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『金の軍団』定例報告会

今回は『金の軍団』クリステラ視点です。ご注意ください


 『金の軍団』の開く定例報告会。本来であればゴールド様が招集を受けたSランク冒険者たちの集会の話がメインになるはずだった。それがこのほんの1日でひとまずの終戦が宣言されたこの戦争によってその内容の重点が大きく変わった。

 報告書自体は現場に出ていたクリステラを含む第二、第三、第四パーティのリーダー3人で詰めながら作成し、既に本部へ届けられてその地にいた幹部たちには詳しく伝わっている。本部にはいなかった他のパーティリーダーたちも大量の魔物を従えた魔族が『ヤカリ森国』に攻め入り、なんとかそれを撃退したという内容は伝わっているが、本部に届けられた報告書を読むことはできていなかった。各幹部クラスが持たされている魔道具のおかげで本部へ送信することはできるし、支部であれば本部から受信もできるためそのものを見ることはできる。しかし、そもそも支部にいるメンバーは非戦闘員が多く、報告会に参加していたリーダーたちでたまたま支部にいたメンバーは誰もいなかった。

 Sランク冒険者であるゴールド様がいるという強みこそあれど、『金の軍団』は他の同程度の規模のギルドと比べても支部の数が少ない。最低限各国に支部はあるが、もともとゴールド様の強さか、私もそうであるように彼の持つ誰かを守るという心意気に惹かれてメンバーが集まったギルドだ。それは多くある要因の一つでしかないのかもしれないが、どこかのダンジョンがある都市に留まって活動するよりは各地を巡りながら人々の依頼をこなしていくという働き方の方が多い。ギルドとして必要な資金の調達や、『魔法学園』ほどではないが行われている研究に必要な素材があってダンジョンに潜るということはあるが恒常的にダンジョンに潜る者は少なく、長期間留まる者も定期的に訪れる者もいないのであれば支部を建てようとならなかったのだ。


 私からの報告を聞いた各メンバーたちの間で活発に次を見据えた意見の交換が行われる。実際に現場にいた私たちだからこそ戦力の不足の恐ろしさを痛感していた。

 今回、『金の軍団』としては負傷者はいるが後遺症が残るようなことはなく、何よりも死者はでなかった。しかし、3つのパーティでは多くの戦場すべてで力を奮うことはできず、一部の戦場では我々がいた戦場と比べて明らかに大勢の冒険者が死亡していた。その戦場の指揮官の暴走によるもので、正式に『ヤカリ森国』より冒険者ギルド並びにその戦場で戦った冒険者への謝罪と賠償が行われると発表されているが、我々がいたのであれば被害を減らせていた可能性は高い。

 そして()の協力がなければこれほどの短期間で戦争が終わることはなかっただろう。


『それで、例の冒険者、この報告はマジな話なのか? ぶっちゃけマスターでも無理だろ』


『僕に彼みたいな広範囲殲滅の能力はないからね。彼より広範囲を守ることはできるけども』


『ギルドマスター、さっきの報告にあった冒険者ご存じなんです? 『マツノキ』の名前はユウカ様が入ったパーティとして聞いたことがありますが、そのメンバーはそれほど有名ではなかったと記憶してますが』


『あー、耳の痛い話をするぞ。この馬鹿が調子に乗って喧嘩を売った結果、盾をぶっ壊されただろ? そのお相手だと』


『ゼロ君、オブラートって言葉知ってる?』


『ただでさえかつかつなギルドの資金事情を個人の都合で盛大に悪化させた大馬鹿者に向ける言葉なんざこれで十分だろ』


『辛辣ぅ! ま、まあぶっちゃけ彼そこまで強く見えなかったんだよね。何かが隠してしまってる感じって言うの? ユウカさんが目をつけてる冒険者ってことである程度の実力はあると思ってたけどジョーと一緒になって負けるなんて思わないじゃない』


 さらりと出てきた『ガルチア』が誇るSランク冒険者の名前に若干のざわめきがあったものの、すぐにそれは収まり、ゼロさんに怒られるギルドマスターが苦し紛れに矛先を私の方に向けるべく話を逸らそうとして来た。


『いやいやいやいや、とてもじゃないけど彼そんな化物みたいな感じには見えないんだってヴァ! だからクリステラ君のとこの子も喧嘩売っちゃったんでしょ!?』


『ああ、そういえばそっちにも浪費家がいたんだったか? 金貨40枚。おーおー、何日潜れば稼げる額かね?』


「それについては私の力不足によるものです。相手の実力を見る目を養うことの重要性は私含めパーティ全員が学ばせていただきました」


『その件だけど、僕の私費から全額出すよ。ちょっとした依頼を受ける羽目にはなったけど冒険者ギルド経由で受け取れるように手配していおいた。ユウカさんには僕の方から謝罪しておいたけどあまり長引かせるようなことではないし。クリステラ君、すまないけど今回の戦争での敵の殲滅という面での多大な活躍に『金の軍団』として礼をしておきたいからそのついでに彼に支払いしてくれるかな?』


「しばらく第三パーティでダンジョンに潜るつもりでしたが……よろしいのですか?」


『これはクリステラ君からの報告を読んで相談したゼロ君も納得してくれてることだから。まあ僕の私費ってところは譲ってくれなかったんだけどね!』


『そこはマスターの男気ってことで』


『依頼が終わったら一週間くらい本気で稼ぐかなぁ……』


『一週間でなんとかなるって辺りさすがマスターっすね』


『ちょっと深くまで潜ればね。っと、ちょっと真面目な話。クリステラ君の報告を聞いたわけだし、みんなも理解してくれるとは思うけど、僕の一存を『金の軍団』の方針として決めさせてもらったよ』


『いきなりな話ですね? 先ほど上がっていた意見の中で既に決まっている物があったとか?』


『あ、そういうわけじゃなくてね。『マツノキ』とは敵対しない。まあユウカさんのパーティだし、敢えて敵対するようなことはしないけど、ギルドを守るためにもはっきりと言っておくよ。ジョーの攻めを易々超えて、僕の全力の守りもぶち抜く火力。今回の戦争で明らかになった圧倒的な広範囲殲滅能力。そしてそれだけの火力を次々と戦場で披露し続ける継続戦闘能力。そんな化物と敵対しても未来はない。世間からSランク(化物)と呼ばれる僕が化物と呼ぶんだ。その意味、分かってもらえるよね?』


 普段あまり見せないゴールド様の真剣で、そして威圧的な表情。何があっても譲らないという覚悟すら感じるその様子に異を唱えることができる者はいなかった。


『というわけでクリステラ君、彼によろしくね!』


 ただでさえ戦争による疲労がたまっているこの身にとんでもない爆弾(使命)を与え、ゴールド様は次の話題へと話を切り替えてしまうのだった。



どうもコクトーです。


メイ視点ではないので職業レベルはお休みです。

先週はすみませんでした。モンスターズの新作にかまけて気づいたら書く時間がありませんでした…久しぶりのDQM、楽しいんじゃぁ…


ではまた次回

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