生活魔法です
三階のマナたちの部屋にやってきた俺がノックをして中に入ると、二人はベッドに腰かけて待っていた。
「あ、来たね」
「じゃあ早速本題に入るよ」
「明日どうするかだよな?」
「うん。まずは当面いるものを揃えようと思うの」
「いるものって言うと武器か?」
「それもいいけど、まずは日用品とダンジョンに必要なものをね」
「私とメイは碌に物も買わずにきてるからね。色々といるよ」
「たしかにテントはもう1つほしいな」
主に俺が使うための。
「テントはもうあるじゃない。それよりは大きめの桶とか調理器具、歯ブラシとか櫛とか身だしなみを整えるための物もいるし、服の代えももう何枚かあるといい。買わないといけないものは多いよ」
「桶ってなんでいるんだ? 洗濯か?」
「メイはウォーターとホット、アイスの魔法は使える?」
「いやまったく。どんな魔法?」
「生活魔法って言われてる魔法だよ。水を作り出すウォーター、温度の調節をするホットとアイス。あとは汚れを取るクリーンだね」
「マナは使えるんだよな?」
「もちろん。重宝してるよ」
「使ってみてくれないか? 俺も使えるようなら覚えるからさ」
「いいよ」
マナは自分のアイテムボックスから桶を出してそれにウォーターを使って水をためていく。それは数秒で終わり、それなりのサイズの桶が水で一杯になった。
「便利なもんだな」
桶に入った水を少し手で掬ってみると普通の水と変わりなさそうだが、マナ曰く井戸の水の数倍はきれいらしい。井戸も確認しときたいな。
その掬った水を顔にかけた。マナはポカンとしている。そんなに多くなかったため服は濡れずに済んだ。顔にかかった水のほとんどは瞳が喰ってしまった。
『魔法:ウォーターを習得しました』
魔法でできたものなら喰えるかなって思ったけど想像通りだったな。でもこれって俺顔を洗えないんじゃないか?
不安に感じた俺は宿に偶々置かれていたコップに『ウォーター』で少しだけ水を入れて自分で顔にかけた。今度は二人ともポカンとしている。とにかく、水はどうだ?
……消えない。よし。自分で作れば顔も洗えるようだ。いや、そもそも魔法で作らなければなんともないんじゃね? やっぱり井戸も見ておこう。
水は……まあ自然乾燥に任せちゃおう。
「あのさメイ」
「どうした?」
「いきなり顔に水をかけて、なんでウォーター使えてんの?」
「マナも俺の能力強化は見たろ?」
「オークを顔につけてたやつだよね? あれって魔物の死体とか以外でも効果があるの?」
「武器や防具、魔物の死体、それから色んな効果のある食べ物もかな。毒草とか。これらを喰らうことでスキルかパラメータを習得する」
「私のだした水に何らかの能力がついてたってこと?」
「いや、そもそもこれらの能力は俺の『力』じゃない。俺の『力』によって生まれたものだな」
瞳の能力はそもそも魔法を瞳が喰らうことで所持者、つまり俺に魔法が効かないようにする能力だ。正確には違うかもしれないけどあの喰われてしまった悪魔のセリフはたしか魔法だけを喰らうとかなんとかだったはずだ。
しかし、現在のこの瞳の力はまったく別なものになっている。おそらく『応用する力』なんだろうが、俺自身どんな力か把握できていない。わかっていることと言えば、
・魔法を喰らえる
・喰った魔法を使えるようになったり耐性が身に付く
・魔物も喰らえる(今は死体のみ)
・魔物は喰えばパラメータかスキルゲット
・大きな力を喰らえば痛い(未確定)
・人は喰らえない(重要!)
といったところだ。人に関してはヒツギで試した。今思えば、あの時喰えてたらまずかったな……。
「魔法は喰らえばそれが使えるようになるっぽい。体に当たれば自動的に喰らうから魔法は基本効かないと思う。ホットとアイスも頼んでいいか?」
「なにその魔法使い殺しみたいな能力。私の魔法も効かないのかな?」
「たぶんな。わかんないけど」
「やってみる?」
「効いた時が怖いからやだ」
「でもウォーターは使えてるよね?」
「生活魔法とやらが例外の可能性もあるしな。お前だって効かないとはわかっていても攻撃をくらいたくはないだろ?」
「まぁね。魔法が当たればいいんだよね? なら二つはこのまま使うね。ホット、アイス」
いきなりなにもないのに魔法を使ったかと思うと軽く温めの風と冷たい風が順に俺の肌に触れていく。
『スキル:ホットを習得しました
アイスを習得しました』
どうやら 風の温度をいじったらしい。水じゃなくてもいいのか。人間でエアコンの役をしてるってところだろうな。
「どう? 暑すぎたり寒すぎたりしなかった?」
「ああ。無事習得したよ。つか水じゃなくてもできるのか。すごいな」
「普通は水にしか使わないけどね。直接触れているものにしか使えない人のほうが多いし。触れてなくても使えるのは魔力操作の訓練をした人だけ。しかもかなり難しいからメイはやめといたほうがいいかもしれない」
マナから注意が入る。むっ、そこまで無理と言われると何となくやってみたくなる。コップに再び水を入れる。今度はそれなりの量を入れる。これくらいだな。
「そもそも初めて使う人にありがちなのが……ってメイ何やってんの!?」
「試す。『ホット』」
俺はコップをつかんだまま魔法をつかう。水はどんどん温度が上がっていく。うん、これで適温に……ならない。
「メイ! すぐ止めて!」
マナから止めるように言われたがすでに遅かった。コップ内の水はどんどん熱くなる。
「熱っ!」
思わず手を離してしまった。コップは地面に落ち、中の液体をまき散らす。こぼれた水からは湯気が立っている。かなりの温度になったらしい。
「こらメイ! 人の話をちゃんと聞かないから! 大丈夫なの?」
「少し火傷してるが大丈夫だ。すぐ治る」
コップ越しに握っていても火傷してしまった。手のひらが真っ赤だ。
「すぐに見せ――」
「いやいいよマナ。こんなものすぐに治るんだから」
『再生』のスキルがあるからな、と心の中で付け足しておく。今の俺の『再生』のレベルは3。切り傷や刺し傷とかを簡単に治してしまうこのスキルなら、言い方はあれだが、たかが火傷を治せないわけがない。
「だめ! ヒール」
マナの手が淡く光り、その光が俺の手を包み込む。あっという間に治ってしまった。とはいっても再生で少しずつ手の色が戻ってきていたからヒールだけのおかげとは言い切れないだろうが。
「いい? 少しの怪我が後々の戦いで命取りになることもあるんだから絶対に油断しちゃダメ」
「お、おう」
有無を言わせないその怖さについついそう答える。迫力が……。
「よろしい。ある程度魔力が高い人で初めて使う人は今みたいに温めすぎたり、逆に冷やしすぎたりするから注意が必要なの。私が教えるからしっかり練習するよ!」
「わかった」
その後は次の日に買うものを改めてまとめてみて話し合いは終わった。意外と多かったものの、相場を考えれば今マナが持っている額で十分足りるらしい。あれなら俺のアイテムボックスの中のものをいくつか売ればいいとも言ったが断られた。売れるものはないってさ。……まあほぼオークから奪った武器しかないけどさ……。
そういえばほとんど話してなかったヒツギだけど、ウトウトしてて聞いてなかったらしい。生活魔法の話題が終わった後ヒツギ見たら寝てるんだもの。そりゃあ起こしたさ。当たり前だろ?
あ、一人で部屋に戻って寝たからね?
どうもコクトーです
また課題とバイトががががが
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv48/99
格闘家 Lv48/50
狙撃手 Lv37/50
盗賊 Lv34/50
剣士 Lv34/50
武闘家 Lv30/60
戦士 Lv31/50
魔法使いLv38/50
薬剤師 Lv33/60
鬼人 Lv7/20
????の勇者Lv8/??
狙撃主 Lv1/70
獣人 Lv1/20
狂人 Lv1/50 』
今回は会話回です
ちょっとした説明みたいなところもありました
ではまた次回