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キャラビーとユウカの物語です9

今回もキャラビー視点です。ご注意ください。


 前足を片方失い、どくどくと血が流れて草原を赤く染める中、真レオウルフキングは周囲にダークボールを浮かべました。強力な機動力を失ったことで再度魔法での攻撃に切り替えたのかと思いましたが、浮かべたダークボールを飛ばすのと同時に残った足を踏みしめてこちらに噛みつきに来ました。


「『クエイク』発動!」


 ご主人様から与えられた魔導書を使い目の前の地面に土の壁を作り上げて牙を剥き出しに襲ってきた真レオウルフキングを迎え撃ちます。相手が死角にならないように作り上げた壁から素早く外れ、先ほど吐き出された短剣を拾いに行きました。

 一飲みにしようと地面を蹴っていた真レオウルフキングが突然生まれた土の壁に噛みつき、追いつくように土壁を捉えたダークボールによって崩れた土に埋もれました。視線を切らないようにしながら短剣の元までたどり着きましたが、真レオウルフキングの血と体液にまみれてしまっておりすぐに使えるような状態ではなさそうでした。すっぽ抜けないように軽く振るって液体を飛ばそうと試みましたがやはりだめですね。受けるにしても攻めるにしても滑る危険を考えるとこの戦闘中の再利用は難しそうなので魔導書と共に魔法袋にしまい、代わりのナイフを取り出しました。


「バラァウ」


 口の中に入った土をぺっぺっと吐き出しながらこちらにダークボールを放ってきました。多少なりとも壁に突っ込んだことでダメージは増えているでしょうが所詮は土壁ですし大したことはないでしょう。

 距離を変えずに横に移動してダークボールを躱しながら走る最中、切り落とした前足から流れる血はやや最初の頃と比べて勢いがなくなっていることに気が付きました。既にかなりの量が流れているのでそれで減っているのか、真レオウルフキングの高ランクならではの回復能力の高さから傷が塞がっているからなのかはわかりませんね。それでも真レオウルフキングがなくなった足が生えてくるほどの再生能力を持っているという話は聞きません。考察が前者ならいいですが後者であればそのうち完全に塞がって私の勝ち目はなくなるでしょう。片足がないので小回りは効きませんが、それでも動くことはできるというのは先ほどの噛みつきが証明済みですから。


「いきます」


 ダークボールを横移動で躱していた状態から進む方向を変え、真レオウルフキングに向かうように走りました。私の方から向かってくるのをチャンスと見てなのか、真レオウルフキングは重心を後ろに据え、迎え撃つように前足を上げます。

 器用に後ろ脚で直立しながら横向きに振るわれた爪をスライディングで体を低くして躱すと、すぐに上から牙が迫ってきました。腕を支えに横向きに飛んで躱すと地面が大きくえぐれます。土が口の中に入ろうがお構いなしに真レオウルフキングは連続して噛みつきにきました。四つ足で踏ん張りながらの時よりもそのスピードは遅いので躱すのは余裕ですが、私が受けられるような威力ではありません。


「『クイックスロー』」


 噛みつきに合わせて再びナイフを投げます。さすがに二度は受けないと顔を背けたため頬をかすめるだけになりましたが、それによりできた死角に潜り込みました。


「『パワースラッシュ』」


 跳ね上がる勢いを利用して無防備に空いた首を下から切り上げます。魔力の残量の関係で刀身を伸ばすことができずに首を断つことはできませんが威力重視の切り上げはなんとか肉体に負けずに最後まで振りぬくことには成功しました。


「きゃっ!」


 勝ったと油断してしまった私を諫めるかのように硬直はしなかったものの空中で動きの止まった私に裏拳をかますように真レオウルフキングの足が直撃しました。地面を数度バウンドして風の結界の側まで飛ばされてしまいます。

 まともに受けてしまった衝撃で息がうまくできない状態でも骨折はしていない。火魔法で強化されていたことによる熱さによる痛みで手が震えてしまいますが動けないほどではありません。歯を食いしばって体を起こし、次なる攻撃に備えて真レオウルフキングをにらみつけるも、私の攻撃はきちんとその命に届いていたようで力なく巨体が倒れました。そして十秒もたたないうちにその姿が消えました。私の勝利です。


「お疲れ様じゃの。最後ちと危なかったが無事今日の試験クリアじゃ。お主は間違いなく強くなっておる。取り巻きの邪魔がないとはいえ『生の草原(ここ)』のボスを一人で踏破できる冒険者はこの町でもそれほど多くはないぞ? とりあえず後片付けはわしがしておくからみぃちゃんの背でゆっくり休むとよい」


 風の結界も消え、素早く駆け寄ってきたみぃちゃんに咥えられてその背に乗せられました。ユウカ様が優しく頭を撫でながら回復魔法をかけてくださり、たくさん食べたとわかる程度にお腹が膨れて上機嫌なカルアは回復薬を渡してくれます。後でダイエットが必要でしょうか。


「お、宝箱が出たようじゃな。中身を回収して入り口に戻るとするかの」


 戦闘エリアの中央に現れた宝箱の方に向かうユウカ様を見ながら私はみぃちゃんに奥に連れていかれました。

 奥の部屋にやってきてユウカ様を待っているとそれほどかからずにやってこられました。その手には短剣が握られています。


「宝箱の中身は短剣だったようじゃ。運がいいの」


「私が使用してもよろしいのですか?」


「お主が倒した相手から得られた物じゃろうて。魔剣というわけではないが鋼でできたいい短剣じゃ。まだ袋には余裕があるな?」


「はい。大丈夫です」


 ユウカ様に渡された鋼の短剣を魔法袋にしまいます。それを見届けるとユウカ様はついてこいと50層の入り口に向かう転移陣に向かいました。


 50層に戻ってきて、他のパーティの方々がボスに挑むのをみぃちゃんを椅子代わりにしながら見学して休憩していました。私たちの順番がやってきましたが先ほどと同じような戦いができるほどの回復とまではいけませんでした。


「安心するのじゃ。次はわしが一人で片付ける。みぃちゃん、カルアよ。キャラビーを守ってくれよ?」


「くわー」


「がう」


 みぃちゃんが私を背に乗せなおし、私の前にカルアも座りました。そして刀を構えてボスエリアに向かうユウカ様の後ろをついて行きました。




どうもコクトーです。


今回もキャラビー視点なので職業レベルは無しです。

体調崩したり夜勤だったりと2週ほど開けてしまいすみませんでした。

9月は夜勤が多いのでマジで体調に気をつけねば…


ではまた次回

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