キャラビーとユウカの物語です10
今回もキャラビー視点です。ご注意ください。
ユウカ様のお手本戦闘は5分とかからずに終了しました。ただ、そのお手本はとてもではないですがまねできるものではありませんでした。
手にした刀を振るう度に斬撃が飛んで走り回るウルフ系のモンスターたちが切り裂かれ、爪に炎を灯して迎え撃とうとした真レオウルフキングもその爪があっさりと断ち切られていました。私との戦いのときは運よく使われなかった影の召喚も行ってきましたがそれすらも問答無用で切り伏せ、遠距離から放たれる魔法攻撃すらも斬撃ですべて切り落とされ、一匹、一発たりとも私たちのところに到達することなく斬撃の嵐に呑まれて消えていきました。
戦闘を終えたユウカ様は「どうじゃかっこよかったであろう?」とすっきりしたような表情を浮かべて奥の部屋に向かっていきました。私は出現した宝箱の中身を回収してからユウカ様の後を追います。残念ながら今度は武具ではなくお肉でしたので今夜の晩御飯にしてしまいましょう。みぃちゃんの恨めしそうな視線をスルーして進んでいきました。ユウカ様もしかして私の戦闘が退屈で暇だったんでしょうか?
真レオウルフキングとのタイマンという過酷な戦闘訓練から数日、私はユウカ様からのお言葉もあり少し訓練の強度を落としていました。強度を落とすとは言っても怪我も気にせずに黙々と続けるということはなくなったというだけではありますが少し余裕を持たせたという感じですね。
もともとユウカ様あの訓練を実施しようと考えたのは私の訓練の様子に焦りを感じたからというのが大きかったようです。私が普段訓練で相手をしているのはユウカ様か従魔達でしたので勝つと言うことができずにいました。従魔達を相手にして善戦はできても勝利までたどり着くことはありません。特殊ルールで勝つことは0ではありませんでしたが。
ユウカ様がおっしゃるには負け続けると言うのは自分が思っている以上に焦りを生むとのことでした。私自身そのつもりはなくてもユウカ様の目にはその様子が見られたとのことです。確実に強くなっているのは間違いない。でもそれがどれくらいなのかわからない状況により、さらなる強さを求めて訓練を厳しくし、自身のダメージを鑑みなくなってしまう。そして怪我を負ったまま戦闘に出てしまってそのまま死んでしまったり、後遺症が残ってしまうほどのダメージを負ってしまうことがあるとのことです。
私の場合は訓練による疲れやダメージが残らないようにしっかりとその『瞳』で見ていただいていたこともあってそんな状態になることはありませんでしたが、私もそうなってしまう可能性はあったということでしょう。
他の問題点として、自身の実力の過剰なまでの過小評価というのもあるみたいです。過大評価が身を滅ぼすというのは間違いないことですが、過小評価もまた咄嗟の時に自分にはできるわけがないと動きを制限してしまう危険性があるとユウカ様は語っていました。
ユウカ様の見立てでは今の私であれば真レオウルフキングと真正面から相対しても問題なく倒すことができるという思いがあったようです。だからこそ逃げ場も遮蔽物もないあの状況を作り上げたのだとか。そんな状況で私はと言うとまずは相手の魔力の消耗を図り、続いて足を傷つけて機動力を奪って少しずつ隙を伺うと言う作戦をとりました。傷つかないで戦うという意味合いでは間違ってないとの言葉はいただきましたが、途中で見せたあの足を切り落とした攻撃。あれができるだけの能力が身についているのだから自信を持って迎え撃てばよかったと言われました。
ご主人様がいなくなり、ユウカ様に師事して一緒に鍛え始めて、その結果は間違いなく出ている。
私は強くなっている。
その感覚は間違いなく私に余裕を与えました。とは言ってもユウカ様は当然としてカルアやアンナ、みぃちゃんにも勝てません。今考えてみるとみぃちゃんも単独であのボスを討伐できるのでしょうか? いや、普通に突破しそうですね、無傷で。
今朝の鍛錬を終えてユウカ様と館に戻ってくると、館へ続く道の途中、カルアの結界の前で二人の男性が私たちを待っていました。事務員とその護衛の騎士といった様子ですが何者でしょう?
「お主ら何者じゃ? この先には町はないぞ」
「ユウカ様、お初お目にかかります。我々は冒険者ギルドから派遣されてきました。王都よりユウカ様に召集の連絡が来ております。他の方々への連絡もありますし、ギルドに来られた際に連絡をと予定していたのですがここ二日ほど来られなかったようですので……」
「ギルドに行く用事がなかったからの。先日はここの町での会議じゃったが王都まで呼び出しとは今度は何じゃ?」
「あまり詳しくはお伝え出来ませんが、『ヤカリ森国』が魔王軍による襲撃を受けたとのことです。冒険者や軍も総動員して撃退には成功したと報告も来ておりますが、Sランク冒険者の皆さまの意見を伺いたいと」
予想もしていなかった隣国である『ヤカリ森国』への魔王軍の侵攻。その言葉に私たちは招集がかけられたという話に納得し、すぐに王都に向かうべく準備のため館に急ぎました。
どうもコクトーです。
今回もキャラビー視点のため職業レベルは無です。
まだまだセリーグは楽しめそうですね!阪神怒涛の追い上げ最高やー!
ではまた次回