キャラビーとユウカの物語です3
今回もキャラビー視点です。ご注意ください
4名のSランク冒険者とグリムの町の領主、そして冒険者ギルドのギルドマスター2名による秘密会談が始まりました。
正直なところ私は場違いにも程かあるのですが周りに控える方々は慣れているのでしょうか?
「ユウカならわかっていると思うが、ここにいる面々は先日の魔王及びその幹部たちの襲来の件を知り、残念ながら失敗に終わったがその討伐作戦に参加していた。ある程度はカラスを通じてあの場で起きたことを理解している奴らだと言うことを前提に置いた上で、実際にその場で戦闘を行っていたお前さんに話を聞きたい」
アハト様の問いかけに対し、ユウカ様は考える素振りを見せた後で口を開きました。
「聞きたいも何も、まず何をどこまで知っておるのか説明してくれんか? まずどのタイミングから見ておったのじゃ?」
「その意図はなんだい? 別に初めから説明してくれていいんだけど」
「初めからと言われても朝起きたところからというわけではないじゃろう?」
「あの広場にいったところからでいいんじゃないかい? と言っても鍛錬とかそういう話だろうけど」
「あの広場ができた経緯も気になるところではありますけどね。ある日急に町のすぐ近くの森の中に広場が出来上がったと聞いた時の領主の感想教えてあげましょうか?」
「メイのやつのしでかしたことじゃ。わしには関係ないじゃろうて」
「いや、お宅のところのメンバーでしょ? なら無関係ってのは寂しーんじゃない?」
「そうは言ってものう、わしがあやつらの屋敷で世話になるよりも前の話じゃぞ? 全くの無関係な頃のやらかしの話をされても困るのじゃ。というかその頃なら別にそう有名でもないただの冒険者じゃ。普通に聞き取りに行っておけばよかったじゃろうに」
「まさかそんなすぐにユウカさんみたいに手出しの難しくなるような人物とコンタクトをとるなんて思ってもいませんでしたから」
「グリム卿何をするつもりだったんです? あまり冒険者においたをするようであれば我が教会を撤退させますよ?」
「それは町だけじゃなく冒険者ギルドも困るからやめてくれ。というか町の外なんだからそんな無茶なこともできん。森の奥に広場ができたところでクレームが入るようなこともねーだろ」
「一応木こりからは森で異変が起きているという話は上がっていましたよ」
「その広場ができた時の魔法の余波で森の生き物たちの生態系がずれたというわけかい?」
「そこまでは言ってないけどウルフやベアなんかの森で見かけていたようなモンスターたちを見なくなったと言っていたね。その代わりアントを見かけるようになったと」
「アンナの配下のモンスターたちじゃろうな。館の裏に作った畑を荒らされたとかで狩りに力を入れるとか言っておったのじゃ。じゃが、あれらは襲われん限りは手を出すことはせんように厳命されておるから人を襲うようなことはせんはずじゃが?」
「異変として報告が上がったというだけで別にアントたちに襲われたという話は自分も聞いていませんよ。むしろモンスターに襲われていたところを助けられたという話もあるくらいです。人によってはアントたちの見極めができるレベルで仲良くなったという話も」
「随分とすごい木こりがいたもんだね」
「アント種はかなり種類の多いモンスターではあるけど……」
「いや、種類をというわけではなく個体を判別していると」
「そのようなことわしらでもできんぞ!?」
「いやそれはそれでどうなんだ?」
「アンナの主はメイであり、今は後ろにおるキャラビーじゃからの。わしが覚える必要はないのじゃ」
ユウカ様に指差され、この場にいるほとんどのメンバーの視線が私に向きました。
「私も種類の把握はしてますがすべての個体の判別までは……。従魔として契約しているのはアントたちの中でもアンナだけですので、アンナに教えてもらわない限りはわかりません。今朝の時点では473匹が森に展開中と聞いていますが、今も増えている可能性はありますので」
「400匹となるとなかなかダンジョンでも見ない数ね。私のアンデッド軍団と戦わせてみたいわ」
「姉様、そんな街の側で暴れさせたら今度も出禁になっちゃうわよ?」
「それは困るわね。今の話は無しで」
「僕なら空から絨毯爆撃でもするところだけど遠距離専門のアントもいるのかい?」
「私としては回復魔法を使えるアントがいるかどうかが気になりますね。もしいるのであれば『白の御旗』に一体寄付しませんか?」
皆様好き勝手にアンナが従える色んな種類のアントたちの話を始める中、アハト様がパンと手を打って皆様の話を止めました。そしてユウカ様に話を促します。
「お前ら脱線が過ぎるぞ。ユウカ、あの広場に向かったところからでいい。話してくれ」
「了解したのじゃ。もともとあの日は館でちょっとした宴をしておったのじゃが、そこでアンナが配下のアントたちがやられているとメイへ報告を入れての。それを迎え撃つためにあの広場に向かったのじゃ」
「そいつが魔王軍だったってことか?」
「コボルト、ウルフ、オーガの異常種じゃ。魔王の配下の者たちだったそうじゃ。アントの上位種たちを軽くのしてしまうような者たちで、そこらの冒険者よりも強かったぞ」
「オーガはわかりますがウルフとコボルトも?」
「うむ。そやつらを倒した後にやってきた魔王の言葉を信じるのであれば魔王が直々に育てたモンスターたちだったようじゃな」
「普通なら雑魚に分類されるようなモンスターたちを進化もさせずにそこまで鍛えたってか? 意味が分からんな」
「うーん、考えられるのは上位種じゃないってことで油断を誘うことができるかもってところかな? ちゃんと実力を量れる実力者ならともかく、通常種と侮って痛い目を見る人もいるだろうし」
「それらの死体は残っていないの? 情報を抜いてみるけど」
「その後の戦闘の余波か、お主らの攻撃かはわからんが完全に消し飛んでおったはずじゃ。キャラビー、アンナから回収したという話は聞いておらんな?」
「はい。特に何かが残っていたという話は聞いていません」
「あれだけ派手にぶっ放せば仕方ないか。僕一人だけの攻撃でも消し飛ぶような一撃、それが3回も放たれればね」
「広場は既にアンナの配下が戻しておるからの。話を戻すが、3体を倒したところで現れた男女のうちの男の方が魔王、マモルと名乗っておったのじゃ」
「名前としてはそれほど珍しいってわけでもねえか? 名前から絞り込むのは無理か」
「じゃろうな。そして女の方、そやつが渦をモチーフにした転移魔法使いでの。他の幹部連中を呼び寄せたのじゃ」
「ユウカ様が抑え込まれてたっていう龍人もですか?」
「うむ。憤怒、あるいはオルスと呼ばれておったな」
「そういえば以前『レーザー』をやったやつがそういう名だったか。他のメンバーは?」
「渦使いが色欲、仮面をつけた男が怠惰。あとは勇者のパーティにおったサラ・ファルシマー、あやつは強欲と呼ばれておった」
「サラさんが? まさか彼女が……」
「魔王の狂信者と言っておったよ。そしてあの場には連れてきておらんかったが、天上院古里、あやつを傲慢として覚醒させるのがそもそもの目的で、『力』に目覚めておると」
ユウカ様がさも普通かのように話したその言葉は、既に知っていた私を除く全員を驚愕させたのでした。
どうもコクトーです。
先々週は普通に書ききれず、先週は自分が執筆に使っている小説サイト「ハーメルン」様がやられてしまうというまさかの事態がありました。無事復活してよかったです!
ではまた次回