転移の日へです3
明日ここを発つ前にと俺は朝から挨拶周りに出ていた。
宿のご主人には出る前に明日発つので今晩まで世話になると言うことは伝えてある。「今晩の料理は腕によりをかけて作らないとな!」なんて笑って言ってくれるいい人だ。おすそ分けしたドラゴンのお肉はありがたく奥さんといただくと喜んでくれたようで少し安心した。
「思ったより早かったな。フィアーから聞いているよ。彼女も中にいる」
俺が最初にやってきたのは昨日話もしたフィアーさんのいる騎士団の詰所だった。今日は森の見回りもあるから午後はいないかもしれないが午前中はいるということだったし、里長の屋敷の門番として比較的話す機会の多かったエルフの騎士もいるとのことだったからな。というか今日はこの詰所の表の見張り番だったようだ。
「どうも。話がついていると楽ですね。挨拶回りにと差し入れも持ってきたんですが、早めにこれば入れ替わりとか休憩でここに寄った人たちも食べられると思いまして」
「それはありがたいな。あそこのクッキーは俺も好きでね。後で食べさせてもらうよ」
「そうしてください。中に入っても?」
「俺はまだ離れられないからな。直接渡してくれ」
門番のOKをもらい、詰所の中に入ると声が聞こえていたのかフィアーさんが出迎えてくれた。昨日のうちにある程度話は終わっているし、他の騎士の方々にも明日里を発つという話をしてそのままクッキーの山を置いてきた。10個程度ずつ小袋に入っているからみんな休憩の時にでも取って食べてくれればいいかな。フィアーさん監修の元結構な量を買ってきたけどまあ足りなかったらその時は諦めてもらうしかない。帰り際の視界の端では二つ袋を取ろうとしてチョップされている食いしん坊が見えたがまあ表の彼が休憩に入る時までなら全然何とかなるだろう。
最後にお礼を述べて、俺は次の目的地へ歩きだした。
騎士団の詰所の次にやってきたのは冒険者ギルドだ。騎士団の詰所に寄っていたこともあって既に朝のラッシュは終わっており、ギルドの中には数人の冒険者が残っているだけだった。訓練所の方にはいるかもしれないが受付も一段落ついて順番に休憩に入っているようでちょこちょこと空きも見える。
結局どこの受付も列どころか一人の冒険者もいなかったので一番近い受付に向かった。
「メイさんですね。本日はどういった御用でしょうか?」
「どうも。明日ここを発つことになったので報告をと思いまして」
「あ……戦争も終わりましたし、もうここでの用事が済んだのですか?」
「そうですね。もともと不慮の事故で来たようなものですが思いがけずいい武器を作ってもらえました」
「エルメラさん趣味はともかく技術は間違いなく本物ですからね。気に入るものが手に入ったのであれば何よりです。報告は入れておきますね。ちなみに今日はこの後どうされるのですか? ギルドマスターは今お客様の対応中ですのでお会いになりたいのであれば待っていただくしかないのですが……」
「ギルドにはもともと報告がメインでしたから。挨拶回りをしてる最中なので、この後はクリステラ卿のところにでも行こうかと。今日って『金の軍団』の第三パーティってギルドに来ました?」
「いえ、昨日大きめの依頼から帰ってきたところでしたしお休みだと思いますよ。私の知る限りでは訓練所にも来ていなかったかと。エイザ、どう?」
「私も見てないわね。どうしてもなら暇だし訓練所見に行ってきましょうか?」
「いや、そこまではしなくていいですよ。以前聞いた拠点にしてる宿の方に行ってみます。いなかったら宿の主人にでも預けておきます」
「そうですか。承知しました。あなたのこれからの旅路がよいものであることを祈っています」
残念ながらギルドマスターと話すことはできなかったが、報告を済ませて俺は冒険者ギルドを後にした。
次に訪れたクリステラ卿の率いる『金の軍団』第三パーティが拠点としている宿だったが、他のメンバーはいても肝心のクリステラ卿は留守にしていた。受付でも話に上がっていた大きめの依頼とやらの関係で他のリーダーたちと情報共有するために出かけているそうだ。依頼にあったモンスターはきちんと始末したそうだし、その後始末のことじゃないかと話していた。彼らのパーティよりも適任な能力を持つパーティがあるらしい
まあいないものは仕方がないし、直接話すことは諦めて伝言だけお願いして土産を渡しておいた。金色ではないが、竜クラスとしてはかなり硬く盾の素材としても優秀と思われる鋼竜の鱗だ。食べ物にしても彼らの好物もわからなかったし、クッキーも騎士団の詰所で食べてもらう分しか用意できなかった。他によさそうな物も昨日は売ってなかったからな。まあこれから作ってもらうなら金だけよりも少しはエルメラさんのテンションも上がるだろうし良い物を作ってもらってくれ。
『金の軍団』への挨拶も不完全燃焼に終わったが、まあそこまで時間をかけて話そうと思うほど親しいと言うわけでもないから諦めた。これくらいの関係がちょうどいいだろう。
本日最後となる挨拶回りはエルメラさんの工房だ。そもそもが意図せずやってくることになったこの『ヤカリ森国』のエルフたちの里。ここで一番最初に出会い、命の恩人でもある彼女はエンシェントエルフ様を除けばここで一番親しくなった人物だ。そんな彼女がたまたま腕のいい鍛冶師であり、折れてしまった魔剣ステュラを生まれ変わらせることすら果たしてくれたのは本当に運がよかった。龍狂いの変態であるのは玉に瑕だがその技術力は本物で、そのおかげでこれからも戦えそうだ。
エルメラさんの工房にくるとちょうど客が帰るところだったようで入り口でほくほく顔の冒険者とすれ違った。腰に差した新品の剣を見るに自分にあった物が買えたのだろう。
「いらっしゃーせー。と、おやおやおやおや、メイさんや。どうしたの?」
客を見送って奥に戻ろうとした様子のエルメラさんが俺に気づいて戻ってきた。どこかそわそわしているように見えるのはついさっき『金の軍団』に渡した鋼竜の素材の匂いでも残っていたのだろうか。
「実はここを発つことになりまして、その前に挨拶回りに来ました」
「あー、もうそんな時期になるんだね。それで、いつ出るの?」
エルメラさんの反応は思っていた以上にあっけらかんとした感じだった。まあ彼女の元にはよそからも武器や防具を買い付けに来る人も多いのだろうしこういったことは慣れっこなのかもしれないな。
「明日です」
「え、早いよ!? もー、そんな急に言われても私まだ準備できてないよー? まったく、ホウレンソウが大事って言われなかった?」
「準備?」
「それで、何時ぐらいの馬車? 君のアイテムボックスがあるからまああらかた持っていけるだろうけどこの工房のことはどうしようかね……。しばらく閉じるとしても警備の問題がなー。今からギルドにかけあったとして依頼者すぐに出るかな?」
「すぐに今日の営業を終わらないと」と表にかけていこうとするエルメラさんの首根っこを捕まえて動きを止める。無駄に力強いなこのヤロウ。
「ぐぇっ。いきなりなにするの? まさか私に寝ないで荷物をまとめろとでも言うつもり?」
「ちょっと待て。もしかしてついてこようとしてない?」
「へ? 当たり前でしょ? まだ見ぬ龍竜ドラゴンが私を待っているんだから!」
やれやれわかってないなこいつは。と首を振るエルメラさんを前に俺の背中をすーっと汗が流れた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90) 精霊使い(40)舞闘家(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 大鬼人 Lv26/40
上級獣人Lv18/30 魔人 Lv15/20
探究者 Lv42/99 狙撃王 Lv15/90
上級薬師Lv10/80 上級龍人Lv4/30
死霊術師Lv24/100 アーマーナイトLv1/99
剣闘騎士Lv1/99
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100
上級精霊使いLv1/50』
UIが新しくなりましたね! 一点、個人的に100話分の表示の切り替えを下部だけに変えたのだけは許せないかな。なろうでの投稿をやめるつもりはないですが慣れるまで大変だろうなぁ…。
ではまた次回