エルフの里の異変です25
本部から人が来るのにあたりの瓦礫を片付けようかとも思ったが、いざやるとなるとどうしたらいいのかいい手が思い浮かばず、結局近くの瓦礫に腰を下ろした。そしてそのまま軽くつまめる携帯食を口に放りながら新しい武器がどんな感じになっているのかを楽しみに休憩していた。
それから10分と経たずに話に上がっていた先行部隊と思わしき人たちが転移してきた。見覚えのある魔法使いの彼女とその彼女を守るように周囲を囲む盾を構えた兵士たち。俺が殺されており、操られてまた嘘の情報を流されただけの可能性を視野に入れていたのだろう。最悪彼らが犠牲になっている間に戻り、文字通り命を対価に情報を持ち帰ると言うわけか。
「なんてあり様だ」
「ほんとにここがあの小屋のあった場所か? 前線でもこうはなってないぞ」
「お前たち、警戒を解くな。まだ連絡のあった冒険者の姿を確認したわけじゃないんだから」
転移陣があった場所からはずれているため、ちょうど向こうからは見づらい位置に座っていたようだ。それなりの数を確保しているであろう転移魔法使いの中から彼女が選ばれたのは戦闘前の情報とは言え、ある程度瓦礫の山の位置を把握していて直接座標を指定して転移するための調整がしやすかったからだろうか。
「こっちだ」
腰を下ろしていた瓦礫から立ち上がり、彼らに声をかける。
警戒中の出来事ということもあり、彼らは即座に俺の方に向けて防御を固める。両手を挙げて戦意がないことを示しながらそちらに向かった。
「あぁ! 無事だったんですね!」
両手を挙げて近づく俺に対して警戒を続けていた彼らだったが、魔法使いの彼女が警戒を解いたのを風切りに周りの兵士たちも警戒を解いていく。
「ちゃんと伝えてくれたようだな。ありがとう」
「そんな、私は何もしてないよ。それにしても無事でよかった。戦場を2つ終わらせるだけのことはあるね」
「他と比べると守る相手がいなかった分やりやすくはあったかな。ただ、さすがに瓦礫の片づけまでは手が回らなかった」
「あー、おしゃべり中失礼。あまりのんびりもしてられないんだ。あなたが『マツノキ』のメイさんであっているんだな?」
「ああ。のんびりしてられないってのは同感だ。まだもう1つ残ってるしな。えっと、また通信を開いた方がいいか?」
「いや、それには及ばない。俺たちはこのまま警戒を続けながら瓦礫を撤去して転移陣を使えるようにする。あなたは彼女と共に本部へ、でよかったんだよな? 一応残っている戦場の方角を伝えろとも聞いているが」
「本部からであれば転移で向かわせてもらえることになったから一度戻らせてもらう。武器も受け取りたいしな」
「武器? あなたって魔法使い、というか魔法剣士……ハンマーでもそう言うのかしら?」
「魔法も使うがどちらかというと近接がメインなんだ。それを何と呼ぶのかは任せる」
「雑談はそれくらいに。戻るってことでいいならすぐに頼んだ。それで早く回復して増援を頼む」
「ごめんなさい。わかりました。じゃあメイさん、こちらに」
「頼んだ」
そして俺は兵士たちを残して彼女と本部に転移していった。
本部に転移すると再びあのムナクソエルフがお出迎え、ということもなく普通のエルフが迎えてくれてエルメラさんがいる場所へ案内してくれた。
「……何を?」
通された部屋の中にいたのは胡坐をかいて座るゼルセと、その前に座って困惑顔を浮かべるエルフに土下座するエルメラさんだった。俺の顔を見て呆れたようにやっと来たかとでも言いたげなゼルセが自分とエルメラさんを包むように張っていた結界を解除する。俺が来た以上は展開しておく必要もないという判断なのだろう。
「あ、メイさん! よかった、やっと来てくれたよ……。ね、ね、私、不審者じゃないでしょ? 説明プリーズ!」
結界が消えて俺が来たことにも気が付いたエルメラさんは顔を上げて俺に縋りつこうとする。どれくらいの時間土下座していたのかはわからないが足がしびれてしまっているようでよちよちとしか近づいてこない。
「ひぃやぉう!」
ついつい魔が差して彼女の死角から伸ばした『ダークハンド』でツンツンと足をつつく。悲鳴が上がり、彼女が振り向く前に消すと、何? 何? と辺りをキョロキョロし始めた。疑わし気な顔を浮かべていたエルフたちもその様子に口の端に笑みを浮かべていた。顔を背けたり手を当てて隠しているが隠しきれてないぞ。
「えっと、彼女はエルフの方々の方が知っていると思いますがエルメラさん。それでこっちは俺の従魔です。難しい武器の作成を依頼してまして、念のための警護として彼女の工房に置いてきました。さっきは武器の声が聞こえたとか言っていましたけど……」
「そう! そうなんだよ! 彼から預かっていた彼の以前の武器。今回新しく作った武器にも素材として一部が流用しているんだけど、その子が武器を作るのは今だ。後からじゃダメなんだって教えてくれたんだ。だからこうしてここにいるってわけ!」
魔剣ステュラが俺の危機を察知して武器が必要だと伝えたというわけだ。正直なところその真偽のほどは俺にはわからない。ただ、これから訪れる戦場には既に多くの冒険者にエルフの上位陣が向かっているはず。その上で俺に危険が迫っている、あるいは武器がなければ命の危険があると判断したということ。眉唾物であってもそれが本当であった時、その時に後悔しても遅いのだ。
「エルメラさんがその、声を聴いたっていうのはどこまで信じていいのか微妙ですが、ずっと使ってきたステュラが俺の命が危ないと思っているのであればそれは信じたい」
「ちょ、私も信じてよ! 私とメイさんの仲じゃないのー」
「間違いなく命を救っていただいた恩人ではありますけど知り合ったのもほんの数日前、依頼もこれが初めてなんですが」
「もー細かいことは気にしないでいいよ。数日の話に2年半以上かかってるんだから」
「なんの話だ」
「ん? なんだろう? 頭の中に声が……」
「この話はやめよう。まあ、武器を作っていただいた理由はわかりました。でも、なぜゼルセごとここに来たんですか? ゼルセならなんとかしてヒメに伝えて黄龍に取りに行かせることもできたと思うが」
「それは工房が襲われたからだね。いわゆる火事場泥棒ってやつ? 私は奥にこもってたから気が付かなかったけどオーガ君がとっ捕まえてくれたんだよ。今はもう檻の中かな? 私の工房に武器や素材を盗みに来るなんて言語道断だよね」
「いや、今留守にしてて大丈夫なんですか?」
「留守にする時用の防御機構も作動してきたし大丈夫」
「まあそう言うなら……。ゼルセ、ありがとな」
「がぁ」
ゼルセに礼とともに以前焼いたブロック肉の塊を渡しておく。
「あの、一応魔法使いも待機させてますので」
「おっと失礼。それじゃ素早くいこっかね。これが君の新しい武器さ!」
エルメラさんは自身のアイテムボックスから布に包まれた1本の武器を取り出した。
受け取ったそれの布を外してみると柄の部分はこれまで使っていた魔剣ステュラとあまり変わらないものの、そこから先は今までのそれとはまったく異なる様子だった。
「刃は?」
刀身にあたる部分、そこに刃は存在せず、どう見てもただの棒になっていた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
ちょっと遅れちゃいましたが32時まではセーフということで…
ではまた次回