転移の日へです1
再びエンシェントエルフ様の下にあるダンジョンで鍛錬の日々を送れるようになって2週間程が経過した。
戦争後しばらくは毎日のように通っていた冒険者ギルドに突然訪れなくなったことで、戦争で俺を知った冒険者たちに謎に心配されたり、エンシェントエルフ様しか使っていない隠された秘湯を使わせてもらったり、いつまでたっても続報のない守護龍様の鱗を使用した武具の製作依頼のことでしびれを切らしたエルメラさんの襲撃にあったりした。
エンシェントエルフ様も忘れたわけではなく、さすがに戦争の後始末を優先した結果後回しになったとのことだったが、再開の目途すらたてていないと言うこと伝えた時にはエルメラさんは絶望の表情を浮かべていた。魔鋼ゴーレムを1体と比較的牙の大きな鋼竜系の素材をもとに鈍器、ハンマーの作成依頼を出したら新しい竜の素材での武器製作とあって多少機嫌はよくなったがやはり守護龍様ほどの上位の龍の素材を使用した武具を作れるという期待感には勝てなかったようだ。魔剣グラウコスの出来をもって売り込みはしておいたがそもそも依頼の話が動き出さないのであればどうしようもない。俺がグリムの町に帰った後にでも始まっていくのだろう。
今日も今日とてエンシェントエルフ様の下へやってくると、ようやく俺のミラの町への転移の手続きが終わったと念話で連絡を受けた。エンシェントエルフ様から詳しい話を聞くために応接室にて二人分の飲み物と軽食を用意していると書類を手にエンシェントエルフがやってきた。
「お疲れ様です。手続きに尽力していただいてありがとうございました」
「いえ、想定外に時間がかかってしまいました。これではヒツギ様のことを知るあなたを私がこの国から出さないようにしているととられても仕方ありませんね」
国境を超えるための物、あるいいは転移に関する物なのだろう書類をこちらによこしながら席に着くエンシェントエルフ様はあれから量は減っただろうが働きづめだったため疲労の色が見えていた。それにどことなくネガティブな思考になってしまっているようだ。
「別に今はそんなことは思ってないですよ。実際何かあったんですか?」
「ミラの町にいる守護龍様の伝手に連絡を取るところまではスムーズにいったのですが、国境を越えるような転移を行うことの許可を得るのが難航してしまったのですよ。魔王軍の攻撃という最大の不慮の事故があったとはいえあなたがそもそも手続き無しでこの『ヤカリ森国』に来ていますからね。ただでさえ貴重なSランク冒険者が所属するパーティのリーダーともなれば私でも交渉が難航してしまいました」
「俺を取り込めばもれなくユウカがついてくる。だから『ヤカリ森国』が俺を誘拐したのではないか? ってことですか?」
「簡単に言ってしまえばそうですね。魔王軍の攻撃であなたを含めたパーティメンバー2名がどこかに飛ばされたと言うのはお互いが把握している事実。その上でこちらがあなたが望む『デルフィナ』への移動を補助すると言っているのだからさっさとうなずいてくれればすぐにでも終わったのですが……」
「実際問題ミラの町、いや『デルフィナ』か。向こうは何をそんなに気にしていたんですか?」
「『ヤカリ森国』が戦争状態にあったことはわかっていますし、無事撃退の形で勝利したことも理解しています。ただ、戦争状態にあった国との行き来を許可することによってスパイや残党が入り込むことを懸念しているんです。そのために国境の警備を厳しくしている最中ですから、あなたの移動についても簡単に許可できる状態ではないと言うのが向こうの言い分でしたね」
「これでもこの国のために戦争で活躍してた冒険者なんですがね」
「最終的にはその方向からつめましたよ。戦争が終わったばかりの相手に金銭などの要求をすることまではしてきませんでしたが、本音としては要求を出したかったのでしょうね。あなたはミラの町まで直接行くわけですから大丈夫でしょうが、外交担当には無理をさせてしまうかもしれません」
「それは大丈夫なんですか? 言い方は悪いですがあのバカなエルフのせいで出費は結構大きいですよね?」
「心配には及びませんよ。燃やして処分しなければならないレベルの大量のモンスターの素材が集まりましたから、それを元手に何とかできる範囲だと思っていますから。本当に大変なのはそこから先ですが、いざとなれば私やハイエルフ達がダンジョンでモンスターでも狩ってきてなんとかしますよ。そもそも建国当時はそうして財政を確保していましたし、300年くらい前にあった大災害の時もそうでした」
「この下もそうですがいくつかダンジョンを抱えてるっていうのは強いですね」
「かつてダンジョンの制御技術を確立させてくださった大賢者には感謝しかありません」
かつての大賢者に祈りを捧げるエンシェントエルフ様。俺はその間に手渡されていた書類に目を通すことにした。
「……あ、風龍様?」
書類を読み始めて30秒も経たないうちにエンシェントエルフ様の祈りは終わった。書類を読むペースを上げて読み進めていくと、守護龍様の伝手の相手についても書いてあり、その相手はあの老龍である風龍様だった。
「守護龍様と彼の風龍殿は以前より付き合いのあるお方です。そういえば面識があるのでしたか?」
「はい。ミラの町ではどちらかというと青龍様にお世話になってましたが、先日ジョーさんと一緒に館に来られた際に話をさせてもらいました。黄龍の遊び相手にもなってもらっていましたし」
「隠居なされたとは言え風龍様を遊び相手にとは贅沢ですね」
「隠居されてたんですか?」
「そちらは知らなかったのですね。表向きの理由は療養のためということになっています」
「龍殺しの力の影響ですよね」
「はい。実際にはあなたのお仲間の手で解呪に成功し、その後の治療で後遺症もないのですが、青龍も火龍もまだまだ引退には程遠い。後進を育てながら交代するにはいい機会だとお考えのようですね」
「風龍様の娘さんって人間の基準だと幼女とかそんな歳だったと思うんですが」
「ん? ああ、彼女のことですか。すぐに彼女が継ぐわけじゃないですよ。彼女が引き継ぐまでのつなぎ役の竜と変わるだけです。龍にまでは至っていませんが十分な実力者ですし町の者たちの評判もいいんですよ」
「そうなんですね。……さすがに幼女に任すようなことはないか」
「いや龍をなんだと思ってるんですか。ですが、タイミングが悪かったですね。おかげで一時的にでも転移陣をつなぐ許可を取るのに時間がかかってしまいました。隠居の身としてはあまり強権を振りかざすこともできないと」
「あーなるほど」
「風龍様はあなたならいいと言ってくださっていたのですが、転移陣をつなぐこと自体のリスクをなかなか当代が納得してもらえなかったの。最終的には土龍様、火龍様の協力で専用の結界を作り、水龍様もあわせた3体の龍と風竜の4体が揃って監視している状態という条件で許可が下りました。引継ぎのあれこれで風竜も忙しく、他のお三方も揃ってとなると時間を確保するのが難しいようですね」
「それで時間も指定されているわけなんですね」
書類の最後に記載されていたのは今日から数えて二日後の夜10時。そのタイミングで守護龍様のところからミラの町まで転移することになるとのことだった。
「急ではありますが明日中には準備を整え、明後日は昼過ぎにはこちらに来てください。魔力を込めてもらう必要もあるので」
「結構な距離ですもんね」
「あなたほどの大魔力に回復力も合わさっていれば1時間とかからず魔力は込められるでしょうが念のため早めにいてもらいます。まあ時間が余れば私の話し相手にでもなってくださいな」
「おてやわらかにお願いします」
ぎりぎりまでヒツギのことを聞き出そうと言う魂胆だとわかっているからこそ頼んでみるがエンシェントエルフ様は不敵に笑うだけだった。そのせいで遅れたりしたらシャレにならないので妥協はしてくれるだろうが怖いな。
ダンジョンで鍛錬をと思っていたが残された時間もあまり多くはないし、今日のところは明後日の出立に向けた準備と挨拶周りのためにも里の方に戻るのだった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90) 精霊使い(40)舞闘家(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 大鬼人 Lv26/40
上級獣人Lv18/30 魔人 Lv15/20
探究者 Lv42/99 狙撃王 Lv15/90
上級薬師Lv10/80 上級龍人Lv4/30
死霊術師Lv24/100 アーマーナイトLv1/99
剣闘騎士Lv1/99
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100
上級精霊使いLv1/50』
かなり空いてしまってすみませんでした。書き直してたのも理由ではありますがなんでかわからないほど進まなくて…
今年もオープン戦が始まりました。尚3連敗…若虎!
ではまた次回