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転移の日へです4


 お土産として渡すつもりで持ってきたカピチュをつまみながら、俺はエルメラさんの説得を行った。一冒険者としては凄腕の鍛冶師が、自身が拠点としている町にやってきて工房を構えることになると言うのは歓迎できることだ。

 しかし、ことエルメラさんに至ってはそう簡単な話ではない。里のピンチを救ってくれた相手という理由が大元にはあったとは言え、彼女はこの里が。もっと言ってしまえば『ヤカリ森国』が抱え込んでいる凄腕の鍛冶師だ。そんな彼女が拠点を国外に移しますと急に言い出してはいそうですかと認められるようなことはおそらくないだろう。

 『ベスティア獣神国』には『魔法学園』のトーチ・マツアキや『赤の団』のリエーフ・ベスティア・レルド。『デルフィナ』にはユウカやセンガ・カミイズミがいるように、国は一級戦力として優れた冒険者に自国へいてもらうべく抱え込みを図る。その一方で、その優れた冒険者をさらに活躍させ、一線級には一歩劣るはずの兵士たちすら一線級へ引き上げるような優れた武器防具を提供できる技術者もまた国からしたら抱え込んでおきたい存在であることは間違いない。ある意味では彼女はその抱え込まれた優れた技術者の一人だ。俺は知らなかったが『ヤカリ森国』に凄腕の鍛冶師であるエルメラさんがいることはかなり有名らしい。そんな人物がある日急に別の国に拠点を移したなんてことが起きたら一般人からしたら『ヤカリ森国』がやばいのではないか? と不信感を持つことは間違いないだろう。

 実際にはただの龍狂いが大量の龍素材目当てに俺という上客(エサ)を逃さないように追いかけようとしただけではあるが、ただでさえ『アーディア』から攻め込まれたと言う情報が出回ったばかりなのだ。『彼女ほどの鍛冶師が今の拠点を手放す決断をしなければならないほどに『ヤカリ森国』の国防に不安があるのではないか』などと思われてしまうことになりかねない。そんなのは俺としても願い下げだ。


 もう一つ懸念点は転移先がグリムの町ではなくミラの町であることだ。

 この里にも超級の龍である守護龍様がいるが、周囲を囲う森の結界とエンシェントエルフ様の結界に阻まれており、転移でしか中に入ることができない以上、『チンロン』の龍たちを除けば守護龍様に近づけるのはエンシェントエルフ様だけ。一方でミラの町には隠居した風龍様に加えて水龍様、火龍様、土龍様とそこらの野生の龍とは比べ物にならないレベルの龍が4体もいる。新しき長となった風竜も龍に一歩及ばないがなかなかの腕を持っているとのことだし、そもそもそう遠くない距離には大量のドラゴンや竜の住まう山まである。エルメラさんがそんなミラの町(パラダイス)を知らないとは思わないが、あそこを訪れて何も起こさないという保証はない。まして転移していく時には4龍そろい踏みになることがわかっているし、その状況下で暴走したエルメラさんを止められる自信はないのだ。



 結局頭の中で完全に俺の旅立ちについてくる気満々だったエルメラさんを必死に説得すること30分。終始何言ってるんだこいつは? と言いたげな表情で「だってまだ見ぬ龍素材があるんだよ?」とか「だけどそこにはまだ見ぬ龍素材があるんでしょ?」とか「そんなこと言ったってまだ見ぬ龍素材が私を待ってるんだよ!?」といった言葉の頭が変わっただけで、中身の変わらない言い訳を延々とするだけの彼女に非常に苦労させられた。だが最後には説得に応じてついてくるのは諦めてくれた。

 しかし、残念ながら俺の巧みな話術に乗せられてとかそういうことではない。数多くの冒険者、そして時には王族貴族とも交渉し続けてきたエルメラさんに俺程度が勝てるはずもなく、むしろ何度となく危うく負けそうになるとことだった。しかしある条件をのむことでエルメラさんがグリムの町に向かうことをいったん諦めさせることには成功した。


「それじゃあ森に行こうか! さすがにこの工房であんな大きくなられたら壊れちゃうからね。ふひひ」


「その笑い方やめません? あと、多少触るのはいいですけど鱗剥いだり爪切り落としたりはほんとに無しですからね」


「いやーごめんごめん。ついあふれる妄想が止まらなくなっちゃって」


 エルメラさんが俺の移動についてくるのを諦める条件、それは我が身を犠牲にしたものだった。『龍化』した状態で、鱗や爪の採集、採血などは禁止した上でエルメラさんの好きなようにさせるというもの。不安がないと言えば嘘になるが、黄龍やゼルセとのあれこれを見てきた感じなら約束事はきっちりと守ってくれていた。いくら龍と言えど目の前でただの人から変身する姿を見てそこまで無茶なことはしてこないだろう。


「ほらほらハリーハリーハリー!」


 ついには我慢できずに俺の腕を掴み、思わずオーガを思わせるようなパワーで引っ張りだしたエルメラさんについて俺は森に出るべく里の出入り口に向かった。



 

 結果として森の中での『龍化』とはいかなかった。

 ひどく興奮した様子で俺を引っ張って里の外に出ていこうとするエルメラさんは門番に止められた。いくら知っている人間であっても、あれでは客観的に見たら変質者にしか見えなかったからな。


 俺も押し切られて感覚がマヒしていたが里の外の森の中ではあってもさすがにいきなり龍が現れると言うのはあまりにも状況的に拙かった。普通に戦争の場から逃げ延びたモンスターが里のすぐ側に現れたかと思われても仕方がない。せっかく戦争が終わったというのに住民を不安にさせるようなことはしないでくれと頼みこまれたらさすがのエルメラさんも引かざるをえないか。

 門番が知っているかどうかはともかくとして今の俺の『龍化』のサイズでは頭が森の木々よりも上に出る。それは外に出ている冒険者たちはもちろん、里の中の住民たちにも見えてしまうだろう。騎士たちならともかく住民となると俺が龍になることができるのを知っているのはきっといない。騎士たちがどれだけ説得しようともその龍になった本人は明日にはここからいなくなっており証明も難しいだろう。それで不安がらせるなというのは無理だな。そもそも人が龍になるなんて普通ならありえない話だし。

 しかしそれでは収まらないとエルメラさんの説得によって騎士団の訓練所をお借りすることになった。騎士の立会いの下という条件付きにはなったが森の中にいきなり現れるより騎士たちの監視の下であれば住民も安心できるだろうという話だ。



 屋外にある騎士の訓練所で場所を開けてもらい、俺はその中央で『龍化』を使った。

 エルメラさんに加えて訓練をしていた騎士たちの好奇の視線を浴びながら俺の体がみるみる龍に変わっていく。実際に人が龍に変わる姿を初めて見る騎士たちからも「おぉ」と驚嘆の声が漏れた。『龍化』に巻き込まれて倒れたりしないように離れていたエルメラさんも視界の端で目を輝かせているのが見えた。


「うっひょー! 龍だ、龍だ! 龍だー! もういい? もういいんだよね!?」


「ええ。でも、約束は守ってくださいよ」


「わかってるって。ナイフも注射器も全部置いてきたから大丈夫!」


 口の端から涎を垂らしながらにじり寄ってくるエルメラさんに一抹の不安を感じながらエルメラさんとの約束の時間が始まった。

どうもコクトーです。


『刈谷鳴』

職業

『最大

 ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)

 盗賊  (50) 剣士 (50) 戦士 (50)

 魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)

 冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)

 狂人  (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)

 神官  (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)

 龍人  (20) 死龍人(20) ローグ(70)

 魔導士 (90) 精霊使い(40)舞闘家(70)

有効職業

 聖魔??の勇者Lv23/?? 大鬼人 Lv26/40

 上級獣人Lv18/30   魔人  Lv15/20 

 探究者 Lv42/99   狙撃王 Lv15/90

 上級薬師Lv10/80    上級龍人Lv4/30

 死霊術師Lv24/100   アーマーナイトLv1/99

 剣闘騎士Lv1/99

非有効職業

 呪術師 Lv1/80    死龍王Lv1/30

 盗賊王Lv1/100    大魔導士Lv1/100

 上級精霊使いLv1/50』

先週はすみませんでした。体調崩して早めに寝てしまいまして…。

そして今年もプロ野球が始まりました!また阪神のことばかり呟く生活が始まる(歓喜)


ではまた次回

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