戦場の魔人です3
俺とカルムは魔人の死体を回収するためにそちらへ足を向ける。
『黒槍の雨』で追い打ちをかけて抵抗がなくなった時点で『ダークネスチェーン』も解除していたが、こうして回収に向かわないといけないことを考えればそのまま維持しておけばよかったかも。
遊撃部隊の討伐に動いている4人が警戒してくれているおかげで周りのモンスターたちからの攻撃は気にしなくてもいいとはいえ一応警戒は解かずに近づく。以前ミラの町火龍様の館で裏切り者の尋問を行った時のように内側から寄生するタイプのモンスターに暴れさせる可能性もある。
「一応盾を出す。そこまで耐えられるようなものでもないから警戒はしてくれよ」
「うむ、頼んだ」
二人の周囲に『魔力盾』をばらまいた。前方は多めに配置して後方には少なめに配置する。『探知』にも今のところ向かってくる反応は何もないし、以前のように土中に敵が潜んでいるということもない、と思いたいな。土属性、というか大地のプロフェッショナルである土龍様ですら気づくのに時間を要したあの潜伏能力。あれもまた何らかの特殊な虫型モンスターの仕業かもしれないが、それでも地面の下というのは基本的に感知しづらいものだ。この倒れ伏す魔人がやっていたように振動でも使わない限りはほんの1ミリ先のことですらわからない。実は空洞ができており、そこに何者かがいるかもしれない。そんなことはなく、単に土が、石が敷き詰められているだけなのかもしれない。あいつを喰らえば振動感知のスキルでも手に入れられるかな? その気はないが。
ある程度まで近づいたところで魔人の体から流れ出る血の匂いが濃く感じられるようになった。周りに零れ落ちている血の匂いも混ざり、こいつだけの物であると断言できるわけではないが、流れる量を考えると一番強いのはこいつの血だろうな。
「警戒を」
カルムが剣の柄に手を添えて腰を落とす。俺の『探知』には何も引っかからないが、それでも先輩冒険者であるカルムの琴線に触れる何かがあるのだろう。
「死体に触れて問題ないと思うか?」
「わからん。だが、これ以上は近づきたくないな」
カルムがあたりに気を配るのに合わせて周りに展開する『魔力盾』の数を増やす。最大の確認手段である『探知』に反応がない以上はカルムが感じている第六感を信じるしかない。仮に杞憂で終わったとしてもそれはそれで問題もないしな。
「『シャドウハンド』で少し動かしてみる。それで反応を見るのはどうだ?」
「お前さん器用なやつだな。遠ざけてもらえるか?」
「わかった」
『シャドウハンド』を盾の隙間から伸ばして魔人の死体に触れる。ぺたぺたと体を叩いてみるが反応はない。だんだんと力を強めてゆさゆさと揺すってみるがやはり反応はない。横目でカルムの様子を伺うが周囲を警戒する素振りは変わらない。むしろ警戒が強まっているようにも見える。
「持ち上げるぞ」
『シャドウハンド』の数を増やして魔人の死体を持ち上げる。頭を切り落とし、体中を穴だらけにしたせいもあって血は既にあらかた流れ出ていたが持ち上げたことで傾いてどろりとさらに血液が零れ落ちる。もはや死体の周りは血の池と化しているほどなのにまだ出てくるのか。
死体を持ち上げたまま10秒、20秒と待ってみるが変化はない。思い過ごしで済んでくれたかな。そんなことを考えていると、上空に『探知』に膨大な魔力の反応がかかった。
「「上!」」
2人の声が重なった。『シャドウハンド』を解除して『ダークネスシールド』を追加で展開する。グラウコスにも『ダークネスソード・纏』をかけて強化を施した。当然ながら支えを失った死体は地面に落下して血をあたりにまき散らした。
「ちぇすとぉぉぉおおおお!」
地面の血の池の上で跳ねた魔人の死体の上に重装備の戦士が下突きを披露しながら降ってきた。血しぶきと砕けた地面に土煙を上げながら現れたそいつは跳ねあがった血を浴びながら魔人の死体に突き刺した剣を引っこ抜く。そして懐からなにやら球を取り出すとおもむろにその魔人の死体に放り投げた。
「あっつ!」
剣を抜いたものの、すぐそばに立っていた男は放り投げた球が発した見覚えのある黒い色の炎が飛び火してしまい、自分の足も燃えていた。
「ふんぬ」
燃える足を振りぬいて炎を飛ばす。敵であるしそのまま足が燃え尽きてくれればラッキーとか思ったがさすがにそこまでは期待のしすぎか。
土煙も収まり、やってきた存在が何者であるのかよく見えてきた。すぐに『鑑定』をかけて見るとその肌一つ晒さない重戦士の正体がわかった。それは俺も知っているやつだ。
「本来は勝者の特権としてこれをくれてやっても構わんと思ってるんだが訳ありでな。責任者として燃やさせてもらったぞ」
俺の横で剣を構えるカルムも冷や汗が止まらない様子だった。あれの強さを感じとっているのだろう。
「とはいえ何もなしに帰れと言うのは俺の矜持が許さん。仮にも俺に次ぐ実力を誇る魔人を倒したのだからな。一方的にその死体を潰しましたなんて盗人もいいところではないか。最高司令官の立ち位置としてはあまり言いたくもないがこの戦争はもはやこちらの負け以外に選択肢はない。各戦場を任せた指揮官クラスの者は倒され、モンスターの多くは壊滅し残りも離散。予定外に控えていた者も潰されて回収もできたものではない。散々だ」
男は愚痴るように独り言を続ける。予定外の者というのはあのゴーレムに取り込まれていた女のことだろうか。他の戦場と比べてみてもあそこに配置されていた戦力は異常だったと言える。4体の堕ちた精霊だけでなく後詰めとして峰岸綾乃のいた戦場もなかなかだが、それでも後詰めでもなんでもなく最初からあれだけのゴーレムがいたと言うのは異常か。
「まあ残念な結果に終わったとはいえ目的自体は達した。試合に負けて勝負は時の運というやつだな!」
「それを言うなら試合に負けて勝負に勝つ、じゃないのか」
「おお、それだ。さすがは柩の弟だ。ニポンゴに詳しいな」
「日本語、な」
「お前の目的とはなんだ? この戦争自体が囮だったとでも言う気か?」
「そんなことは言っていないさ。エルフたちに冒険者たち、それらの防衛能力が思ったよりも高かったというだけで戦争自体は勝つつもりだったに決まっている」
「魔王軍はそんなに戦力不足なのか?」
「そうでもなければメイムのスカウトになどこないさ」
「エンシェントエルフ様を魔王軍に引き込もうとしたのか……ひつ姉を引き合いに出せば行けるとでも思ったのか?」
「貴様! なぜそれを!」
「お前が言ったんだろうが」
「ふむ、これが策士角砂糖で溺れ死ねというやつだな」
「策士になんの恨みがあるんだよ」
「なぜそうなるのだ? ……柩の弟よ! 生きていたのか!」
「今更!?」
その時、魔人の死体を回収できないように破壊しにきたこの戦争における魔王軍の最高司令官、セン・グーテンの雰囲気が一変した。それまでは勝者を称えようという雰囲気を醸しだしていたのだが、それが好戦的な野人とでも言うべき雰囲気になる。
「この魔人を倒した褒美としてその勝者に俺に挑むチャンスをやろうと思っていたが柩の弟がいるとなると話が変わってくるな。柩のためにも連れ帰らせてもらう。なに、ほんの5分だけだ。こういうのを先っちょだけ、先っちょだけだから! って言うんだったな」
「いや全然ちげえよ」
「だが、その前にそちらの武人だな。まずは耐えて見せよ」
先ほどの魔人とは比べ物にならない圧を発しながらセン・グーテンがこちらに歩き出した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
WBCでヌートバー選手が人気になってますね。中野君のエラーは阪神ファンには見慣れた光景です(絶望)
にしてもペッパーミル買った人たちは今後それどうするんだろう…
ではまた次回