー系のモンスターはそこまで多いわけではないですが、四足の獣型と考えると比較的メジャーな部類です。ウルフの方が該当するかもしれませんが、森や山、草原でも多くみられる分その被害も多い。近しい人物を失ったことがある冒険者も多いのもあって感情の制御ができなくなるというケースが多いという事情もあります」
「それで他人の物に手を出すというのは迷惑にもほどがあるが仕方ないのかの。まあ手を出される側からしたらたまったものではないが」
「ははは……。ユウカ様は例のお屋敷に滞在されますよね?」
「そのつもりじゃ。皆が揃えば屋敷に連絡をくれ」
「かしこまりました。それでは我々はギルドへ。失礼します」
ギルド職員のお二人は一礼するとそのまま冒険者ギルドへ向かっていきました。
そもそもが町の外れにある騎士団の詰所のすぐそばということもあってそれほど人はいませんがそれでもユウカ様は王都では他の町よりも余計に有名人ですから、既に「あれってユウカ様じゃないか?」と言った声が町の人から上がっているのが聞こえます。
「ま、わしらも屋敷に向かおうかの。いきなり来たら驚くやもしれんが、まあ大丈夫じゃろう」
「はい」
あまり目立ちすぎるのもよくないと、私たちは少し速足でユウカ様の所有するお屋敷へ向かいました。
「おおユウカ様、連絡をいただければ全員でお迎えしたものを」
「急な用事じゃったからの。そのまま転移でやってきたから連絡を入れる暇もなかったのじゃ」
ユウカ様所有のお屋敷にきた私たちは、すぐに門前で警護していた男女の騎士に出迎えられました。途中から急ぐためにみぃちゃんに跨った私に軽く警戒の視線を向けた後はすぐにユウカ様の方に意識を戻します。今のうちに降りておきましょう。
「王都で会議の予定が入った。数日ないし一~二週間程世話になりたいが大丈夫かの?」
「なるほど。こちらのお屋敷はそもそもユウカ様の物。問題なぞあろうはずがございません。ハンス、シーラ様に連絡を。ついでに庭師のフレアも呼んできて。ユウカ様の案内をお願いしちゃいましょう」
「了解した。ユウカ様、我々がご案内したいところですがハンナと揃って門前を離れるわけにもいかず。フレアを呼んできますので少々お待ちを」
ハンスと呼ばれた男騎士の方が綺麗に整えられた花々の咲き乱れる庭に走っていきました。
「別に案内なぞなくとも構わんぞ? シーラなら執務室じゃろ?」
「最近はそうでもないのです。ユウカ様が王国騎士団訓練所所長の職を辞して冒険者に戻られ、王都からも離れられてからは書類仕事も減る一方でしたし、人手も少なくなりましたからね。お屋敷の管理者として様々なところで働いておられます」
「あやつももう歳なのじゃからゆっくりすればよいじゃろうに……」
「はっはっは、ユウカ様のためを思えばこそ。あの方まだまだ元気いっぱいですよ。私たちの訓練に顔を出すこともあるくらいです」
「言っても無駄かもしれんが、シーラの腰に気をつけさせよ。ぎっくり腰はつらいと聞く」
「心得ました。次の時にユウカ様からの厳命だと伝えておきます」
「そこまでしっかりせんでよいわ。お、フレアがやってきたみたいじゃの」
女騎士、ハンナさんと話していると、庭の奥から大柄な男性を連れてハンスさんが戻ってきました。
「フレア、久しいの。元気にしておったか?」
「これはこれはユウカ様。お久しゅうございます。このフレア、体の丈夫さには自身がありますからな!」
フレアさんは豪快に笑いながらどんと胸を叩いて応えました。その装いこそどこからどう見ても庭師ですが、その肉体は筋骨隆々で、2mを超える身長も相まって彼こそが騎士だと言われても違和感はありません。
「そちらは従者ですかな? 噂に聞く例のこぞ……御仁はいないようですが」
「今のわしの仲間じゃ。訳あって奴隷の身分じゃが、奴隷として扱うことは許さんからの」
「これは失礼しました。ではあなたがキャラビー殿ですな。いつもユウカ様が世話になっています」
「い、いえ、私こそユウカ様にお世話になりっぱなしで」
「そうかしこまりなさるな。ユウカ様のお仲間とあれば我ら一同敬意を尽くして当然です。滞在の間ごゆるりとお過ごしください」
「キャラビーにはいつも世話になっておるよ。そろそろシーラに連絡もついた頃かの? 客間で待っておればよいじゃろ。あまりここでじっとしておるのもよからぬ面倒事を引き込みかねんし」
「そのような輩は我々が通しませんのでご安心を。そちらの従魔は離れでよろしいですか?」
「さすがに庭に解き放つわけにもいかんからの」
「がう」
すまないと頭を撫でるユウカ様にみぃちゃんは問題ないと返しました。シーラさんに連絡に行ったハンスさんが戻ってくるまでは玄関前で待機してもらうことになったみぃちゃんを残し、私たちはお屋敷の中へ入っていきました。
どうもコクトーです。
今回もキャラビー視点のため職業レベルは無です。
先週はすみませんでした。残念ながら阪神の下克上は失敗してしまいましたね…。
藤川新監督の元来年も応援していきます! 球団はまずは大山さん引き留めから…お願いします!
ではまた次回